2016年04月11日

芝居を見ながら、何を考えているのか。

中野ザ・ポケットで、まじんプロジェクトの公演『くれない坂の猫』を見て来ました。
脚本、長田育恵、演出、田中圭介。

てがみ座の長田さんの脚本の力に、あらためて感心させられる舞台でした。
面白かったです。
僕らの年代の人間には、とてもよくわかる時代背景。万博の頃。
去年から三本長田作品を見ましたが、どれも良かったです。
そのなかでも、この作品は小劇場にとてもマッチしていて、俳優さんたちの魅力も引き出す演出もあり、とても気に入りました。
ウェルメイドという言葉がぴったり。
脚本家が、とても気を使って書いているのがよくわかります。脱帽です。
演出もきめ細かくて、レベルが高いと思いました。
当日パンフを見たら、再演でした。
四年前が初演と書いてありました。

今回の舞台のことは、出演者の西園ゆうゆから教えてもらったからでしたが、こういういい作品をもっと見たいと思った夜でした。

ストーリー脚本教室(番外編2)

◯どんな感じで、ぼくが芝居や映画を見ているのか?(芝居を見ているときの心の動き)

芝居や映画を見ながら、脚本の構成とか、演出のこととかを分析したりしてしまうのは、脚本家の職業病だなと思います。

しかしストーリーや脚本作りを学びたいと思っている人には、他の人の作品を見ることは、もっとも勉強になることです。
ただ「面白い」「つまらない」とかだけで見るのではなく、「なぜ面白いのか」「なぜそうなるのか」ということを考えることは大事です。

記憶を頼りに、昨日見た芝居について書いてます。
こんな感じで、ぼくは芝居を見ています。
(冒頭部分のみです。全部やってると時間がいくらあっても足りませんから)

◯オープニング(かっこ内がぼくの心の声です)

◯舞台は古い整骨院の待合室。(セット、いいねぇ。)

◯若い娘が、ちょっと何かありそうな雰囲気で、急に掃除をはじめます。

(おっ、この人が主人公なのかな? どんなふうに魅力的に見せてくれるんだろう? まだ誰かわからないけど、けっこう可愛い女の子だし、主人公っぽいね)

◯そこに姉っぽい女の人が出てきて、「なにやってるの、こんなときに」と叱ります。二人が妹(琴実)と姉(園恵)だということがわかる。

(二人は姉妹か、姉の方、美人だぁ! 主役キャラじゃん。どっちが主人公なのかな? 叱られてるっていうことは、妹の方が主人公なのか? 『主人公は追いつめられるの法則ね』)

◯奥の診察室から、白衣の医者とスーツの青年が出てくる。医者は、青年にやたらと気をつかって話しをしているので、関係性がわかってくる。青年は、最初の若い娘(琴美)の見合いの相手で、大学病院の有名教授の息子(高橋)だということがわかる。

(おっ、いい感じの俳優さん。医者役の人、いいキャラしてんなぁ。でも、奥さん、若くない? まぁ、そこはいいか。見合い相手の人、二枚目。)

◯姉夫婦は、この見合い相手のことをやたらと気に入っている風。
だけど琴実は、あんまり乗り気じゃないみたい。
姉と妹の性格や、この家族の事情などが説明されていきます。

(すごいいい流れで、設定とかが無理なく観客に伝えられていくよ。この作家、うまいなぁ。ちゃんと勉強してるってわかるわー。見合いして、困っているってことは、やっぱりこの妹の方が主役なんだろうなぁ)

◯青年を琴実が見送るために出ていき、残った医者夫婦の会話で、だいたいの関係性とか事情がさらに詳しくなっていきます。
琴実が、怪我をした猫を拾って戻ってきます。
見合い相手は、猫を見捨てようとしたと言います。

(おー、いきなり猫助けちゃったよー。猫を助ける人を観客は嫌いにならない! セイブ・ザ・キャットの法則でました! 猫助けなかったということは、見合い相手の高橋は、敵役かァ、やっぱり)

◯医者の木原は獣医じゃないというが、妻にしかられて、猫を助けます。
みんなで猫、助けちゃいます。

(おー、みんなで、猫助けた! なるほど、これが物語全体のテーマの提示ですねー。やってきましたねー。テーマの提示。わかるりますよー。もうちょっとセットアップあるでしょ。まだ登場人物、ぜんぶ出て来てないもんねー。でも、メインは、この人たちね)

たぶん、この辺りまでが、10分以内くらい。
まったく無駄のない、オープニングです。
教科書に載せたいくらい。

◯このあと他の登場人物たちが、ぞくぞくと出てきて、セットアップを続けていきます。
ご近所の常連さんたち、(母親、中国人の料理人、笑いの取れない落語家、仕事がピンチで娘に嫌われている工員、その娘、仲人の高飛車女)が無駄なく、しかも面白く紹介されていきます。

(セットアップができたら、そろそろ物語が大きく動いていくんじゃないの? さぁ、何をやってくれるのかなぁ。期待、期待)

大きく物語を動かす、プロットポイント1(朝鮮人のけが人が病院に駆け込んでくる)が起きるのは、もうちょっと後になるんですけど、それへの布石みたいなのが、このあたりにもちょっと入っていたら、より良かったのにとは思いました。

◯怪我をした朝鮮人とそれを支えるその妹と、親戚の同じく朝鮮人の若者が病院に駆け込んでくる。
 どこにも看てもらえず、ここに来たのだという朝鮮人。どうやらこの若者たちの親は朝鮮から来て、この人たちはこっちで生まれたのかもしれないということがわかる。
 出ていこうとする彼らを、止める琴実。

(やっときたよ、大きく物語が動いていく予感。いいじゃない、いいじゃない。そうか、そういうことの方に物語を持っていくのねー。あー、この怪我した朝鮮人の青年と、この琴実は、ひかれあうようになっていくのよねー。予想できちゃうところが、ちょっと惜しいけど、王道っちゃいえば、王道だよねー。だいたい恋愛はBストーリーなんだけど、どうやらこっちがメインのストーリーになりそう……。どうなるか、楽しませてくださいよー。)


記憶をもとに、どんなふうにして芝居を見ているのかを、書いてみました。
これは脚本を読むときにも、同じような心理の動きをさせています。
参考になりましたでしょうか。

いい芝居を見ると、記憶も鮮明で、そのとき何を思ったかとかも思い出しやすいです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 13:08 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月29日

王道は知っていたほうがいい

ストーリー脚本教室(実践編35)

◯ハリウッド式の脚本術は、いいところもあるけど、決まりきった展開になる場合もある。

 僕が紹介したブレイク・スナイダーの「SAVE THE CAT」とかに代表とされる脚本術にならったものは、いわゆるハリウッド式と呼ばれています。
 大きな制作費をかけるハリウッドの映画などは失敗ができないので、ヒットの成功率の高い脚本というのが求められます。
 ですから王道をできるだけ外さない脚本作りがされている傾向があります。
 逆に言うと、それだけ予測のつきやすい脚本になっている可能性が高いというわけです。
 特にエンターテイメイント性の強い作品などは、そうなることが多いです。

 僕たちが作品を書く場合、それをわかった上であえて王道でいくのか。
 あえてそこを外していくのか、選択をしなければなりません。

◯外すためには、王道を知っていなければならない。

 ハリウッド式の脚本術は、知っておくにこしたことはないと思います。
 それを知っていることで、アレンジも、外していくことも可能になるからです。

 どちらにしても、ストーリーを作り上げていく作業は、とても大変な道を歩いていかなければなりません。
 作り方がわかったからと言って、簡単に作ることができるわけではないかです。
 一歩一歩、地道に進んでいくしかないのです。

 自分が目指す作品に向かって、とにかく前進していきましょう。
 さまざまな書き方やテクニックは、すべてそのための道具なのですから。


◯日本で最初の脚本術の本は「風姿花伝」だと思います。

 世阿弥の風姿花伝は、ご存じでしょうか?

 15世紀の初め頃、世阿弥が書いた能の指南書が、風姿花伝です。
 世阿弥が、父親の観阿弥からならったことを、芸道書として書き記したものです。
 これはもともとは能に関することを書いてあるのですが、脚本の観点からも、とても興味深い書として読むことができます。
 「序破急」の考え方などは、これに記されています。

 とても興味深い書なので、一度読んでみることをお勧めします。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:40 | Comments(0) |  | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月26日

ストーリーが動きだしたあとに注目

ストーリー脚本教室(実践編32)

 昨日の続きです。
 他の人の作品を見たときに、注目しているところ。
 影像作品についてです。
 一分から五分までは、主に主役キャラについてでした。


◯ストーリーが動きだすところに注目。

 時間は、作品によって違いますが、観客がその物語の主人公とつながってくれたら、作者はストーリーを動かしてきます。

 わりとそれははっきりしているので、わかりやすいです。
 ストーリーが前に進みます。
 何かが起きる瞬間です。

 それが起きたら、「はじまった!」ですね。

 あとはその動きだしたストーリーの中で、主人公がどう動いていくのかを、楽しみながら追っていくだけ。

◯主人公の「追いつめられ方」に注目。

 ストーリーが動きだすとき、ほとんどの場合、主人公は「何かしら困ったり」「追いつめられたり」していきます。
 作者がどんな手段で主人公を困らせるのか、そこに注目します。

 これにもわかりやすいものと、わかりにくいものがありますが、注意して見ていれば、必ずわかります。

 「その手できたか!」ですね。


◯主人公の「目的」に注目。

 ストーリーが動きだして、主人公に何かしらのトラブルが起きます。
 そのときに、主人公がそれに対して、どう動いていくのか。
 どんな目的を持って動きだすのか。
 それに注目します。

 これがないと、主人公ではなくなってしまうので、だいたいにおいて主人公は行動していくことになります。
 そのときち、彼がどういう目的を持っているのかということに注目します。

 これ本当に大事です。
 主人公の目的がはっきりしていないと、ストーリーが迷走していくことになるからです。


◯主人公の「ラブ」に注目。

 僕はラブストーリーが大好きです。
 なぜ好きなのかはわかりませんが、恋愛的な話しがからんでくるのが好きなのです。
 これは僕だけではないのかもしれません。
 これだけ大量のストーリーが世の中にあふれていて、それの多くにラブストーリーふくまれているというのは、僕と同じようにそれを好きな観客がたくさんいるということでしょう。
 需要が多いから、供給も多いのかも知れません。

 ラブストーリーは、なぜか心を暖かくしてくれます。
 そういう効果があることを知っているから、作家たちはそれを自分の物語に組み込むのかもしれません。

 主人公が誰であれ、ストーリーが動きだすのと、ほぼ時を同じくして、多くの場合主人公の「ラブ」も動きだします。
 その相手は、さまざまですが、主人公が好意を抱くのか、逆に抱かれるのか、そういう人物が現れて、ストーリーにからんでくるのです。
 それが本筋とからみあいながら、ストーリーは前に進んでいくことになります。

 だからこそ、この「ラブ」に注目です。
 これもストーリーをより面白くしてくれる大きな要素の一つなのですから。

 これは主に、僕たち観客を気持ちよくさせてくれる効果を発揮してくれます。
 僕たちは、やはり「ラブ」を感じていたい生き物なのでしょう。


◯ラブ(恋愛)を必要としないストーリーも時にはあります。

 ラブ(恋愛)は、人が成長とともに身につけていく社会的な感情です。
 まだこれを身につけていない子供たち向けの物語では、この「恋愛」は必要とされません。
 なぜなら彼らはまだ、それを知らないからです。

 親子の愛情は、子供たちはいち早く身につけます。
 次に友達との関係性から生じる感情。
 男の子の異性に対する恋愛は、そのあとです。(女の子は、やはり男の子よりも早いようです)

 もちろん男女の差や、個人差はありますが、多くの男の子たち(十歳以下)は恋愛にはあまり興味を示しません。

 ですから、十歳以下の少年向けのストーリーでは、あまり恋愛要素が入ってくることがないのです。

◯少年向けアニメに恋愛は出てきません。

 いま僕は2016年4月4日からテレビ東京系列で始まる「ベイブレードバースト」というアニメのシリーズ構成と脚本担当しています。
 この作品には、恋愛の要素はいっさい入っていません。
 この作品の視聴者で、この番組にそういう要素を求めている人はいないと思いますが、そういう人がいたらごめんなさい。

 ちがう形の恋愛は入っていますけと。
 それは少年たちのベイブレードに対する「ラブ」です。
 そういう意味では、これがこの作品の恋愛要素なのかもしれませんね。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:16 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月25日

ストーリー作りのトレーニングは楽しみながら

ストーリー脚本教室(実践編31)

 トレーニングの続き。

 前回は名前と関係性をつけるトレーニングを日常の中で遊びとしてやる方法を紹介しました。

 ストーリー作るのコツを体得するための一番のトレーニングは、いい作品を見て、それを分析することだと思います。

 影像作品はDVDでほとんどあらゆる作品がリリースされているので、トレーニングにはもってこいの環境ですよね。
 小説はもともと本で出版されていたものなので、読んで学ぶことができましたけど、昔は影像や舞台の勉強をするには、劇場に行かねばならずお金も時間も余計にかかりましたから。
 もちろん劇場での体験は、かけがえのないものなので、できるだけ多くいい環境で見てもらいたいです。

 自分の書きたいタイプの作品があるとしたら、それに関係するようなタイプの作品を多く見るようになるのは当然ですね。
 多く見ることで、類似をふせぐこともできるし、さらに面白くするための方法を学ぶことができます。

◯どこを見るのかが大事です。

 作り手が、どういう意図で、そのカット、そのシーンをそこに持ってきているのかを、探偵のように推理しながら見るのです。
 ストーリーの構成は、どうしてそうなったのか?
 それを推測できるようになるのが、トレーニングです。

 僕が、どういうところに注目して見ているかを書いてみます。(今回は影像作品の場合です)

◯まずはファーストカット。

 最初の入りを、どういう絵にしているのか?
 そこにまず注目しています。
 ここは演出家の領域が大きいですね。どんな絵で物語に入っていくのか?
 脚本家は、ファーストカットについては、あまり意識して書くことはありません。
 もちろんイメージはあるでしょうが、柱やト書きでは、ファーストカットのことにはふれませんからね。
 ただし、演出家は、まずどの絵から、入っていくのかを意識しているはずです。
 それに注目するのは、そこには多くの場合、その物語全体に伝わっていくイメージをこめようとしているはずだと思うからです。

◯冒頭の一分から五分間。

●どうやって見る人(観客)を、物語に引きつけようとしているか?

 お客さんは、優しいので最初の数分はたとえどんなものでも見ようとしてくれます。
 でもその優しさに甘えてはいけません。
 つまらなかったら、さっさと離れて行ってしまいます。

 ですから最初が肝心で、作家も演出家も、冒頭でできるだけお客が離れないようにする方策をそこに仕掛けようとするのです。
 この作者は、どうやってそれをしようとしているのか?
 そこに注目します。

●主人公は誰なのか?

 物語を観客と一緒に旅してくれるパートナーが主人公です。
 ですから作り手は、多くの場合最初に主人公を登場させます。
 もちろん例外もあります。
 作り手は、かならずこの登場人物が主人公ですと、観客にわからせているはずです。
 それをどうやってやっているのかに注目します。

 いろんな方法で「この人が主人公です」とわからせる方法を取っているはずです。

●主人公を好きになれるのか?

 観客が主人公を嫌ってしまっては、物語に連れていくことはできません。
 ですから作り手は、かならず主人公を観客に好かれるような方策を取っているはずです。
 どんな手を使っているのか、それを見つけてください。

 もちろんスターがそれを演じている場合に、その人が主人公だと暗黙の了解で観客はわかっているのですが、物語の登場人物として、どういうことをやっているのかの方により注意して見るようにしましょう。


 冒頭の一分から五分の間にも、要チェックするべきところは、こんなにもあります。
 ストーリーを楽しみながら、頭のどこかで、これらのことを意識して見るようにしてみてください。
 無意識にそれができるようになったらしめたものです。
 あなたの作品でも、それらのことが自然にできるようになっていくことでしょう。

 次はいよいよストーリーが動きだすところです。
 それはまた次回に。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 12:21 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月22日

僕が大事にしている、感情のこと

ストーリー脚本教室(実践編29)

 ドラマの中で、何を大事にするのか。

 これから書くのは、自分ならば何に興味を引かれるのかについてです。

 物語を読んだり、ドラマを見たりしているときに、僕は登場人物の気持ちの動き、その変化にもっとも引きつけられています。

 ストーリーの構成とか、展開は、その次です。

 とくに主人公の気持ちが、どう動いているのか。
 (主人公に感情移入ができないときは、物語に入っていけないし、ドラマにも乗れないので、問題外ですけど)
 主人公を見続けたいと思う、一番の大きな理由は、この主人公の満たされない(たいていの場合は主人公は満たされていません)気持ちが、最終的にどうなっていくのかが気になるのです。

 みなさんは、どうですか?


◯『感情線』は間違っていないか?

 「感情線」とは、登場人物たちの気持ちの流れのことです。
 シーンとシーンの間で、登場人物の感情は変化していきますが、その流れのことをこう呼びます。

 これに矛盾があってはこまります。
 観客(読者)が、とたんについて行けなくなってしまうからです。
 ストーリーをつくるときには、この感情線がおかしくなっていないかどうかチェックすることは大事です。

 書いたものを読み返していて、なんか変だと感じたときには、この『感情線』をチェックしてください。

 前に「感情を動かすことは、ストーリーを展開させる」というようなことを書いたと思いますが、いくら感情が動いていても、感情線を間違って動かしていてはダメです。

 ちゃんと感情線にのっとって、動かして行きましょう。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:17 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月12日

感情に敏感でいましょう。

ストーリー脚本教室(心構え編10)

 『感情』を使うことが、シーンのエンジンになると前に書きました。
 ちょっとここで、感情ってなんだろう? って、立ち止まって考えてみましょう。

 感情の種類って、どんなのがあると思う?
 って聞かれたら、あなたはいくつくらい答えられますか?
 ちょっとやってみてください、けっこう難しいですよ。
 はい、スタート!

 どうでした?

 『感情』
 われわれは毎日、あたりまえのように使っていますが、これはどこから来るものなのでしょうか?
 ウィキくんは、こう教えてくれてます。

 感情(かんじょう)とは、ヒトなどの動物がものごとやヒトなどに対して抱く気持ちのこと。喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖などがある。

 感情の一覧。

 安心、不安 感謝 驚愕、興奮、好奇心、性的好奇心 冷静、焦燥 (焦り) 不思議 (困惑) 幸福、幸運 リラックス、緊張 名誉、責任 尊敬 親近感 (親しみ) 憧憬 (憧れ) 欲望 (意欲) 恐怖 勇気 快、快感 (善行・徳に関して) 後悔 満足、不満 無念 嫌悪 恥 軽蔑 嫉妬 罪悪感 殺意 シャーデンフロイデ(他人の不幸は蜜の味) サウダージ(郷愁、憧憬、思慕、切なさ、などの意味合い) 期待 優越感、劣等感 恨 怨み 苦しみ 悲しみ、切なさ、感動 怒り 諦念 (諦め) 絶望 憎悪(愛憎) 愛しさ 空虚

 さすがウィキ君。物知りです。
 僕達はふだんの日常で、しごく当たり前に感情を使って生活しているので、その感情がなんなのか意識して使っていることはほとんどありません。
 だからいきなり感情には、どんな種類があるのなんて聞かれても、なかなか急には思いつかないものです。

 意外にたくさんありましたね。(笑い)

◯感情は、なぜあるんだろう?

 ふと思いました。
 感情って、いつから抱くんだろう?
 生まれたばかりの赤ん坊にも感情はあるんだろうか?

 「おぎゃ〜〜」って、泣くときには、感情があるんだろうか?

 言葉を持たない、赤ん坊が泣いたり、微笑んだりするのは、なんなんだろう?
 学んだわけではないのに、それをするということは、それはおそらく「本能」「遺伝子」に組み込まれている「生命保存」のためのシステムなのでしょう。
 われわれは、もしかしたらそれを「感情」と名づけたのかもしれません。
 感情を生命維持のためのシステムと考えたら、基本的な感情がなんであるのかが理解できます。
 命の危機を回避するための、「恐怖」(襲ってくる外敵を警戒しなければならない)。
 命を存続させるための「喜び」(食べていいものか、悪いものか判断しなければならない)。
 恐怖と喜びは、われわれが生まれたときから持っているものなんだろうと思います。
 他の感情は、あとで学んで身につけていくものなのかもしれません。

◯ストーリーを作るときに、もっもと強いエンジンになってくれるのは『感情』です。
 われわれはできるだけ多くの感情をつかいこなせるようにしたいものです。

 じゃあどんなときに、われわれは感情を引き出しの奥から引っぱりだしてくるのか?

◯感情は、相手によって引き出される。
 人が感情の変化を起こすのは、相手があってこそです。

 ストーリーも、基本的には人と人との関係性と、その変化を描いていくものです。
 このときにストーリーを動かしていくエンジンの一つが「感情」であるということは、前にも書きました。

 主人公とその相手。
 その関係性の中で、どんな感情が起きるのか。
 起こしていくのか。
 それがストーリー作りのベースにあります。

◯感情に敏感でいましょう。

 より良いストーリーをつくるためにも、より良い人生を送るためにも、自分と自分にかかわる人たちの感情には敏感でいたいものです。
 それがあなた自身のストーリーを面白くさせてくれるはずだから。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:40 | Comments(0) |  | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月10日

感情をエンジンにしてください

ストーリー脚本教室(実践編25)

 あなたのストーリーに、翼を! の続きです。

◯感情は動いているのか?

 あなたが書いたストーリーの中の、一つのシーンに、なんとなく違和感を感じたとします。
「んー、なんだろ、なんかあんまり面白くないなぁ……」
 ストーリーは進んでいるんだけど、平板な気がします。
 自分で組んだ構成の通りに書いてるはずなんだけど、なんか足りない……。
 そんなときは、あなたの無意識が、警戒警報を鳴らしているのです。

 なんとかしましょう。
 しなければなりません。
 翼を! です。

 警戒警報がなる理由がなんなのかわからないときの、チェック方法の一つは、そのシーンの中で登場人物の感情が動いているかどうかを見ることです。

 たとえば、そのシーンは、一年ぶりに親友同士が再会するシーンだったとします。

山田「ひさしぶりだね、鈴木くん」
鈴木「うん。一年ぶりくらいか。元気そうだな、山田も」
山田「ああ。元気にやってる」
鈴木「よかった。どうしてるかと思ってたんだ」
山田「ごはでも食べようか」
鈴木「うん、行こう」
   二人はカフェに入っていく。

 だめなシーンですね。
 ちっとも面白くないし、見事なダンドリ芝居になってます。
 それに『感情』の変化が足りません。
 一年ぶりに会ったんです。もっと感情が動いて当然じゃないですか。もしかしたら、二人は、なんかの事情があって離ればなれになったかもしれないのに。
 感情を動かしてみましょう。

   山田、鈴木を見て絶句する。
山田「…………」
鈴木「山田……」
   二人、しばらく黙ったまま見つめ合っている。
   山田、感極まって泣き出す。
鈴木「何で泣いてんだよ……」
山田「だって……」
   山田、うれしさが爆発して、鈴木に抱きついていく。
山田「鈴木ーー、会いたかったよォ!」
鈴木「おい、やめろよ、人が見てるよ」
山田「すずきーーっ!」

 うん、ずっとよくなりました。
 なんだか次に期待できる流れが出てきましたね。
 これくらい山田が喜んでるからには、二人の間で、きっとなにかがあって別れたに違いないって思います。
 このあとも、二人の関係がどうなっていくのかに期待が持てます。

 なによりもシーンのエネルギーがあがりました。
 ただ、より感情を動かしただけです。

 日常生活の中では、われわれはできるだけ感情を表に出さないようにして生活しています。
 それほど大きな感情を動かすようなできごとは、しょっちゅうは起きないし、あまり人前で感情をあらわにすることを抑える習慣があるからです。
 しかし、ストーリー作りにおいては『感情の変化』は大いに使うべきことです。

 『感情』は、ストーリーを動かしていく、大きなエンジンの一つなのです。
 登場人物同士が影響を与え合って、感情を動かすチャンスがあったら、できるだけ大きく動かしましょう。
 きっとシーンは、さらに面白くなるはずです。

◯閑話休題
 即興芝居(インプロ)をやっている人たちなら、インプロゲームの中に『エモーショナルチェンジ』と呼ばれるものがあることは知っているでしょう。
 最初に、基本のシーンを演じて、それをさまざまな感情バージョンで演じて、その変化を楽しむというものです。(見たことない人には、なんのことだがわかりずらいだろうと思いますけど、それはごめんなさい)

 このゲームを発明した人は、おそらくさまざまな演劇のシーンの中で、感情がストーリーを大きく動かしていくエンジンだということを知っていたのでしょう。
 そのことをインプロをやる俳優たちに、わかりやすく教えるために、このゲームを考案したのだと思います。

 感情を使えば、ストーリーは動くということを俳優が知っていれば、即興の演技をやっているときに、感情を動かすチャンスがあれば、それを逃すことなく、大きく動かしてみようという気持ちになるはずでしょうから。

 俳優は、芝居の中で感情の表現をすることが仕事です。
 作家は、ストーリーの中で、感情を動かすシーンを書くのが仕事です。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:24 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月09日

あなたのシーンに、翼を!

ストーリー脚本教室(実践編24)

 今回は、なんとなくシーンが面白くなかったときに、効果的な方法を書いてみたいと思います。
 疲れたときに、ビタミンを飲んだり、赤い牛的な強壮剤を投入したりするのと近いです。
 シーンを元気よくするための方法です。
 あなたのシーンに、翼を!

◯書き直しは当然!

 あなたがシーンを書いたとします。
 例えば、主人公が運命の恋人に出会うシーンです。
 最初はなんとも思っていなかった女の子を、その瞬間から意識しはじめるところです。
 あなたは思いついたアイディアが気に入って、一気に書き上げました。
 しかし、あなたはこのシーンを書いたあとに、読み返して、なんとなく今ひとつだなと感じます。
 もう一度、読み返しても、このシーンが面白いとは思えません。

 そんなときは、さっさと書き直しはじめましょう。
 または、書いたものを、一気にデリートキーで消して、新たなシーンを書き始めたほうがいいです。
 ダメなものに囚われているのは、時間の無駄。

◯いいシーンとはなにか?

 それを一言でいうのは、とても難しいです。
 面白さというのは、実に感覚的なものですから。
 ですから自分の感覚にはしたがうべきです。

 なんとなく感じること、ふとわきあがる直感、衝動、そういうものにはかなりの確率で真実がふくまれています。
 あなたが『違和感』を感じたときは、危険信号。
 たとえその違和感の正体がわからなかったとしてもです。

 違和感を感じたときには、きっと何かが足りないか、逆に書きすぎているか、またはセリフがキャラクターにそぐわないか、芝居自体が段取りだったりしている可能性があります。

◯違和感にしたがいましょう。

 「ん? なんだろう?」という感覚が違和感です。
 あたまが理解する前に、無意識は感じ取ってくれます。
 そうしたら、それに従ってみてください。
 それを無視して、前に進まないほうがいいです。
 ペンをとって、そこにチェックマークを入れましょう。
 そしてその違和感の理由を、あらためて考えるのです。
 先ほど書いた違和感の理由が、きっとそこにあるでしょう。

 違和感の理由は、さっさと取り除きたいものです。

◯段取り芝居はカットするべし。

 いらないシーンの代表は、『段取り芝居』です。
 例えば、男が、女に愛の告白のシーンを書いたとします。

   店の前に男と女が立っている。
男「やぁ、ひさしぶり」
女「おひさしぶりです」
男「半年ぶりかな」
女「そうね、今日は、なんなの? 急に電話してきて」
男「ごめん、わざわざ出てきてもらって」
女「じゃあ、お店にはいりましょう」
   と、男と女は店に入っていく。

 というシーンがあって、次のシーンで男が女に愛の告白するシーンが続きます。
 いま、ここに書いたのが、まさにダンドリです。
 愛の告白をするまえに、二人が再会して、店に入るまでの流れを書いています。そこで、二人が半年ぶりに会ったという説明があるにしても、それはどこかで入れることは可能だろうし、だいたいこのダンドリシーンは、ほとんど意味がないし、時間の無駄です。
 この部分は、全部カットしても、ストーリーの流れにはほとんど影響を与えません。
 さっさとカットしてしまいましょう。

◯質問セリフを書いたら、要注意。

 僕がセリフをチェックするときに、気をつけていることがあります。
 それは無駄な質問セリフです。

 たとえば、こんな感じ。

   男と女が喫茶店の席に座っている。
男「どうかした?」
女「えっ?」
男「さっきから、外ばかり気にしてるけど」
女「知り合いに、見られたらいやだなと思って」
男「いいじゃん、見られても」
女「あなたはよくても、あたしは困るの」

 というようなやりとりです。
 書いているときは、気づいていなくても、読み返したときに、この『?』マークに気づきます。
 おっ、質問してるぞ。
 この質問は、はたしているのかな?
 そう自分に問いかけます。

 質問なしでも、このやりとりは成立します。

男「さっきから、外ばかり気にしてるけど、そんなに人にみられたくないわけ」
女「……だって、困るし……」

 たった二行になりました。
 すっきりしたでしょ。

 セリフの中に不用意な質問があったときは、注意してください。
 次に言いたいことを、呼び込むために、質問をしている場合がほとんどです。
 それがなくても会話が成立するのなら、不用意な質問セリフはないほうがすっきりします。

 僕が書いていることは、絶対正解ではありません。
 あなた自身がいいと思っていることは、断固として通してください。
 あくまでも僕がここで書いているのは、先輩からの一つのアドバイスですから。
 質問のセリフだって、それがあるほうが、セリフとして弾んでいたり、いい流れの場合もあります。
 それは、あなたの判断が大事です。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 07:47 | Comments(1) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月08日

自分のことを『種』にしてみよう

ストーリー脚本教室(実践編23)

 前回は、ストーリーの冒頭の大事さと、それをチェックする方法を書きました。

 ここでちょっと脇道。
 なかなかアイディアが浮かばない人のために、誰もができるアイディアの出し方を一つ紹介します。

◯自分に起きたことをストーリー化する。

 誰にでも、自分に起きたり、自分の周りで起きた、忘れられないドラマチックな出来事というものがあるはずです。
 友達に、自慢したいエピソード、ひどい目にあったこと、または、誰にも言えないようなこと。

 ストーリーとして面白くなりそうなものは、どちからというと『誰にもいえないようなこと事』の方に決まっています。
 あなたに誰にも言えないような秘密の出来事がもしあれば、それは間違いなく面白いストーリーになると思います。

 それはもしかしたら恥ずかしいことだったり、哀しいできごとだったりするかもしれません。
 自分の中の奥深くに閉じ込めた傷ついた記憶かもしれません。
 しかしそれと向かい合うことができたら、きっとそれは意義あることになるはずです。

◯本当のことを書く必要はありません。

 自分の体験だったり、自分の周辺で起きたことだったりしても、それをそのまま本当に起きた通りに書く必要はありません。
 われわれが作ろうとしているのは、フィクション、ストーリーなわけですから。

 自分に起きたことや、本当のことを、ストーリーの『種』にするのです。
 その種を、畑に植えて、水をやって育てていきます。

 文学にも私小説というもがあります。
 あなたも自分のストーリーを語ってください。
 きっと面白いものになっていくと思います。

◯面白くするには、ピンチをさらに大きくする。

 たとえば、あなたは高校生の時に陰湿ないじめにあい、学校を中退することになった経験があるとします。
 忘れようとしても、忘れられないが、誰にも言っていないことです。
 しかしあなたは、この体験をストーリーにしようと決めました。

 このことは自分と向き合うことを、あなたに強いてきます。
 トラウマになりそうだったことにも、正面から向かい合わなければならなくなります。
 でもおそらく今のあなたは、それを乗り越えていて、それを書こうと決めました。(仮に乗り越えていなくても、書こうと決めた時点で、乗り越えようとし始めたわけです)

 この過程こそ、ストーリーに大切なことです。
 主人公が変化(成長)していくこと。

 振り幅は大きい方がいいです。
 面白さもエネルギーも上がります。
 そのためは、どうするか?

 ひどい目にあった自分を、もっとひどい目にあわせてみましょう。
 ストーリーの中だったら、それができます。
 もう現実では、それ以上ひどいことは起きるわけがないのですから。(だから大丈夫)

 たとえば、
 悪質ないじめにあい、学校を退学してしまった、さらに自分をいじめてやつが、執拗にかかわってくる。
 追いつめられた自分は、ずっと逃げつづけてきたが、ついに反撃に出る。
 そして、その悪魔のような奴を殺してしまい、殺人犯として、追われるはめになってしまう。
 どうなるんだ、主人公!?
 と言う具合にです。
 もっともっと、ギリギリの所まで主人公(自分)を追いつめていきます。
 それをどうやって乗り越えるのかというのが、物語のクライマックスになっていくはずです。
 どうですか? 面白くなりそうでしょ。

◯自分に起きたひどいことをストーリー化しようという気持ちは、僕らを救ってくれるかもしれません。

 現実の生活の中で、あなたがもしひどい目にあったとします。
 そのときに心のどこかに、「あっ、このこといつかストーリーでつかえるかもしれない」という声が聞こえるのです。
 するとそのひどいできごとの中でも、どこかで自分を保つことができます。
 精神的に、あなたが追いつめられすぎることはなくなるはずです。

 ひどいことに巻き込まれても、死なないようにしましょう。
 死んだら、それをストーリーにするこは本当にできなくなってしまいますから。
 死なずに生き延びて、面白くて、人を幸せにすることのできるものを作る。
 それこそが我々、ストーリーをつくると決めた人間の仕事です。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:17 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月07日

キモイバカは使うべし

ストーリー脚本教室(実践編22)

 ワクワクドキドキで、お客さんをつかんではなさないために、チェックしてほしいことというのを前回書きました。
 今回は、僕のチェック方法をもう一つ紹介します。

◯『キモイバカ』を見つけろ!

 なんのこっちゃ?
 そりゃ、いろんなところにキモイバカはいるよ。
 友達にもいるし、もしかした自分もそうかもしれない。
 などと思った人もいるかもしれません。(笑い)

 早まらないでください。
 これはストーリーの始めで、書き手がしっかりとつかんでおいてほしいことを、忘れないようにするためにつけたものです。

 キモイバカとはなにか?

 『キ』はキャラクターのキです。しっかりキャラクターは出来ているのか。

 『モ』は目的のモです。主人公の目的ははっきりしていますか。彼は何に向かっていますか?

 『イバ』は居場所のイバです。彼の場所、彼を取り囲んでいる場所はどこですか。それは出来ていますか?

 『カ』は関係性のカです。主人公と、他の登場実物たちとは、どういう関係性ですか? その関係性は表現できているのか?

 それらのことを描いていくことが、とても大事なのです。
 どれが欠けてもいけません。

 キモイバカを、ちゃんと描いていくことが、ワクワクドキドキでお客さんを放さないための第一歩なのです。

◯『キモイバカ、ヘン』

 キモイバカができたら、次は『ヘン』です。

 キモイバカは、たしかに変です。
 しかしここでのヘンは、変化のヘンです。

 シーンの中で、さまざまなことが変化していかなければなりません。
 それがないと面白くなりません。

 キャラクターを変化させること。
 目的を、達成するために、変わっていくこと。
 相手との関係性が、変化していくこ。

 この変化の『ヘン』は、とても大事なヘンなんです。

 どんなふうに感情が変わるのか?
 立場がかわるのか?
 世界がかわるのか?
 主人公は、成長して、変化するのか?

 これらのことがないと観客は満足してくれません。
 変化がないと感じたら、そこはもう一度書き直すべきところなのかもしれませんよ。
 気をつけてください。

◯『キモイバカ、ヘン』はインプロする俳優もおぼえておくといいです。

 インプロ(即興劇)でもストーリーを作っていくという目的は同じなので、作家がキモイバカヘンを大事にするのと同じようにキモイバカヘンをわかっていれば、シーンは自然と面白くなっていくのです。
 ただわかっていても、それを意識せずに表現するのはとても難しいです。
 意識しないでも、それが自然とだせるようになるまでになっているのがベストです。
 そうなれるようにするには、毎日のトレーニングが必要です。
 練習あるのみ!
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:16 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月06日

セットアップはワクワクドキドキの中でする

ストーリー脚本教室(実践編21で心構え編9)

 前回はストーリーが始まってからの『つかみ』について書きました。

◯『つかみ』は、演出に負う部分が大きい。

 ストーリーがはじまってからの五秒とか、五分、十分以内にチェックすべきことなどを書きましたが、実は「つかみ」に関すところは、演出の領域に負うことが大きいです。
 演出というのは、映像作品ならば、監督がやる仕事(実際の影像)のこと。
 小説ならば、作家が書き下ろす、文章のスタイルのことになります。

 具体的に観客の目の前に現れるものが、吸引力を持っていればいいのです。

 すぐれた俳優やダンサーは、ただステージに何もせずに立つだけで、俳優の目を釘付けにすることができます。
 そういう人は、自分で『つかむ』力を持っています。

 しかしわれわれストーリーの書き手は、そういう人たちをさらにやりやすくするために、ストーリーという道具でサポートしてあげなければなりません。

◯ストーリーは道具である。

 僕はストーリーというのは『道具』だと思っています。
 大工さんは、家たてるのに、金槌や釘や鉋や鋸を使って、材木を加工していきます。
 料理人は、包丁や鍋やフライパンなどを使って、料理をつくっていきます。
 われわれは、ストーリーをつかって、感動やエンタメをつくっていくわけです。

 ストーリーは完成品ではありません。
 観客の内側に、化学反応を起こして、目に見えない変化をそこで起こすことができたとき、はじめて完成されるのだと思います。
 だからこそストーリーは道具だと考えるわけです。

 大工さんや料理人たちのように、できればいい道具を使いたいものです。

 道具をうまくつかいこなせるのは、職人です。
 僕はいい職人でありたいと思っています。
 職人というのは、技術を日々磨くものです。
 そこには終わりはありません。
 どこまでも高い技術を求めて、日々を過ごしていきたいのです。
 きちんと人がすめる家を建てる大工さんや、毎日食べて飽きない食事をつくる料理人のように。

 ここで書いているのは、その道具をどうやって磨き、うまく使っていくかについてです。

◯つかんだら、『ワクワクドキドキ』『つぎどうなるの?』で前に進む。

 観客(読者)をつかむためには、最初の五分、十分が大事ということは、もうみなさん充分にわかってもらえたと思います。
 その間にやらなければならないこと、チェックしなければならないことも、前回に書いた通りです。

 あとここには、主人公以外の主な登場人物たちもできるだけ出しておいたほうがいいです。
 主人公とかかわることになる主な登場人物が、あとのほうで出てくると唐突感が出てしまいます。
 なんらかの形で、見る人に紹介しておくことは、大事です。

 そういうふうに出さなければならない情報はたくさんあります。
 それをただ出していくだけでなく、『次どうなるの』という気持ち(ワクワクドキドキ)を観客に抱かせるような展開の中で、それらの情報をうまく知らせていくのです。
 観客が気づいたら、知っていたというような情報の伝え方がおしゃれです。
 そういうおしゃれなやりかたで、ストーリーを前に進めていきたいものです。

◯『セットアップ』という呼び方もあります。
 『設定』『世界観』などと言う人もいると思います。
 主人公とそれを取り巻く世界のことです。
 ストーリーがはじまったときに、これが観客にちゃんと伝わっていないと、せっかくつかんだ観客を、あっというまに放してしまうことになってしまいます。

 ワクワクドキドキさせなが、ちゃんとセットアップを完了していくこと。
 それが出来ているのかどうか、チェックしてくださいね。

 2016年4月4日から、僕がシリーズ構成と脚本を担当している少年向けアニメ『ベイブレードバースト』がテレビ東京系列ではじまります。
 この番組で、いかにセットアップがなされているのかをチェックしてみてください。
 オンエアが済んだら、これを例にとって、セットアップについて書くかもしれません。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:25 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月05日

つかんで、はなさいように

ストーリー脚本教室(実践編20)

 ファーストシーンを書いたなら、次は何をする?

◯まずは『つかみ』

 お笑いやっている芸人さんたちは、良く知っています。
 『つかみ』が大事だということを。
 短い自分たちのショー(だいたいお笑いのステージって三分くらいですよね)で、いかにお客さんを笑わせるかに命を賭けている芸人さんたちは、最初の一発目になにをやってスタートするかということの大事さを知っています。
 つかみとは、お客さんを、自分たちの方に集中させて、離さないということ。
 彼らはオープニングの一瞬、五秒にかけてます。

 ただし、僕らが今から書こうとしているのは、お笑いでもないし、演芸でもありません。ストーリーです。

◯ストーリーを見に来る観客(読者・視聴者)は、けっこう我慢強い。

 お笑いを見に来るお客さんは、短距離走者です。笑えないとなると、とたんに興味を失い。厳しい批評家に変身して、そっぽをむいてしまいます。
 次の人、次のネタがすぐに来ることを知っているから。

 しかしストーリーを見に来るお客さん(読者・視聴者)は、けっこう寛容で、優しくて、我慢強い人たちが多いです。
「さぁ、おもしろい話を見せてね〜。あたしも、やれることはやってあげるから」
 って感じで、きわめて協力的で前のめりな姿勢で、われわれクリエイターが始めるパフォーマンス(作品)につきあおうとしてくれます。
 わざわざ時間をつくって、劇場に足を運んだり、チャンネルを合わせたり、本を買ってページをめくってくれたりしているわけで、作り手側にとっては、本当にもうありがたい、いいお客さんたちなのです。

 それでも彼らの協力に甘えすぎてはいけません。

◯十分、できれば五分以内につかむこと。

 我慢強い協力的なお客さんでも、十分以内、できれば五分以内に彼らを『つかむ』こと。ぜひそうして欲しいです。
 そうしないと、いくら彼らでもしだいに心が離れていき、もじもじ始めたり、チャンネルを変えたり、本を閉じて掃除をはじめてしまうということになってしまいます。

 十分、というのは実に短い時間です。
 トイレで用を足すのにも、十分くらいはかかる人もいるでしょう。
 しかし劇場での十分は、けっこう長いのです。テレビの前の十分、ページを10ページ読むだけの時間は、集中力を必要とする時間です。
 かなりのエネルギーを使う時間は、ぼんやりしている時間の十倍くらい疲れるのです。

 この時間帯にお客さんをつかむことができなかったら、お客さんは疲れ始め、遠ざかりはじめてしまいます。
 あっという間に、取り返しのつかない状況に、われわれを追いこんでいくことでしょう。

 ファーストシーンの次にはじまるシークエンスで、あなたの書いているものは、お客さんを『つかむ力』を持っているのか、チェックしましょう。

◯主人公は誰なのか?
◯主人公は、観客に味方になってもらえてるか?
◯状況は、伝わっているのか?
◯惹きつける要素はあるのか?

 最低でもそれらのことを満たしているようにしてください。
 それらがないと、次の五分で、あなたは地獄を見ることになります。
 ここは細心の注意を払って前に進むところです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:46 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月04日

ファーストシーンを大切にしよう

ストーリー脚本教室(実践編19で心構え編8)

 このところ、ストーリーパターンとゲームをすることについて連続して書いていたので、今回は気分を変えてシーンについて書きます。

◯ファーストシーンを大事にしよう。

 ファーストシーンはストーリーの始まりです。
 なんにもない、ゼロ地点から物語が立ち上がっていく瞬間です。
 おろそかにしていいわけがありません。
 あとにつづくすべてのエピソードに、このシーンのイメージが投影されていくと思ってください。
 だからこそ全体に通じていく(象徴するような)ファーストシーンをつくらなければなりません。

 イメージについて、補足しておきますね。

◯イメージは連鎖して、影響しあい、最後までつながっていくもの。

 僕は演劇の稽古のときには、ウォーミングアップにかならず連想ゲームをやります。
 なんでもいいので、思いつく言葉から、次の言葉を連想して、延々とそれをつづけていきます。
 よけいなことは何も考えずに、ただイメージの連鎖を楽しむだけです。
 例えば、たまご、にわとり、とさか、赤、日の丸、旗、応援団、制服、高校生、テスト、入試……
 てな感じです。
 パッとイメージが出てくるにまかせて、それを遊びます。
 ただ無意識にまかせて、イメージがつながっていくのを楽しむだけです。
 ウォーミングアップをすることで、イメージしやすい脳にしていきます。

 言葉のウォーミングアップは、ほかにもいろいろあります。
 俳句や短歌をつくるのもいいですね。
 むずかしく考えないで、ぱっと思いついたものを詩にしていきます。
 でたらめに即興で歌をうたってみるのも楽しいです。
 あんまり大声でやっていると、ちょっとネジの外れた人に見られてしまいますけどね。(笑い)

◯実は連想は、誰もがやっていることです。
 人間の脳は、連想するようになっています。
 脳は、なにもしなくても、連想してしまうものなのです。

 ストーリーを見る観客も、もちろん連想しています。

 ひとつのシーンが始まると同時に、無意識の連想もスタートして、観客の頭の中ではさまざまなイメージが次々とあふれ始めるのです。

 作家が考え出すイメージのほとんどは、観客もやすやすと思いつくものだと思っていたほうがいいです。
 もしかしたら観客は、自分が思いつく以上のことを思いついているかもしれません。

 だからといって観客が思いもつかないようなことを、あえてしようと思う必要はありません。
 同じでいいのです。
 たぶんまったく同じだということはないでしょうから。

 あなたのイメージは、観客も抱くかもしれないし、抱いていないかもしれない。
 でも、まちがいなく近いところにあるはずなのです。
 そこが大事です。想像の範囲内にあるということが。共有できるところにあるということが。
 
 作家と、観客が、イメージを共有して、ストーリーという海に漕ぎ出し、冒険の旅をつづけていく。
 それがストーリー作りなのです。

 で、肝心のファーストシーンについてです。

◯ファーストシーンのイメージは、作品全体に影響を与えるものとして書くべし。

 ここに書かれたもののイメージが、あとに続くすべてのシーンを象徴するものになります。
 すべてはつながっているのです。
 だからこそ、ここは大切にしてください。

 一行目にエネルギーをかけましょう。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:56 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月03日

作者と観客(読者・視聴者)のゲームを始めましょう

ストーリー脚本教室(実践編18)

 『ゲーム』を見つけて『プレイ』することが大事だと、前回書きました。

 簡単な言葉に言いかえると、『遊びどころを見つけたら、それを心底楽しんで遊び尽くしましょう』ということです。
 遊びどころとは、いろんな物、局面、関係などから生まれます。

 『追っかけ』はわかりやすい遊び所ですよね。
 遊びどころって、どうやったら見つかるの?
 あんまり考えすぎなくていいです。
 頭で考えていると、なかなか見つからないかもしれませんが、僕らの無意識はきっと見つけてくれるはずです。自分も信じてください。かならず見つかります。

 ゲームをどうやって見つけるのかについて、もう少し書いていきましょう。

◯謎解きは誰もが大好き。

 ストーリーのパターンの一つに『ミステリーを解け』があると書きました。
 
 多くのミステリー映画や、探偵映画など、物語の中で起きる事件の謎を主人公が解いて行かなければならなくのが、このパターンの作品です。

 ここにあるのは、まさに謎を解くというゲームです。
 作者は、観客に対して、さまざまな謎をしかけていきます。
 観客は物語の中で、主人公と一緒に謎を解くというゲームをプレイすることになります。

◯シーンの中にもミステリー(謎)をしかけつづけよう。

 大きな物語全体のミステリーだけではなく、短いシーンの中にも、ミステリーをしかけることで、観客を惹きつけることができます。

 ちょっと例を見てみましょう。
 今から書いていくことに出会った時の観客(視聴者)の心理を考えてみてください。

 たとえば、
 「シーンに一人の美少女があらわれる」とします。
 もうそれだけで、そこには謎が発生しています。

 (この少女は誰だ? 何者だ?)

 観客は、それが気になって、知りたくてたまりません。
 ましてや、
 「その少女の目の前に、無残な死体が転がっていた」りしたら、もう大変です。

 (おい、おい、おい! いきなり死体かよ! いったい、何があったんだ?)

 もうこの謎を解かないことには、夜も寝られなくなってしまいます。

 これがシーンの中に謎をしかけるということです。
 謎で、観客をひっぱっていくのです。

◯回答は出すタイミングが大事です。

 こんなふうにしかけたら、すぐに回答を与えてはいけません。
 じらして、じらして、引き延ばしていってください。
 それが観客が求めている、お楽しみなのですから。

 ただし伝えるべきことや、その場で解いてやるべき謎はあります。
 まずこの少女が誰かは、できるだけ早く教えてあげたほうがいいです。

 謎にも、重要度が高いものと、低いものがあります。
 的確に謎を解いていくことが、この『ミステリーを解け』におけるルールです。

 たとえば、この少女が次にこう言うとします。
「お父さん、ごめんなさい……」

 このセリフで、観客は、少女は倒れている男の娘であるということがわかります。
 この少女と倒れている男の関係性がわかりました。
 しかし、さらにもう一つ謎が増えました。

(娘が謝っているということは、父親の死んだ理由に、娘がかかわっているということなのか? いったい、どうして男は死んだんだ?)

 謎はさらに深まりました。
 これでいいのです。

 一つの謎を解いても、さらに謎が深まっていく。
 これが連続していけば、観客を惹きつけ、飽きさせないストーリーができあがっていくというわけです。

◯これは作者と観客のゲーム。

 謎がどう解かれるのかを、観客は予想します。
 その予想を、どれだけ裏切ることができるのか。
 それが作り手と観客とのゲームです。
 予想を超えられなかったら、このゲームは作り手の負けになります。
 できれば観客の予想を超える展開にして、このゲームに勝ちたいものです。
 あなたが勝てば、観客は負けても、気持ち良くそれを認めてくれるでしょう。
 それこそ幸せな作者と観客の関係ですね。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:07 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月02日

ゲームとプレイが大事です

ストーリー脚本教室(実践編17で、心構え編7)

 僕が前回のブログで書いた、ストーリーのパターンは、一つだけがあてはまるわけでありません。
 いくつかのパターンが組み合わされていることがほとんどだと思います。
 逆に考えれば、自分が創作するときに、これらを組み合わせることで、構成の参考になるんじゃないでしょうか。

 ちょっと一つ一つのパターンについて説明していきますね。
 と、その前に、『ゲームを見つけることについて』のお話をします。

◯人間は『ゲーム』『プレイ』が大好きです。

 みんなゲーム好きですよね。
 ゲームって、テレビゲームのことだけじゃないですよ。
 スポーツや、日常の中でのいろんな遊びも、ある意味ゲームです。
 辞書には「遊び」「冗談」『競技」『勝負」などと書いてあります。
 とにかくあるルールの中で、試合をするってことですね。遊びとして。
 ゲームとプレイは、ほとんど同じ意味なのかもしれません。

 ゲームには相手が必要です。
 そして大事なのは、勝負の結果の「勝ち負け」ではなく、その『ゲーム自体』が楽しいのだということです。
 プレイの結果ではなく、プレイしているその瞬間が面白いのだということです。

 なぜ突然ゲーム、プレイの話をし始めたかというと、ストーリー脚本作りにおいても、このゲーム、プレイというのがとても重要だからです。

 意外にこのことについて語ったり、書いたりしているものは少ないです。
 とても重要なことなのにもかかわらず。
 というのは、これは書かなくても、みんな当然わかっているものとしてあるものなのかもしれませんね。
 本能的に。
 ただこのことをちゃんと意識化して、理解しておくと、いろんな局面(書くとき、演じるとき)に役立つので、僕は書いておくことにします。

◯そこでどんな『ゲーム』が始まるのかを知っていることは大事です。

 たとえばテレビをつけて野球の試合を放送していたとします。
 野球のルールを知っている人なら、すぐにその試合を楽しめるようになりますが、ルールを知らなかったら、目の前で行われている競技がさっぱりわかずに楽しめることができません。すぐに興味を失って、チャンネルを変えてしまうでしょう。
 それは、他の競技でも同じですし、それがドラマだとしてもおなじです。
 僕たちは『ドラマのルール』を知っているから、それを楽しめることができるのです。

 ドラマのルールとは、なんでしょう。
 われわれは幼いころから漫画や小説、テレビ、アニメなどを通して、さまざまなストーリー、ドラマを体に取り込んでいます。
 ですから無意識では、すでにドラマの達人です。
 面白いか、そうでないか、楽しめるか、楽しめないかは、すぐに察知してしまいます。
 一言でいうなら、架空の世界で、本物の感情を使って、人と人とが葛藤するもの。
 それがドラマのルールです。

 ドラマの中でも、『ゲーム』はつねに起きています。
 それを知っているから、われわれはストーリーを楽しむことができるわけです。

 そこでどんなゲームが生まれているのかを察知することできるのなら、意識的にそれを使っていくことで、ストーリー(ドラマ)を面白くしていくことができます。

 シーンの中にゲームを見つけること、または作り出していくこと。
 これがいわゆりストーリー作りの技術です。

◯どんな『ゲーム』を作るのか?

 シーンの中で、どんなふうにゲームが起きているのか、または作られているのかを、わかりやすく例にとって説明しますね。

◯『追っかけ』
 まえのストーリーにはパターンがあるを書いたときの中に、『追っかけ』がありました。
 これはとてもわかりやすいです。
 誰かが誰かを追いかけていたり、追いかけられていたりするシーンですね。
 ただ人が走るだけではないです、車による追っかけもあるし、宇宙船の追っかけもあるし、動物のおっかけもあります。

 追っかけのシーンでの観客の興味は、どっちが勝つかです。
 追いつくのか、追いつかないのか、逃げ切るのか、捕まえるのか。
 どっちが勝つのか? 勝負はどうなる?
 これがゲームです。

 広い意味では、格闘技で戦っているのも、追っかけに入るのかもしれません。
 拳と拳でおっかけをしてるってわけです。

◯『追っかけ』は便利です。

 追っかけには、ゲームの面白さが詰まっているので、観客の興味を惹きつけることができます。
 シーンが盛り上がります。
 これは使わない手はありません。
 自分の書こうとしているストーリーを、ハイスピードで盛り上げたいときには、『追っかけ』を使ってみましょう。
 使いすぎると、効果は薄れてしまいますが、いいタイミングで使うともの凄い効果を発揮します。

 僕は『追っかけ』大好きです。
 ぜひあなたも使ってみてください。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 12:56 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月01日

ストーリーにはパターンがあります

ストーリー脚本教室(実践編16)

 前回、『お化け屋敷』映画というタイプがあると書きました。

 映画のタイプ分けは、自分が書こうとしているストーリーがいったいどういうものなのかというのを、見失わないようにするのに、役立ちます。
 がんがん書いている人で、自分の書いているものが何なのか見失う人は、少ないんですけどね。(みんなかしこい人たちだから)
 だから、このタイプ分けは、あまり役にたたないかもしれません。

 ただ、面白いんです。
 人の作った作品を見て、それがどういうタイプの映画なのか、分析するのは。
 役にたたないものほど、面白いってね。
 もしかしたら、他のことにも少しは役立つかもしれませんけど。

 このブログでは、前にも紹介しましたけど、ハリウッドの優秀な脚本家だったブレイク・スナイダーは著書の「SAVE THE CAT」で、すべての映画は10のタイプに分けられると書きました。
 『家のなかのモンスター』
 『金の羊毛』
 『魔法のランプ』
 『難題に直面した凡人』
 『人生の岐路』
 『相棒愛』
 『なぜやったのか』
 『おバカさんの勝利』
 『組織のなかで』
 『スーパーヒーロー』

 これらがブレイク流のストーリータイプです。
 ブレイクは、このストーリータイプについて、「10のストーリータイプから学ぶ脚本術」という続編の本も出してます。
 ひとつひとつがどういうことなのかというのを詳しく知りたい人は、ブレイクの本を読んでみてください。
 なるほどー、と思うことが多いはずです。

 ハリウッドで何億円もの脚本料を稼いでいた人が書いてることだから、これはもう間違いありません。(お金がすべてじゃないですけど、ちょっとうらやましいです。正直なところ。しかも、的を射てるから、もう焼き餅やいちゃいます)

 僕が『お化け屋敷』タイプって書いたのは、ブレイク流だと、『家の中のモンスター』にあたります。

 ブレイクは、映画の分析をすることで、自分の作品をより良きものにしていくのに役立つと書いてます。
 確かにその通りでしょう。
 知らないより、知ってるほうがいいに決まってます。

 ただ学んでばかりいるより、実践することも大事なので、頭でっかちにならず、どんどん書きましょう。
 走りながら考えることが大事です。

 これから書くのは、スナイダー流に似ていますが、僕なりにわかりすい分類を考えたものを紹介します。
 こんな感じです。

◯お化け屋敷でヒー!
 (これは前に書いたお化け屋敷パターンのことですね。とにかく怖いことが次々と主人公に襲いかかります)

◯謎を解け!
 (主人公は、どうしてそうなったのかという謎を解かなければならなくなります)

◯冒険の旅にゴー!。
 (主人公は何かをもとめて冒険の旅にでなければならなくなります)

◯スーパーヒーローにおまかせ!
 (主人公はすごいスーパーヒーローです。おそいくる困難を自力で解決していきます)

◯無敵のバカボンパパ。
 (主人公がバカパワーを発揮して、大活躍します)

◯やりたくないのにやるはめに。
 (主人公は、やりたくないことを、やらなければならなくなってしまいます)

◯好きになっちゃった。
 (主人公は、誰かを好きになってしまいます)

◯すごい人がいました。
 (主人公は実在のすごい人がモデルです)

◯仲間になろうぜ。
 (主人公は、パートナーと仲良くならなければならなくなります)

◯復讐するぜ。
 (主人公は、だれかやられて、やりかえさなければなりません)

◯巻き込まれちまった。かんべんしてよ。
 (主人公は、事件に巻き込まれて、とんでもないことにあいます)

◯追っかけ。
 (とにかく追いかけ、追いかけられます)

 ざっと思いつくままに、書いてみました。
 ストーリーを分類すると、どれかに当たります。
 いくつかの組み合わせの場合もあります。
 こうやって分類すると、実はストーリーというのは、そんなにパターンが多くないことに気づきます。

 一つ一つのパターンについては、ここでは詳しく書きませんけど、自分でいろんな作品を見ながら、分類してみるのは面白いですよ。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:20 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月28日

主人公は、一番困る人です

ストーリー脚本教室(実践編14)

 主人公を起てるための方法を、前回はいくつか紹介しました。
 ストーリーが縦糸ならば、主人公を魅力的に見せるためのエピソードは、横糸かもしれません。
 縦糸と横糸がうまくからみあって美しくて強い布ができるように、物語もそうでなければなりません。

◯人が人を困らせる方法は、わりとすくない。

 僕は即興芝居(インプロ)のトレーニングを、俳優さんたちとよくやります。
 それは僕がインプロのチームを組んでいて、その演出(トレーナーといってもいいかもしれません)を受け持っているからです。
 そのトレーニングの一つに、『相手を困らせる』と言うものがあります。

 俳優は即興で相手を困らせる役を演じるのです。

 たとえば、『貸してたお金、返してもらう期限は今日なんだけど』とか『Aさん、診察の結果が出ました。あなたは末期癌です。まちがいありません』とか『別れましょう。もうつきあえない』とか、相手を困らせる役になってシーンを始めます。

 これはできるだけ熱量の高いシーンをつくるためのトレーニングで、僕が考案したものです。
 そういうことをやっているうちに、実は「相手を困らせるというシチュエーションは割と少ない」ということに気づきました。

 そしてもう一つ気づいたのは、この困らせるアイディアは『相手の感情を揺さぶるもの』でなければならないということです。
 そうでないと面白くならないのです。(面白くなるというのは、相手が本当に困って感情が変化するという意味です)

◯相手を困らせるアイディアをためこもう。

 ストーリーを面白くするためには、この『困らせるアイディア』というものが必要になります。
 思いついたら、メモしてためこみましょう。

 僕たちは日常生活の中では、できるだけトラブルが起きないように気をつけながら生活しています。他人を困らせないように暮らしています。しかし、面白い物語をつくろうと思ったら、それをやらなければならないのです。『事件を起こし』『登場人物たちを困らせること』それが必要です。

◯主人公は、『困っている人』です。

 ここに役者二人がシーンを演じています。困らせている人と、困っている人がいるとします。
 観客はどちらの役者が、このシーンの主役だと感じるでしょうか?
 そう。困っている側の人です。
 困っている人が、どうやってその問題を解決させるのだろうかというところに、興味を引かれます。

 物語の中で、『主人公とは一番困る人』です。
 その困った状況のなかで、どうやってそれを切り抜けるか、そしてどう変化していくのか、それが面白いということなのです。

 人を困らせることを、毎日考えなければならないのが、ストーリーを作る人間です。
  


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2016年02月27日

誰かのために書くということ

ストーリー脚本教室(心構え編6)

 書くことは一人の作業だけれど、自分のためだけではなく、誰かのためにという気持ちがあると、『書くエネルギー』がわいてきます。

 なぜ書くのか?
 そう自分に問いかけてみてください。

 プロで書いている人は、「注文があるから」書くという人もいるでしょう。
 でも、そういう人でも、もし注文がなかったとしても、きっと書くという人がほとんでしょう。

 そう文章を書き続けている人は、ほとんどが『書かずにいられない人』なのです。
 書きたくて、書きたくて、どうしようもなくて、毎日、書いてしまう人。
 そういう人たちが、まちがいなくいます。
 あなたも、そういう人の一人かもしれません。

 僕も、その一人です。
 きっと注文がなくても、なにかしらの創作物を書くに決まってます。

 今の時代SNSなどで、さまざまな発言が可能で、毎日いろんなことをつぶやいている人も多いです。
 僕も、これを書いているブログや、フェイスブック、ツイッターなどを使っています。
 番組や演劇公演の告知にも便利だと思っているからです。
 創作物も、公開するのはやりやすくなりました。
 
 最初の動機は、自分が書きたいから書くという、すごく原初的なものでしょう。

 それに『誰かのために』という思いが加わると、そのエネルギーは方向性を持ち、さらに強くなります。
 この連載ブログも、「作家志望の一人の青年のために」という思いではじめたものです。
 おそらく彼に、僕は昔の自分を見たのかもしれません。
 昔の僕をはげましてくれた人たちから受けたエネルギーを、僕も彼に送りたいと思ったのでしょう。

◯演技をするときの俳優も同じです。

 俳優が演技をするときに、どんな心構えで演じるといいかと聞かれたなら、僕はこう答えます。
『自分のためではなく、相手のためにという気持ちで演じてください』
 シーンを演じるとき、多くの場合、俳優には相手役が存在します。
 このときに相手のために演じると思ってほしいのです。
 そうすることで相手のセリフ、行動に集中できるし、それを感じる相手も、きっとそれに応えてくれるようになります。
 すなわちシーンのエネルギーは高まり、いいシーンになっていきます。
 それはそれを見ているお客にも伝わります。
 結果的に、お客のためにもなるというわけです。

 誰かのために(相手のために)演じている俳優は、きっといい俳優と言われるでしょう。

◯誰かのためにということは、『対象がはっきりしていること』ということ。

 このことについては前にも書いたかもしれませんが、自分の書いている作品のターゲット(観客・読者)を、はっきりと見ながら作品を書くことも、書き手にエネルギーを与えてくれます。
 この人たちのために書くのだ!
 という気持ちは、まちがいなく力になるのです。

 僕はいま、四月から始まる『ベイブレードバースト』というアニメの脚本に取りかかっているのですが、この作品のために、実際にベイブレードで遊んでいる少年たちを見に行きました。
 東京と福岡の二カ所のベイブレードの大会を取材に行ったのです。
 そこに集まっている少年たちを目に焼き付けました。
 自分の書こうとしている作品を見てくれるのは、彼らだと思うからです。
 今の作品は、彼らのために書いています。
 彼らが楽しんで笑顔になっている姿を想像します。
 そのイメージは、また僕の力になってくれるのです。

 あなたも自分の作品を読んで(見て)くれる人の姿をイメージしてください。
 そしてその人のために、作品を書き始めましょう。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 12:17 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月21日

原稿もダイエット

ストーリー脚本教室(心構え編5の続き)

◯『直し』についての、実践的なことについて

 自分が書いたものを、初稿のまま発表したり、ネットにアップしたりするのは、もちろんダメです。

 書いたものは、必ずもう一度目を通してください。
 そして何回もチェックして、書き直して、完成に近づけていきます。
 それは絶対にしなければならないことです。

 そのために僕は書いたものは、『必ずプリントアウト』して、紙でチェックします。
 今はほとんどの人がパソコンで原稿を書いていると思います。
 キーボードとモニターで書いた文章は、やはり手書きの文章とは、微妙に違ってきます。
 それはかまわないのです。
 しかし誤字脱字とか、モニター上だとけっこう見逃してしまいがちなんですね。
 ワードなどチェック機能がついているソフトもありますけど。
 プリントして、紙に落として、読み直すということには、そういう誤字脱字のチェック以外にも、ひとつ効果があります。
 手で紙に触り、ペンを持っているということで、脳の新たな部分が刺激されるようなのです。

 キーボードとモニターで書いていたときとは違うアイディアが、読み直しているときに出てくることがあります。
 それも直しにはどしどし使っていきましょう。

 そして無駄なところを発見しやすいということもあります。
 無駄なところは、ずばずばカットしたほうが、いい作品に仕上がっていくのは当然のことです。
 無駄に気づいたら、まよわず削り取りましょう。

 簡潔であれば、簡潔であるほどいいです。
 原稿のスリム化、大事です。

 体と脳は密接につながっています。
 体を動かすと、脳が動きます。

 じっとしてモニターをにらんでばかりじゃなく、動きましょう。歩きましょう。走りましょう。踊りましょう。
 脳はみるみる活性化していくはずですよ。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:36 | Comments(1) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月20日

人の意見を受け入れよう

ストーリー脚本教室(心構え編5)

◯『直し』について、または『受け入れること』について。

 実践編をつづけたので、今日は心構え編です。
 前回の心構え編4では、締め切りは、作家の味方であるという話を書きました。
 締め切りがあるから、がんばれるんだということです。

 今回は、『直し』についてです。
 一人で書いていると、自分の作品の足りないところや、間違っているところは、なかなか見つけにくいものです。
 人は、自分のことについては、客観的になることは本当に難しいです。

 自分が書いたものを、客観的に見るということはとても大事です。
 そのためには他人の意見を聞くということ、そしてそれを取り入れるということが。

 『素直でいること』『人の話を聞くこと』『いいアイディアはどしどし取り入れること』
 こう書くと、まるで脚本のための心構えではなく、日常の生き方についてお説教しているみたいになってしまいますね。
 でも日常と表現とは、実はすごく近いところにあるのだと思います。

 もちろん『自分の意志を通すこと』は大事です。
 『自分で決めること』も。
 ただそこにいく過程で、ほかの人たちの考えを取り入れるというのも、いいことだと言いたいのです。

 『意見を聞くこと』は、もしかしたらきつい体験になることもあります。
 相手によっては、厳しい意見や、だめ出しをしてくるかもしれないからです。
 自分の書いたものについて、厳しい意見を聞くのは、気持ちのいいことではないこともあります。もしかしたら傷つくかもしれません。がっかりさせられ、落胆してしまうかもしれません。
 でも、それを恐れていては、前進はありません。

 それらの厳しい意見も、きつい言葉も、自分の枠をひろげていくためのエンジンになるんだと思ってください。
 そしてそれらを受け入れたとき、あなたは、次のステップに踏み出すことができるのです。

『受け入れてみましょう』まずは、相手の意見を。
 そこには、かならず理由があるのですから。

 プロになっても、『人の意見を聞くこと』『直し』は、アマチュアのときよりも大事になります。
 編集者やプロデューサーや、監督、スポンサーなど、多くの人達があなたの作品に対して、意見を言ってくれます。
 それらのことばに『感謝しましょう』そして、意見を取り入れて、あなたが『決めて』作品を成長させていくのです。
 プロも、みんなやっています。

 何回も、何十回も、直しを繰り返して、作品は完成に近づいていきます。
 『直しを怖がらずに、楽しんでください』
 『人の意見を聞いてください』
 『客観的に自分の作品を見てください』
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:46 | Comments(0) |  | 演劇 | 映画と小説 | 脚本