2017年03月26日

ベイブレードバースト、最終回

いよいよ明日の3月27日月曜日は、シリーズ構成をしているアニメ番組『ベイブレードバースト』の最終回です。
一年間、全力で脚本書いてきました。
コロコロの原作物ですが、アニメのストーリーに関してはかなり自由につくらせていただきました。
むしろ原作漫画よりも、テレビの脚本の進行を先行させなければなりませんから。
さらにホビー物の宿命で、おもちゃの発売予定とアニメの放映をシンクロさせなければならなかったりする難しさもあります。
そういうものもふくめてテレビアニメ作りだと思います。
企画からふくめると満2年かかってます。

うれしいことに引き続き2期がはじまることが決定しています。
タイトルは『ベイブレードバースト神(ゴッド)』となります。
主人公と世界観は同じですが、舞台を世界に移しての物語になります。

これを書いている時点で、脚本は半年ほど先の回を書いているわけなんですけど、まだまだその先はおぼろげにしかみえてません。
走りながら考えてます。

最終回のオンエアとはあまり関係ないんですが、
OvObのサイトに載せている、僕の高校生向けの脚本を追加しました。
『カナリア』という芝居です。女子高校生五人でできます。
のっけたのは2009年に上演したものです。
https://sonodahideki.wixsite.com/ovob/blank-1

高校演劇部とかで脚本を探しているなら教えてあげてください。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:44 | Comments(0) | テレビ | 演劇 | 脚本

2017年02月15日

卒業

インプロを教えていた高校生たちが出演している卒業公演を見てきました。
彼らが一年生に入ってきたときから関わっているので、まるで親の目線で見てしまいます。
もっとしてあげられることはなかったのかと自問自答。
卒業したら、なかなか会えなくなるしねぇ。
本当にお疲れさまでした。

卒業公演。
かつては僕も演出として十年間かかわりました。
最後にやったのは、もう五年前です。
最初の卒業生を送り出してから、もう十五年もたちます。
感慨無量。
そのとき生まれた赤ちゃんが、次は高校にはいってくるのね。
すごい!

自分が高校を卒業したときには、自分を教えてくれていた先生たちとの別れに、ほとんど何も感慨をもちませんでした。
友人たちと別れるのは寂しかったもんですけど。
きっと先生たちも、なにがしかの感情をもって送りだしてくれていたんだなと、いまならわかります。
自分は先生たちをあまりレスペクトしていない生徒だったなといまさら反省です。

お世話になった先生たちに、いまさらですか感謝しております。
遅くなりすぎですけど。

自分が高校卒業したときは、浪人生活のあまりにも漠然とした見えない未来への不安と、なんの希望ももてずに、ただ予備校に通うつまらない日々に、ただ絶望していました。

大学に入り、東京に出てきてから、ようやく自分をおさえつけていた何かから解放されて演劇と出逢い、それからようやく毎日が生きる実感に満ちた気がします。

演劇には、いろんなものをもらいました。
そのお返しを、していかなければならないんだろうと思います。

十七年前に、高校生に演劇と脚本をおしえることになったとき、今書いたのとまったく同じことを思ったのでした。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:57 | Comments(0) | 演劇

2017年02月05日

脚本塾やります

今月からまた脚本塾を再開することになりました。
八丁堀のユーキーススタジオでやります。
受講料けっこう割高かもしれないけど、分割とか相談にはのってくれるそうです。
東京近郊の人しか受講できないのがもうしわけないけど、地方の人たちにも伝える方法がないか模索したいです。
九州、佐賀、鳥栖とかでもやれたらいいですね。

詳しくは、以下のページを見てね。
https://www.facebook.com/studioyoukeys/
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:39 | Comments(0) | 演劇 | 映画と小説 | 脚本 | オセッカイザー

2016年05月12日

主人公について

脚本を書いたときに、チェックすべきこと。

観客が物語についていこうとするとき、まず感情移入したい人を登場人物の中で探します。

もっともそれがしやすい人が、主人公となります。

それができていない作品が多すぎる。
どうしてこんな簡単なことがわからないのかが不思議なのだが、理由の一つがわかった気がしました。

俳優さんが主宰して、自分で作演出している時に、よく起きることの一つ。

稽古の段階から、自分(作演出)は主演の人のことを良く知っていて、その人が主演だと認識しているので、物語がはじまるときに、その人が主演としてたっていると思いがちなのだ。(思い込みがち)

初見の人は、まったく違う視点で見ていることがわかっていない。

そりゃ、トム・クルーズやデカプリオが主演ならば、観客の誰もが、その人を中心に物語が動いていくのだろうとわかるだろうが、ふつうの俳優では、それは無理です。

舞台がはじまるときに、まず誰についてきて欲しいのかを、ちゃんと観客に伝えるべきなのです。
それさえできていれば、最悪の事態は避けられやすいと思います。

そうする方法(技術)は、いくつもあります。
それを使うべき。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:01 | Comments(1) | 演劇 | 脚本

2016年05月07日

七月に向けての稽古始まる!

七月にやる「園田英樹演劇祭」に向けてのインプロチームの稽古が始まりました。
精鋭と新人が入り交じっての稽古は、初日から大盛り上がり。
まだ全員がそろったわけではありませんが、これから有意義な稽古を本番まで続けていけたらと思います。

指導をしている僕がやろうとしていることは、『できるだけストレスなく、ロングフォームのストーリー作りができるようになるメソッド作り』です。
ロングフォームというと、初心者にはハードルが高そうですが、そのハードルを越えていくことで、その他のインプロの大事なところを学べるとも思っています。

経験者にも、未経験者にも有効な方法をさぐっていきます。

脚本家としての技術のすべてが、インプロの指導にも役だっています。
逆に、インプロを教えながら、自分の脚本技術のおさらいにもなります。

初回の今回は、『主人公をつくる、あくまでも簡単に』というテーマで進めました。
参加者のみなさんの反応も上々でした。
あ、写真を撮っておけばよかったーー!  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:23 | Comments(0) | 演劇 | 脚本

2016年04月24日

インプロで主人公をつくるエクササイズ

インプロ、ショーコース、一回目

 あくまでもショーでストーリー性の強いロングフォームインプロをするための稽古をはじめました。
 他のインプロヴァイザーにも参考になるかもしれないので、どんなことをやったのかを、ざっくりと紹介しますね。

 稽古の参加者は、みんなショーに出た経験のあるインプロヴァイザーたちです。
 そして脚本の舞台にも出演している俳優でもあります。
 演技とインプロの基礎的なことはすでにわかっているプレーヤーたちだということを前提として、稽古をやっています。

 インプロチームでストーリーをつくるためには、プレーヤーたちの共通認識と理解が必要です。
 全員で同じ方向を見て、前に進んでいかなければならないからです。
 そのためのトレーニングをしていきます。


◯『連想』と『衝動』
 この二つを、トレーニングをするときのキーワードにしています。
 インプロをするときに、もっとも使う二つの感覚です。
 プレーヤーの内側に起きるこの二つの感覚にしたがって演技をしていくことが、もっとも大事だと思っているからです。
 エクササイズに入る前のウォーミングアップは、この二つをだしやすくするためのものを選びます。

◯エクササイズ

◯名前をつける

 シーンに登場してくる登場人物の名前というのは、これから生まれる物語に、すごく大きな影響を与えます。
 (多くの物語の主人公の名前を思いだしてください。それぞれその物語を背負うにふさわしい名前がつけられているはずです。)
 特に主人公の名前は、重大です。

 僕も脚本家として、さまざまな主人公を書いてきましたが、いつも主人公の名前をつけるときには苦労してきました。
 これは簡単なことではありません。

 普通の名前というをつけるのは、それほど難しくないんですが、特別な名前というのは、おいそれと転がってはいないからです。
 もちろんキラキラネームの流行から、日常でも主人公みたいな名前をもった人もいるにはいらっしゃいますけどね。

 ですから、まず最初に名前を相手につけるエクササイズをします。

◯名前(キャラクター)には、四つの種類があります。
 まずはそれをわかっていなければなりません。

①ヒーロー
②普通の人
③負け犬
④罪人(悪人)

 ヒーローはまさにスーパーヒーロー、英雄、尊敬できる人たちです。みんなのあこがれの的の人物のことです。
 普通の人は、読んで字のごとく、平凡でわれわれと同じような人物です。
 負け犬は、弱者です。失敗して傷ついて、弱っている人たちのことです。
 罪人は、罪を犯している人、悪人です。アンチヒーローたちのことです。

 多くの物語では、登場人物の名前だけで、多少の性格や、役割がわかるように作家は工夫しています。あとからつけていることもあるでしょう。インプロでも、これを使わない手はありません。

 その主人公によって、(その名前によって)これから展開する物語の大きな方向性が決まっていくのですから。

◯エクササイズの方法

1、基本的に円になって立ち、これから相手につける名前がどのパターンのものなのかというものを決めます。
 「じゃあ、ヒーローの名前ね」
 そして、相手を見て、イメージがわくのを待ち、わいてきたら、その人を指さして『名前を与えます』
 「アボカドマン」
 アボカドマンと呼ばれた人は、自分のこと指さしてを「アボカドマン」と繰り返します。
 そしてまた誰かを見て、イメージして、その人に名前を与えます。
 「神宮司剣介」
 これを繰り返します。
 「春風香」「ワンダースラッシュ」「青空かける」「スーパージャスティス」「織田信長」などなど。

 さまざまなヒーローっぽい名前が生まれてくるでしょう。

 これを「普通の人」「負け犬」「罪人」でもやります。
 それぞれ、それっぽい名前が生まれてくることを体感します。

 たとえば、
 「普通の人」……田中ひろし、鈴木あきら、吉田よしこ、メリー・アン、ジェームズ、キム、などなど。
 「負け犬」……林家すべる、きたいなしお、今田ざんねん、未来なしこ、おしいことよ、またまけた。
 「罪人」……罪田おかす、闇尾ぬすむ、マックロ、ひとだころす、ダークバイン、ブラックキラー、などなど。

 普通の人の名前はつけやすいけど、負け犬、罪人の名前などは、ちょっと難しいです。
 いきなり即興でつくるのは、たいへんかもしれません。(このあたりはエクササイズとかショーのときに工夫するべきところかと思います)

 このエクササイズの目的は、名前をつけることに慣れると同時に、名前からインスパイアされることが大きいということを体感でわかってもらうということにあります。


◯主人公を作る

 物語の中では、主人公の役割は重大です。
 主人公しだいで物語が、どうなるのかが左右されると言っても過言ではありません。
 なんといっても観客は、この主人公と共に物語を体験するのですから。

◯エクササイズ「主人公をつくる」

 やはり円になって、「名前をつける」のときの要領で、一人に名前をつけます。(五六人)
 つけられた人が嫌だったら、また別の人が別の名前をつけます。

(この拒否権はつけられる人にまかせます。インプロでは、イエスアンドが基本だということは、やっている人なら誰しもが知っていることですが、乗れないアイディアもたまにはあります。そういうときは衝動にしたがって否定することも大事です。さらにインプロをやるときには衝動にしたがって演技をすることが求められますが、シーンの最初とか、思考が必要な時もあります。そのときはできるだけシーンに飛びこむ前にアイディアを思いつきます。そしてシーンに飛びこんでからは思考に入らずに、その瞬間を活きた演技に没頭していくことです)

 一人に名前がついたら、その人物を全員で詳しくしていきます。
 一人一個ずつでかまいません。

 例えば、こんな感じ。

A「アボガドマンさんは、アボガドを食べるとスーパーヒーローに変身するんですよね」
アボガドマン「はい。アボガドにひめられた超古代のパワーがわたしの体のDNAに力をあたえて変身できるようになりました」
B「アボガドマンさんには、妻と六歳の息子さんがいますよね」
アボガドマン「はい。次は娘が欲しいと思っています」
C「家族にはアボガドマンに変身できることは秘密にしてますよね」
アボガドマン「ええ、家族に心配をかけることはできませんから」
D「アボガドマンさんが変身できる時間は、一分しかありませんよね」
アボガドマン「はい。せめて三分はもつといいんですけと、一分しかもちません」
E「アボガドマンさんは、両親を殺した悪人を見つけ出して、復讐したいと思ってますよね」
アボガドマン「ええ。おさないころに両親を殺した犯人をいつか捕まえて、復讐したいと思っています」

 瞬く間に一人の主人公が出来上がっていきます。
 そしてこの中に、次に展開していくであろう『ストーリーの種』がたっぷりふくまれていることに気付くでしょう。

 このときアイディアをつける側は、考えすぎる必要はありません。
 基本的に大事な要素がいくつかあるので、それをちゃんと着けてあげます。
 基本的なこととは、次の要素です。

①年齢と性別。
②家族、もしくは恋人、伴侶はいるのか、いないのか。
③苦手なこと、弱点はなんなのか。(これが特に大事です)
④目的(欲求)はなんなのか。

 最低限、以上のことが明らかになっていると、舞台上にフィクションの主人公がリアリティを持って立ち上がってきます。

 例ではヒーローのアボガドマンを作りましたが、このエクササイズを、他のパターンの主人公でもやっていきます。
 普通の人は作りやすいと思います。そして「負け犬」「罪人」のキャラクター作りがけっこう難しいことに気付くでしょう。
 ふだんの日常では、あまりそれらの人々のことを意識せずに生活していますから。

 しかしエクササイズなので、うまくいかなくてもいいので、何回もやってキャラクター作りになれてください。

 このときに一人につけくわえるアイディアは、多くて5、6個でいいです。
 あまり多すぎてもおぼえていられないものです。
 一人ができたら、次の人を新たに作っていきます。
 これを参加者全員分やります。
 時間の余裕があれば、何回もやっていいです。基本的につけるべきアイディアをつけられているかどうかをチェックしながらするといいでしょう。

 いま紹介したエクササイズはいわゆる「ホットシート」と呼ばれているものからアレンジしたものです。
 脚本家は、ストーリーを書きだすまえに必ず人物の設定案をつくるものです。
 かなり細密な資料をつくることもあります。(履歴書を作る人もいます)
 それらがこれから書いていく脚本を支えるものだということを知っているからです。

 このインプロでやる、主人公作りのエクササイズは、脚本家が一人でやっていることを、プレーヤー全員でやるように開いたものです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 06:55 | Comments(1) | 演劇 | 脚本

2016年04月15日

心に情熱の火をつけること

高校生への脚本とインプロの授業がはじまりました。
週に一回ですけど、ういういしい高校生と交流するのは、毎回新鮮です。
十六年目になります。
ふと気付いてびっくりしました。
新入生の子供たちは、僕が教えることをはじめてから生まれた子たちなんですね〜。

そして二年前一年生だったときに、三ヶ月だけインプロを教えた子たちが、三年生になっていました。
彼らの成長も感じて、高校生の三年間というのは、人間が見た目も精神的にも大きく変化するときなのだというのを、実感します。

自分で言うと自慢になってしまいますが、かなり面白い授業をやっていると思っています。
十五年間、さまざまなトライアンドエラーを繰り返して、メソッドを開発してきましたから。

しかし高校生たちには、テクニックを教えるよりも大事なことがあると思っています。
まだこれから何にでもなっていける可能性の塊のような子たちに必要なのは、自分を自分ではげまして育てていける情熱の火だと思います。
彼らの心に、その火をつけられるようにがんばります。


脚本の授業では、シアターゲーム的なことをやったりしながら、こちこちに固まっている社会性という名の無意識を取っていくことからはじめます。
自由な発想で創作をする脳にしていくのです。
連想ワードゲームなどをたっぷり目にやります。

発想力の基本は、連想力だと思うからです。
無意識を使って創作をする。そこに近づけるようにしていきます。

インプロの授業では、今期は、エクササイズのやりかたを少し変えてみることにしました。
即興の授業なのに、一回目は脚本を使った、本読みから始めました。
脚本から、「感情の変化」を読み取ること。
短いセリフのやりとりの中にも、無数の感情があって、それが瞬間瞬間、変化していることに気付くこと。
それをまず理解するためには、脚本を読むことから始めたほうがいいと思ったからです。

渡された脚本のセリフの横に、「そのセリフはどんな感情で言うのだろうか?」というのを、( )の中に書いていきます。
いわゆるサブテキストを読み取る練習です。それを感情にしぼったやりたかたです。

インプロ(即興劇)でも、まずはちゃんと感情を使ったやりとりのあるシーンを作ることが大事です。
それをするためにも、これから自分たちがインプロでやるようになることに近いシーンを、脚本で読んでおいた方が理解は早いだろうと考えました。

スポーツを始めた選手には、まずは正しいフォームを教えることが大事です。
正しいフォームを知らないまま、自分流でやりはじめると、体を壊したり、いらない癖がついてしまうことが多々あります。
それを避けるためにも、最初に正しいフォームを体験してからの方がいいと思ったのです。

登場人物の感情と、その変化こそが、なによりもシーンを面白くしているのだということをわかった上で、いいインプロができるように指導していきたいです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:01 | Comments(0) | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年04月14日

声優さん志望の人のインプロについて

ストーリー脚本教室(番外編3)

 前々回に書いた、番外編の続きです。

 俳優にとって、インプロ(即興)のトレーニングは有効であることは間違いないですが、それぞれの人がインプロのトレーニングに何を求めているのか、はっきりと自覚してやったほうがいいと思います。

 僕なりに思うこと、個別に書いてみたいと思います。

 今回は先日も話題にした「声優」さんにとってのインプロトレーニングについてです。

 インプロのトレーニングが、声優にとって、どういうところに良い影響があるのか。(これはあくまでも僕の私見です)

 インプロのトレーニングにより、

「失敗をすることを怖れない体質」
「いつでも遊ぶという心」
「緊張しないこと」
「瞬間的に感情を出す力」

 などは確実に鍛えられます。
 「ストーリーのなりたちを理解することで、台本を読み解く力」もつくでしょう。

 しかしこれが現場で役立つためには、まずは現場にたどり着かなければなりません。(つまり声優事務所内でマネージャーに評価され、オーディションを受けさせてもらい、なおかつオーディションに受からなければななないのです)

 現場にたどり着くためには、なによりもまず演技力、表現力が必要です。

 それを身につけるためには、なによりも台本を使っての演技力を鍛えるためのトレーニングが必要です。
 台本をきちんと読み込んで、それを正確に表現することができるか。

 そのために最も役立つのは、舞台俳優としてのトレーニングだろうと思います。
 キャラクターをつくりあげ、それを実行する技術が必要です。
 そのためには全身を使っての表現力の養成が大事です。

 そういう意味で、声優志望の人にはインプロよりも台本を使っての舞台劇のトレーニングを、僕はお薦めします。
 もちろんインプロ力は必要ですが、インプロができるからと言って、声優としての仕事があるかというと、そうではないからです。
 結果(声優としての仕事)を得るためには、まず自分になにが足りないかというのを、正確に把握して、それをおぎなうためのトレーニングをするべきだと思います。
 それはインプロではないかもしれません。

◯いいインプロの芝居をするためには、リアリティある演技力、感情表現の使い方が必要。

 即興は、演技力がなくても出来ます。
 (ここでは人に見せるための演技のことを言っています。人は、無意識に演技をして生きている生き物です。そういう無意識的な演技のことではないです)

 インプロでは、演技によってキャラクターをつくらなくても、そのプレーヤー自身で舞台上に立ったとしても、シーンは成立します。
 (最高の演技は、演技しないこと。という考えもありますが、そういう領域に到達している人には、ここでいう演技力の養成というのは、すでに必要ではありません。)

 演技力が無くても、インプロは出来てしまいます。
 実はインプロは簡単なのです。
 マインドさえしっかりしていればいいのです。

 テクニックがないということが、最大のテクニックになるときもあります。
 その証拠に、小学校低学年の子供がするインプロが、だれよりも面白かったりするのを、僕は何度も見ています。

 ただし、ストーリー性の高いロングフォームやインプロミュージカルをきちんと成立させるためには、インプロの知識、経験と、たしかな演技力や歌唱力が必要です。
 インプロをやる俳優さんたちには、この演技力と歌唱力を高いレベルで持って欲しいのです。

 演技の素人ではなく、演技のプロがインプロをやることで、見ごたえのあるシーンが作れるようになっていくのは間違いありませんか。


◯演技の素人のインプロと演技のプロのインプロは、同じインプロでも、サッカーと野球くらいの違いがあります。
 サッカーと野球は、同じ球技という範疇にありますが、二つのスポーツは、まったく違います。
 両方とも、球技(インプロ)としての楽しみは同じなんですが、それぞれの質は別物です。

 観客の立場だと、僕は両方を見ていて楽しめるんですが、俳優さんは、よりリアリティのある演技によるインプロをしたくなるだろうと思います。

 これは声優さんにとっても同じでしょう。
 まずは演技力を強化すること。
 インプロ力は、その演技力をベースにしてこそ活きるものだと思います。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:15 | Comments(0) | 演劇 | 脚本

2016年04月13日

四月、いろいろ始まります。

四月なので、学校が始まりました。
僕は高校生と大学生を相手に、週一で脚本と即興を教えています。
もう十年以上にもなります。
そのなかで、いろいろと教えるためのメソッドを考えてきました。

教えることで、教わることがあると気づかされたこの十五年です。

多摩美の映像演劇学科は、今年の四年生が最後の生徒になります。
学科がなくなってしまうのです。
つまり僕の多摩美での授業も今年が最後になるでしょう。
最後の一年を大事に教えて、そのなかから作家が誕生するようにしたいです。

東放学園高等専修学校の高校生たちとの授業は、演劇を使ってのコミュニケーション能力の向上目的の授業から、脚本の基礎知識。
ここの高校生たちは、声優志望や漫画家志望の子たちが多い。
高校生に教えるときは、専門的なことよりも、演劇やストーリー作りの「楽しさ」がつたわるようにしている。
いろいろな方向に行く可能性を開いてやれればいいと思っているからだ。
まずは楽しいと思ってもらい、自分でもっと追求したいと思わせることが大事だ。

しかし学校というものは、単位が取りたいという目的のためだけに来ている生徒もいるわけで、こちらの思いとすれ違うこともあります。
そのあたりの現実とのつきあいかたが難しいです。

しかし人と人とは一期一会。
彼らと、人生の一瞬を共有することにこそ、授業の意味はあるのだと思います。
何かを残すことができるようにつとめます。

本業の方がおろそかにならないように、そっちももちろんがんばりますけどね。

それから今年は、僕の芝居作りをいつもサポートしてくれているユーキースエンターテイメントさんが、スタジオを作ったので、そこでもインプロと脚本を教えることになりました。
以下は、その詳細です。
興味のある方は、ユーキースの方に問い合わせて見てください。
お得なレッスンだと思います。

インプロの初級コースの方は、僕は特別講師で、ときどきしか行けません。

【STUDIOユーキース開校!】
特別講師はポケットモンスター、ベイブレードバーストなどの脚本を手掛ける園田英樹
・脚本スクール ・インプロワークショップ
それぞれ、受講者募集!!!

この春、『STUDIOユーキース』を
中央区八丁堀に開講いたしました!

○インプロワークショップ初級コース
○脚本スクール

上記の講座の参加者を募集しております。

〈インプロワークショップ 初級コース〉
即興芝居で表現力、発想力、コミュニケーション能力を身に付ける。
舞台はもちろん、映像の俳優としても必要なものが満載!このコースでは、インプロ・演技の基礎を身に付けましょう。
講師は乃木太郎、大迫洸太郎。特別講師を園田英樹が務めます。

〈脚本スクール〉
劇場版ポケットモンスターの脚本などを手掛ける園田英樹が講師を務める。
現役脚本家の元で、貴方の秘めた才能をみつけてみませんか。

みなさまのご参加を、心よりお待ちしております!
以下詳細です。

●講師
園田英樹 脚本家・演出家・インプロプレーヤー・ カラフル企画主宰。 劇場版『ポケットモンスター』シリーズの脚本を多数担当。舞台、小説、ゲームシナリオ戯曲、映画脚本と、幅広く活動している。
脚本参加作品として、『機動戦士Vガンダム』『キャプテン翼』『絶対無敵ライジンオー』など幅広い世代に作品を持つ。現在『ベイブレードバースト』テレビ東京系列で放映中。

乃木太郎
ユーキース・エンタテインメント所属。映画「北のカナリアたち」や「歌舞伎町はいすくーる」(準主演)、「DEATH NOTE」などにに出演。また、舞台では2013年、日本橋公会堂にて公演を行った舞台版「鉄道員(ぽっぽや)」(日本橋劇場)に出演。俳優業以外にも、執筆・演出業にも力を発揮し、幅広い分野で活動中。

大迫洸太郎
ユーキース・エンタテインメント所属。舞台を中心に活動。
インプロ歴は長く、園田英樹・乃木太郎が立ち上げたインプロパフォーマンスチームOvOb(オブオブ)の中心メンバーでもある。

●日程
〈インプロワークショップ 初級コース〉
毎週火曜日 20:30〜22:30
〈脚本コース〉
毎週月曜日 20:30〜22:00

※全日参加も数日だけの参加もお受けいたします。お気軽にお問い合わせください。
※参加人数により中止になる場合がございます。

●場所
STUDIOユーキース

〒104-0032
東京都中央区八丁堀2丁目1-9
川名第二ビルB1

東京メトロ日比谷線
八丁堀駅 A5出口 徒歩約4分

都営地下鉄浅草線
宝町駅  A8出口 徒歩約3分

●費用
1レッスン2,000円(税別)〈チケット制〉

●お申込み・お問合せ
(株)ユーキース・エンタテインメント

〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2-16-7本間ビル3F TEL:03-6661-2070(担当:ながお)
MAIL:nagao@mg-ad.com  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 07:56 | Comments(0) | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年04月11日

芝居を見ながら、何を考えているのか。

中野ザ・ポケットで、まじんプロジェクトの公演『くれない坂の猫』を見て来ました。
脚本、長田育恵、演出、田中圭介。

てがみ座の長田さんの脚本の力に、あらためて感心させられる舞台でした。
面白かったです。
僕らの年代の人間には、とてもよくわかる時代背景。万博の頃。
去年から三本長田作品を見ましたが、どれも良かったです。
そのなかでも、この作品は小劇場にとてもマッチしていて、俳優さんたちの魅力も引き出す演出もあり、とても気に入りました。
ウェルメイドという言葉がぴったり。
脚本家が、とても気を使って書いているのがよくわかります。脱帽です。
演出もきめ細かくて、レベルが高いと思いました。
当日パンフを見たら、再演でした。
四年前が初演と書いてありました。

今回の舞台のことは、出演者の西園ゆうゆから教えてもらったからでしたが、こういういい作品をもっと見たいと思った夜でした。

ストーリー脚本教室(番外編2)

◯どんな感じで、ぼくが芝居や映画を見ているのか?(芝居を見ているときの心の動き)

芝居や映画を見ながら、脚本の構成とか、演出のこととかを分析したりしてしまうのは、脚本家の職業病だなと思います。

しかしストーリーや脚本作りを学びたいと思っている人には、他の人の作品を見ることは、もっとも勉強になることです。
ただ「面白い」「つまらない」とかだけで見るのではなく、「なぜ面白いのか」「なぜそうなるのか」ということを考えることは大事です。

記憶を頼りに、昨日見た芝居について書いてます。
こんな感じで、ぼくは芝居を見ています。
(冒頭部分のみです。全部やってると時間がいくらあっても足りませんから)

◯オープニング(かっこ内がぼくの心の声です)

◯舞台は古い整骨院の待合室。(セット、いいねぇ。)

◯若い娘が、ちょっと何かありそうな雰囲気で、急に掃除をはじめます。

(おっ、この人が主人公なのかな? どんなふうに魅力的に見せてくれるんだろう? まだ誰かわからないけど、けっこう可愛い女の子だし、主人公っぽいね)

◯そこに姉っぽい女の人が出てきて、「なにやってるの、こんなときに」と叱ります。二人が妹(琴実)と姉(園恵)だということがわかる。

(二人は姉妹か、姉の方、美人だぁ! 主役キャラじゃん。どっちが主人公なのかな? 叱られてるっていうことは、妹の方が主人公なのか? 『主人公は追いつめられるの法則ね』)

◯奥の診察室から、白衣の医者とスーツの青年が出てくる。医者は、青年にやたらと気をつかって話しをしているので、関係性がわかってくる。青年は、最初の若い娘(琴美)の見合いの相手で、大学病院の有名教授の息子(高橋)だということがわかる。

(おっ、いい感じの俳優さん。医者役の人、いいキャラしてんなぁ。でも、奥さん、若くない? まぁ、そこはいいか。見合い相手の人、二枚目。)

◯姉夫婦は、この見合い相手のことをやたらと気に入っている風。
だけど琴実は、あんまり乗り気じゃないみたい。
姉と妹の性格や、この家族の事情などが説明されていきます。

(すごいいい流れで、設定とかが無理なく観客に伝えられていくよ。この作家、うまいなぁ。ちゃんと勉強してるってわかるわー。見合いして、困っているってことは、やっぱりこの妹の方が主役なんだろうなぁ)

◯青年を琴実が見送るために出ていき、残った医者夫婦の会話で、だいたいの関係性とか事情がさらに詳しくなっていきます。
琴実が、怪我をした猫を拾って戻ってきます。
見合い相手は、猫を見捨てようとしたと言います。

(おー、いきなり猫助けちゃったよー。猫を助ける人を観客は嫌いにならない! セイブ・ザ・キャットの法則でました! 猫助けなかったということは、見合い相手の高橋は、敵役かァ、やっぱり)

◯医者の木原は獣医じゃないというが、妻にしかられて、猫を助けます。
みんなで猫、助けちゃいます。

(おー、みんなで、猫助けた! なるほど、これが物語全体のテーマの提示ですねー。やってきましたねー。テーマの提示。わかるりますよー。もうちょっとセットアップあるでしょ。まだ登場人物、ぜんぶ出て来てないもんねー。でも、メインは、この人たちね)

たぶん、この辺りまでが、10分以内くらい。
まったく無駄のない、オープニングです。
教科書に載せたいくらい。

◯このあと他の登場人物たちが、ぞくぞくと出てきて、セットアップを続けていきます。
ご近所の常連さんたち、(母親、中国人の料理人、笑いの取れない落語家、仕事がピンチで娘に嫌われている工員、その娘、仲人の高飛車女)が無駄なく、しかも面白く紹介されていきます。

(セットアップができたら、そろそろ物語が大きく動いていくんじゃないの? さぁ、何をやってくれるのかなぁ。期待、期待)

大きく物語を動かす、プロットポイント1(朝鮮人のけが人が病院に駆け込んでくる)が起きるのは、もうちょっと後になるんですけど、それへの布石みたいなのが、このあたりにもちょっと入っていたら、より良かったのにとは思いました。

◯怪我をした朝鮮人とそれを支えるその妹と、親戚の同じく朝鮮人の若者が病院に駆け込んでくる。
 どこにも看てもらえず、ここに来たのだという朝鮮人。どうやらこの若者たちの親は朝鮮から来て、この人たちはこっちで生まれたのかもしれないということがわかる。
 出ていこうとする彼らを、止める琴実。

(やっときたよ、大きく物語が動いていく予感。いいじゃない、いいじゃない。そうか、そういうことの方に物語を持っていくのねー。あー、この怪我した朝鮮人の青年と、この琴実は、ひかれあうようになっていくのよねー。予想できちゃうところが、ちょっと惜しいけど、王道っちゃいえば、王道だよねー。だいたい恋愛はBストーリーなんだけど、どうやらこっちがメインのストーリーになりそう……。どうなるか、楽しませてくださいよー。)


記憶をもとに、どんなふうにして芝居を見ているのかを、書いてみました。
これは脚本を読むときにも、同じような心理の動きをさせています。
参考になりましたでしょうか。

いい芝居を見ると、記憶も鮮明で、そのとき何を思ったかとかも思い出しやすいです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 13:08 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年04月09日

インプロについて最近感じていること

ストーリー脚本教室(番外編1)

昨日、若い声優さんに、「インプロのショーに出るので見に来てください」と言われました。

インプロが流行ってきているのを、肌で感じています。
僕のまわりには、インプロにかかわっている人たちが多くいるので、その人たちを中心にショーやワークショップなどの話題を頻繁に聞くようになってきています。
とてもいいことだと思っています。

若い俳優さんが「わたしインプロやっています」とか「インプロ勉強したいです」などと言うのもよく聞くようになりました。
それはとても良いことだと思う反面、どういうインプロをやっているのかということに興味を抱きます。

僕が演劇を始めたのはもう四十年近く前、当時から即興でシーンを作るということをはじめていました。
それが当たり前だと思っていました。(まわりにはそういうやりかたで芝居を作る人たちがたくさんいたから)

実際に脚本を書く行為も、作家にとっては脳内インプロです。
僕にとっては即興(インプロ)は当たり前のように側にあったのでした。

そして後に、シアタースポーツなどのインプロが日本に紹介されてからは、そっちがインプロのメインストリームになっていきました。
(ヴァイオラ・スポーリンやキース・ジョンストンの教えを受けた人たちが日本で紹介をはじめたのも大きな潮流をつくっていったと思います)

もともとインプロという言葉は、音楽家たちが使っていたように思います。
アドリブとも言っていました。
演劇の現場ではエチュードと呼んでいましたね。
即興性というものは、あらゆる芸術の分野で重要なファクターなのです。

そうして発展してきたインプロには、今やさまざまなものがあります。

僕がもともとやっていたような、演劇を作るためのインプロ。
コミュニケーション能力をあげる部分に特化した教育的インプロ。
シアターゲームなどを純粋に楽しむためのインプロ。
俳優のトレーニングとしてシアターゲームなどを使ったインプロ。
ビジネスのための社員教育などのためのインプロ。(これもコミュニケーション能力アップの方ですね)
そしてショーとして観客に見せるためのインプロもあります。
(他にもあるでしょう)

それらは同じように「インプロ」と呼ばれていて、重なるところは多々あるのですが、それぞれ目的が違うので、まったく違ったやりかたになります。
それは当然のことでしょう。
コミュニケーション能力アップが目的でインプロをやっている人が、いきなりショーで人前で演技をやれと言われてもできるわけがないのです。

「こうしなけれはならない」というのが、一切無いのが、本来即興というものでしょうが、「目的」ができると、そこには方向性というものが出来ていくのだろうと思います。

「目的」しだいで、インプロはやりかたも指導方法も「方向性」が変わっていくと考えるべきでしょう。

少し難しい言い方になってしまいました。

簡単に言うと、「インプロは使い方を間違わない方がいい」ということです。
それぞれの現場にあったインプロを使っていく(トレーニングしていく)ことが大事です。

自分が必要としているインプロとは、どのインプロなのかということを、まずはっきりさせてからトレーニングを進めることが肝心だと思います。
これはインプロを指導する側にも求められることなのですが、教える相手、それぞれによって教え方も教える内容も変えていかなければならないのです。

次回は、俳優にとってのインプロとは何かということにフォーカスしてみます。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:58 | Comments(0) | 演劇 | 脚本

2016年04月01日

アニメのアフレコについてのこと1

ストーリー脚本教室(心構え編19)

 前回は、プロの脚本家さんたちの仕事を間近で見せてもらったのが、すごく勉強になったという話しを書きました。
 僕の修行はまだまだ続きます。

◯脚本家の仕事はアフレコまで続く

 脚本家の仕事は、脚本を書いたら終わりではありません。
 これも仕事をはじめたころに気づかされたことです。

 今回はアニメの場合についてです。
 実写の場合は、また少し変わります。
 アニメの制作の過程では、脚本から、コンテになり、それから原画、動画になり、それらがつながり一本のアニメになったところに、アフレコで声優さんの声が入り、そしてさらに効果音やBGMなどが加わって、完成品になります。
 すごく長い工程です。

 自分が書いたセリフが、最終的にどうなるのかは、アフレコの現場で決まります。
 演出家がコンテを書いているときに、違和感を感じて、セリフに変更を加える場合にあるかもしれません。
 またアフレコのリハーサルの段階で、実際に声優が言葉を発したものを聞いてから、違和感が出るかもしません。
 そのときは、セリフに変更を加える必要が出てきます。

 今の現場作業では、多くの場合、演出家または音響監督が、その修正を行うのが多くなっています。
 しかし本来ならば脚本家が書いたセリフなのですから、脚本家が責任を負うべきだと僕は思います。

 脚本家がアフレコに立ち会っていれば、それができるわけです。

 脚本家はできるだけアフレコに立ち会ったほうがいい。
 僕は先輩の脚本家にそう教えられました。
 実際、アフレコの現場に来る脚本家の人は少なかったですけどね。

 実際にアフレコの現場で気づくこともけっこうあります。
 脚本を書いた段階では気づいていなかった間違いに気づいたり、あらたな発見があって、セリフを直したくなったりすることも。
 それを修正できる、最後のチャンスが、アフレコスタジオです。

 自分のかかわっている番組(作品)をより良くしたいと思うのなら、これは当然のことでしょう。

 僕は、アフレコの現場でセリフのチェックをするのは当然のことだと思っていましたが、時代の流れとともに、だんだん脚本家は脚本を書けば、そこで仕事は終わりという感じになってきました。
 アフレコスタジオに脚本家がいなくても、実際は現場作業は進められるからです。
 僕も、いつしかスタジオに行かなくなってきていました。
 (少し反省しています)

 アフレコに立ち会うと、いいことがたくさんあります。

◯書いているときに、声が聞こえるようになる。

 アフレコに立ち会っていないと、実際のオンエアで作品が放送されるまで、音声として作品を聞くことはありません。
 オンエアの時点までに、多くの場合、脚本は相当先の話数まで進んでいなければならないので、脚本家はキャラクターの声のイメージは、想像だけで書くことになります。
 しかしアフレコに立ち会えば、少なくともオンエアの何週間か前に声を聞けるのです。

 実際にキャラの声を聞いていると、脚本を書いているときに、その声が脳内で聞こえるようになります。
 これはセリフを書くときに、とても役だってくれるのです。
 セリフがイメージしやすくなります。
 違和感のあるセリフを書いたとき、それに気づきやすくなります。
 いいことずくめです。

 舞台の脚本では、キャストが決まっていて、その人たちの特徴にあわせて脚本を書くことを「あてがき」と言います。
 脚本家にとって「あきがき」は、とても書きやすいし、俳優にとってもやりやすい台本になることが多いです。
 アニメの場合でも、俳優の声が頭に入っていれば、あてがきに近いことができるようになるわけです。

 もし自分の脚本のアフレコがあるときは、できるだけスタジオに足を運ぶことをお勧めします。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:24 | Comments(0) | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月31日

縁とは不思議なものです

ストーリー脚本教室(心構え編18)

 僕が作家になるまで、つづき(その7)

 前回と前々回は、僕が最初の一本書いたときのことを書きました。
 このあと僕はちゃんと放送される作品を書くことになるのですが、どういうわけかこのあたりの記憶があんまり残ってません。
 ぼけたわけではないとは思いますがね。
 それだけ毎日、夢中でやっていたので、おぼえる暇もなかったのかもしれませんね。(笑い)

 これを書いていて、実は自分の記憶がどれだけあやふやになっているのかを再認識したのですが、幻のデヴュー作だと思っていたドン・ドラキュラの前にかかわったアニメがあったのでした。

 心構え編16で、心の師匠の森さんから、脚本家の小山さんを紹介してもらって、ドン・ドラキョラの仕事につながったと書いていましたけど、その前にやったことを書き忘れていました。
 というか、記憶が前後してしまっていたのです。(人の記憶とは、かなりあやふやですねー。すみません)

 最初に小山さんに紹介してもらったのは、じんプロというところでの仕事でした。
 銀座にオフィスがあったのですが、社長と会計と制作と事務の人、たった四、五人しかいない会社でした。
 そこはアニメの制作会社だったのです。
 こんな小さな会社がアニメを作っているのかと、不思議な気持ちがしましたが、何も知らない僕は、そういうこともあるのだろうと思ったのでした。
 ほんと今思うと申し訳ないのですが、アルバイトみたいな気分で、そこに行ったのです。

 社長には、脚本の書ける若いやつという感じで、僕は紹介されたのだと思います。
 僕はたぶん23歳でした。
 (こうやって書いていると、だんだん思い出してきました)
 ウィキペデア見たら、ちゃんと載ってました。
 作品は「テクノボイジャー」といいます。
 1982年のオンエア作品でした。
 ということは、僕は81年くらいから作品にかかわっていたことになりますね。

 僕の仕事は、作品の文芸担当でした。
 脚本を集める仕事です。
 脚本を書きたい僕にとっては、渡りに舟です。
 自分にも脚本書くチャンスがくるのではないかと期待していたと思います。
 たしか脚本も書きました。何本か。それは作品にはなりませんでしたけど。
 しかしこの仕事は、いろんな脚本家のみなさんたちと直接打ち合わせをすることができて、とても勉強になりました。
 プロの脚本家の仕事ぶりを、間近で見ることができたのもいい経験でした。
 このときに、プロがどうやって脚本をつくりあげていくのかを、体験として見ることができたのは、本当によかったです。

 その人たちの脚本を読みながら、勉強させてもらうと同時に、ほんと今では失礼なやつだと思いますが、自分もこれくらいなら書けるなんてことを思っていたような気がします。
 若気の至りです。

 この作品の実質的な制作はグリーンボックスというところがやっていたのですが、のちにAICとなったと記憶しています。
 人のつながりというのは不思議だと思うのは、いま三十数年たって4月から放送の新作アニメ「ベイブレードバースト」の監督の秋山勝仁さんが、ここにいたというのです。
 そのときこのグリーンボックス(AIC)のスタジオで、三十数年後に監督と脚本家として再会することになる二人がすれちがっていたんですね。
 これも縁ですね。

 人は自分の力だけでは、成長することはできません。
 さまざまな人と出会い、その人たちの力を借りて、何者かになっていくのだと思います。

 あまり過去を振り返ったことのなかった僕ですが、今さらながらに気づきます。
 出会ってきたなと。

 遠慮なく、出会いましょう。
 そして変化し、成長していくのです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:17 | Comments(1) | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月30日

自信って大事です

ストーリー脚本教室(心構え編17)

 ひさしぶりに、僕が作家になるまで、その6です。
 続きが読みたいとコメントをいただいたので、もう少し書いてみようかと思います。

◯自信

 前回(心構え編16)では、手塚作品の「ドン・ドラキュラ」を書かせてもらったけど、放送される前に打ち切りになってしまったということろまで書きました。

 この結果は残念でしたけど、製品になる脚本を書き上げたという自信は僕の中で、はっきりと芽生えはじめていました。
 いま思うと、なんの根拠もない自信なんですけど、「自分はやれる」そう思うことだけが、自分を支えてくれていたのだということがわかります。

 フリーの脚本家(もの書き)なんて、何も保証はありません。
 金銭的にも、社会的にも。
 だからこそ、そんな不安定な状況にいても、精神的にぐらついたりしないためには、自分を信じる気持ちがすごく大事です。
 これは物書きだけではなく、俳優や、画家など、芸術的な仕事に携わる人たちはみんな同じでしょう。
 社会的には、不安定であることが、日常なのです。
 それを受け入れて、そのなかで平気でいられる、笑っていられる、ある意味脳天気、いいふうに言えば強靱な精神力が必要です。

 そのためにはやはり、自信が大事です。
 「自分を信じてやること」が。

 自信を獲得するためには、努力も必要です。
 そして少しずつの成功体験が。

 僕は、プロとしての脚本を一本書き上げたことで、その自信の芽をもらった気がします。


 成功体験を、どうやって積み重ねればいいのか?
 その方法がしりたいんです。
 そう思われる方もいると思います。

 努力して、一本書き上げる。
 まず、それが一つの満足になります。

 そしてそれを誰かに読んでもらう。
 いいところがあれば、きっと相手は言ってくれるでしょう。
 だめなところは、なかなか言ってくれません。(みんないい人たちですから)
 でも遠慮なく言ってくれる人もいます。
 そのときは、感謝して、それを素直に聞きましょう。
 どんな意見でも、それは自分ちプラスになるものだと思ってください。

 いろんな意見が聞けたなら、それを自分なりに消化して、直します。
 そしてまた意見を聞きます。

 これを繰り返して、満足の行くものに仕上げるのです。
 それこそが成功体験です。

 自分が満足できるかどうか。

 どれだけ他人がほめてくれても、お金がもらえたとしても、自分が満足できなかったら、それは成功体験にはならないと思うのです。
 どんな些細なことでも、自分が喜ぶことができたら、それは自信につながっていきます。
 そして、あなたを少し変えてくれるはずです。

 自分を喜ばせましょう。
 何が自分を喜ばせるの。
 嬉しくなるのか。
 それを感じてください。

 一個一個、一歩一歩、一文字一文字、前に進んで行きましょう。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:25 | Comments(0) | 演劇 | 脚本

2016年03月29日

王道は知っていたほうがいい

ストーリー脚本教室(実践編35)

◯ハリウッド式の脚本術は、いいところもあるけど、決まりきった展開になる場合もある。

 僕が紹介したブレイク・スナイダーの「SAVE THE CAT」とかに代表とされる脚本術にならったものは、いわゆるハリウッド式と呼ばれています。
 大きな制作費をかけるハリウッドの映画などは失敗ができないので、ヒットの成功率の高い脚本というのが求められます。
 ですから王道をできるだけ外さない脚本作りがされている傾向があります。
 逆に言うと、それだけ予測のつきやすい脚本になっている可能性が高いというわけです。
 特にエンターテイメイント性の強い作品などは、そうなることが多いです。

 僕たちが作品を書く場合、それをわかった上であえて王道でいくのか。
 あえてそこを外していくのか、選択をしなければなりません。

◯外すためには、王道を知っていなければならない。

 ハリウッド式の脚本術は、知っておくにこしたことはないと思います。
 それを知っていることで、アレンジも、外していくことも可能になるからです。

 どちらにしても、ストーリーを作り上げていく作業は、とても大変な道を歩いていかなければなりません。
 作り方がわかったからと言って、簡単に作ることができるわけではないかです。
 一歩一歩、地道に進んでいくしかないのです。

 自分が目指す作品に向かって、とにかく前進していきましょう。
 さまざまな書き方やテクニックは、すべてそのための道具なのですから。


◯日本で最初の脚本術の本は「風姿花伝」だと思います。

 世阿弥の風姿花伝は、ご存じでしょうか?

 15世紀の初め頃、世阿弥が書いた能の指南書が、風姿花伝です。
 世阿弥が、父親の観阿弥からならったことを、芸道書として書き記したものです。
 これはもともとは能に関することを書いてあるのですが、脚本の観点からも、とても興味深い書として読むことができます。
 「序破急」の考え方などは、これに記されています。

 とても興味深い書なので、一度読んでみることをお勧めします。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:40 | Comments(0) |  | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月28日

ネタ切れすることはあるのか?

ストーリー脚本教室(実践編34)

 ここまでできるだけ毎日、ストーリー作りや脚本作りにおいて、自分の知っているコツをできるだけわかりやすく書いてみようとしてきましたが、だいぶネタ切れ気味になってきました。
 われながらよく書いていると思いますけど。(笑い)
 一般的なことは、だいたい書いたような気がします。
 ここからさらに踏み込んで指導していくとしたら、たぶん個人指導的なことになっていくんでしょうね。

 今日は、そのネタをどう仕入れるかについてです。

◯ストーリーのネタは、あらゆるところに転がっている。

 よくこう聞かれます。
「ネタ切れすることはないんですか?」

 そういうときに、僕は今まで、ネタ切れすることはありませんと答えてきました。
 書きたいことがありすぎて、書く時間が足りないと。

 なぜそう言い切れるかというと、ネタは僕らのまわりにいくらでも転がっているからです。

 落語家は、「三題噺」というのをやりますよね。
 関係のない、みっつの要素をもらって、それを結びつけてお話にしていくという、即興落語です。
 これと仕組みは同じだと思ってください。

 身の回りにあるものに、「刺激を受けること」で、そこからストーリーをイメージしていけばよいのです。

 たとえばあなたが、「壁にかかっている時計」を見たとします。
 それはきっとあなたの心の中のなにかを刺激します。
 懐かしさが浮かびあがるかもしれません。
 おじいさんの家にかかっていた、古い時計を思い出すかもしれません。
 それを使うのです。
 イメージは、また次のイメージを呼びさましてくれます。
 そしてそれは、一つのストーリーになっていきます。


◯新聞、雑誌、ニュースにもネタが転がっている。

 毎日なにげなく見ている新聞や雑誌やテレビやネットのニュースにもネタがごろごろしています。
 事件から、ストーリーを思いつくこともあるでしょう。
 ちょっとした、いいエピソードから思いつくこともあるでしょう。
 世界は、ストーリーのネタでいっぱいです。

 あとはあなたが、それを使ってストーリーを練り上げるかどうかなのです。

 ネタ切れを心配する必要は、まったくないのです。


◯持続力も必要です。しかし……

 ネタを見つけても、それをストーリーに育てあげるには、じっとパソコンの前にすわってキーボードを打ち続ける持続力も必要です。

 遊びに行きたくても、飲みに行きたくても、じっと我慢して作業を続けなければなりません。
 それができるかどうかにかかってます。

 でもそれで現実の人生を無駄にしてはいけません。
 出ていけば面白い体験ができるとわかっているなら、そこに行かないことを選んではだめです。
 書くのは後でもできますから。

 ストーリー作りと、幸せな現実の人生とどっちを取るかと聞かれたら、現実の人生を選んでください。
 そこで生きた体験をすることが、さらにあなたのストーリーを面白いものにしてくれるはずだからです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 05:04 | Comments(0) | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年03月27日

舞台脚本を書いてみませんか

ストーリー脚本教室(実践編33)

 今回は、舞台の脚本におけるシーンのつなぎについてです。
 (けっこうマニアックな実践編です。舞台の脚本を書くときに役立ちます)
 
 僕たちは、けっこう俳優が一人で、どこかにいるシーンを書いてしまいがちです。
 例えば、

(例1)
   部屋
   園田英樹が、一人でパソコンを打っている。
英樹「……なかなかすすまないなぁ……あー、あと二時間しかない……」
   そこにノックの音がする。
英樹「はーい。どうぞ、カギ開いてるよ」
女の声「失礼しまーす」
   入ってきたのは祖母よねだ。
よね「あー、ちらかってるねぇ」
英樹「あ、ばあちゃん!」

 みたいな感じで。
 (けっして面白そうなシーンの入りではないですが、あくまでも悪い例に気づいてもらうために書いてます。)

◯登場人物が一人でいるシーンを書いていたら、本当にそこは必要なのかを疑うべし!

 そのシーンのはじまりは、本当に必要なのか?
 疑ってみましょう。

 例1のシーンは、すでにおばあちゃんが部屋に入ってきて、パソコンを打っている英樹のまわりでかってに片付けをしているところから始まっても、なんの問題もありません。
 それどころか、ノックの音を入れたり、入ってくるまでの芝居をカットできて、すっきりします。
 よりエネルギーがたかまったところから、シーンを始めることができるのです。

 どうです、こっちの方がいいでしょう?
 テンポもぐっと良くなるはずです。


◯登場人物の出入りは、本当に必要なのかを疑うべし!

 例えば、園田がいるAシーンが、園田がそこから出て行き、次に場所が変わってBシーンがはじまり、そこに園田が入ってくるとします。

 こういうときは、この園田の出入りは、本当に必要なのかを疑ってください。

 逆に、園田を残して、他が入れ替わった方が効果的なことが多々あります。

 登場人物の園田は時間と空間を飛び越えるのです。
 舞台だとこれが可能だし、より演劇的でダイナミックなシーンの展開になります。

 前後する二つのシーンに、共通する登場人物がいる場合は、これが使えるということをおぼえておくといいでしょう。

 シーンのつなぎはスマートになり、転換の時間も短縮できます。


◯まったく別の時間、空間にいる人を、同じ場所に立たせるこができるのも演劇の特質です。

 じつは、演劇(舞台)表現というのは、ものすごく自由です。
 それは観客の想像力の手助けを、ふんだんに借りることができる芸術だからです。

 観客が想像してくれれば、舞台は、どこにでもなるし、なんにでもなるからです。
 宇宙にも、異世界にも、ミクロの世界にも、心の中にも、あらゆる場所になってくれます。

 これを有効に使えば、別空間、別の時間にいる人物だって、同じ舞台上に立たせることが可能です。

 ようするに自由な発想で遊んでいいのが、演劇の脚本の特性だと思います。


◯舞台用の脚本を、もっと書いて欲しいです。

 仕事という点からすると、映像作品のためのストーリー脚本に需要があるのはまちがいないです。
 僕の体験上からも、映像脚本の方が仕事になりました。

 ただ舞台の脚本というのは、上に書いたように、自由な発想や演劇的な工夫をするのが楽しいし、逆にさまざまな制限の中でいかに面白さを作っていくのかというようなチャレンジがそこにはあります。

 脚本のエクササイズとしては、ぜひやって欲しいジャンルです。

 作家志望の人たちは、舞台の脚本を書いてみることをお勧めします。
 自分の書いたものが、実際に舞台上で実体化していくのを見るのは、最大の脚本の勉強になると思うからです。

 ぜひチャレンジしてみてください。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 07:52 | Comments(1) | 演劇 | 脚本

2016年03月26日

ストーリーが動きだしたあとに注目

ストーリー脚本教室(実践編32)

 昨日の続きです。
 他の人の作品を見たときに、注目しているところ。
 影像作品についてです。
 一分から五分までは、主に主役キャラについてでした。


◯ストーリーが動きだすところに注目。

 時間は、作品によって違いますが、観客がその物語の主人公とつながってくれたら、作者はストーリーを動かしてきます。

 わりとそれははっきりしているので、わかりやすいです。
 ストーリーが前に進みます。
 何かが起きる瞬間です。

 それが起きたら、「はじまった!」ですね。

 あとはその動きだしたストーリーの中で、主人公がどう動いていくのかを、楽しみながら追っていくだけ。

◯主人公の「追いつめられ方」に注目。

 ストーリーが動きだすとき、ほとんどの場合、主人公は「何かしら困ったり」「追いつめられたり」していきます。
 作者がどんな手段で主人公を困らせるのか、そこに注目します。

 これにもわかりやすいものと、わかりにくいものがありますが、注意して見ていれば、必ずわかります。

 「その手できたか!」ですね。


◯主人公の「目的」に注目。

 ストーリーが動きだして、主人公に何かしらのトラブルが起きます。
 そのときに、主人公がそれに対して、どう動いていくのか。
 どんな目的を持って動きだすのか。
 それに注目します。

 これがないと、主人公ではなくなってしまうので、だいたいにおいて主人公は行動していくことになります。
 そのときち、彼がどういう目的を持っているのかということに注目します。

 これ本当に大事です。
 主人公の目的がはっきりしていないと、ストーリーが迷走していくことになるからです。


◯主人公の「ラブ」に注目。

 僕はラブストーリーが大好きです。
 なぜ好きなのかはわかりませんが、恋愛的な話しがからんでくるのが好きなのです。
 これは僕だけではないのかもしれません。
 これだけ大量のストーリーが世の中にあふれていて、それの多くにラブストーリーふくまれているというのは、僕と同じようにそれを好きな観客がたくさんいるということでしょう。
 需要が多いから、供給も多いのかも知れません。

 ラブストーリーは、なぜか心を暖かくしてくれます。
 そういう効果があることを知っているから、作家たちはそれを自分の物語に組み込むのかもしれません。

 主人公が誰であれ、ストーリーが動きだすのと、ほぼ時を同じくして、多くの場合主人公の「ラブ」も動きだします。
 その相手は、さまざまですが、主人公が好意を抱くのか、逆に抱かれるのか、そういう人物が現れて、ストーリーにからんでくるのです。
 それが本筋とからみあいながら、ストーリーは前に進んでいくことになります。

 だからこそ、この「ラブ」に注目です。
 これもストーリーをより面白くしてくれる大きな要素の一つなのですから。

 これは主に、僕たち観客を気持ちよくさせてくれる効果を発揮してくれます。
 僕たちは、やはり「ラブ」を感じていたい生き物なのでしょう。


◯ラブ(恋愛)を必要としないストーリーも時にはあります。

 ラブ(恋愛)は、人が成長とともに身につけていく社会的な感情です。
 まだこれを身につけていない子供たち向けの物語では、この「恋愛」は必要とされません。
 なぜなら彼らはまだ、それを知らないからです。

 親子の愛情は、子供たちはいち早く身につけます。
 次に友達との関係性から生じる感情。
 男の子の異性に対する恋愛は、そのあとです。(女の子は、やはり男の子よりも早いようです)

 もちろん男女の差や、個人差はありますが、多くの男の子たち(十歳以下)は恋愛にはあまり興味を示しません。

 ですから、十歳以下の少年向けのストーリーでは、あまり恋愛要素が入ってくることがないのです。

◯少年向けアニメに恋愛は出てきません。

 いま僕は2016年4月4日からテレビ東京系列で始まる「ベイブレードバースト」というアニメのシリーズ構成と脚本担当しています。
 この作品には、恋愛の要素はいっさい入っていません。
 この作品の視聴者で、この番組にそういう要素を求めている人はいないと思いますが、そういう人がいたらごめんなさい。

 ちがう形の恋愛は入っていますけと。
 それは少年たちのベイブレードに対する「ラブ」です。
 そういう意味では、これがこの作品の恋愛要素なのかもしれませんね。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:16 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月25日

ストーリー作りのトレーニングは楽しみながら

ストーリー脚本教室(実践編31)

 トレーニングの続き。

 前回は名前と関係性をつけるトレーニングを日常の中で遊びとしてやる方法を紹介しました。

 ストーリー作るのコツを体得するための一番のトレーニングは、いい作品を見て、それを分析することだと思います。

 影像作品はDVDでほとんどあらゆる作品がリリースされているので、トレーニングにはもってこいの環境ですよね。
 小説はもともと本で出版されていたものなので、読んで学ぶことができましたけど、昔は影像や舞台の勉強をするには、劇場に行かねばならずお金も時間も余計にかかりましたから。
 もちろん劇場での体験は、かけがえのないものなので、できるだけ多くいい環境で見てもらいたいです。

 自分の書きたいタイプの作品があるとしたら、それに関係するようなタイプの作品を多く見るようになるのは当然ですね。
 多く見ることで、類似をふせぐこともできるし、さらに面白くするための方法を学ぶことができます。

◯どこを見るのかが大事です。

 作り手が、どういう意図で、そのカット、そのシーンをそこに持ってきているのかを、探偵のように推理しながら見るのです。
 ストーリーの構成は、どうしてそうなったのか?
 それを推測できるようになるのが、トレーニングです。

 僕が、どういうところに注目して見ているかを書いてみます。(今回は影像作品の場合です)

◯まずはファーストカット。

 最初の入りを、どういう絵にしているのか?
 そこにまず注目しています。
 ここは演出家の領域が大きいですね。どんな絵で物語に入っていくのか?
 脚本家は、ファーストカットについては、あまり意識して書くことはありません。
 もちろんイメージはあるでしょうが、柱やト書きでは、ファーストカットのことにはふれませんからね。
 ただし、演出家は、まずどの絵から、入っていくのかを意識しているはずです。
 それに注目するのは、そこには多くの場合、その物語全体に伝わっていくイメージをこめようとしているはずだと思うからです。

◯冒頭の一分から五分間。

●どうやって見る人(観客)を、物語に引きつけようとしているか?

 お客さんは、優しいので最初の数分はたとえどんなものでも見ようとしてくれます。
 でもその優しさに甘えてはいけません。
 つまらなかったら、さっさと離れて行ってしまいます。

 ですから最初が肝心で、作家も演出家も、冒頭でできるだけお客が離れないようにする方策をそこに仕掛けようとするのです。
 この作者は、どうやってそれをしようとしているのか?
 そこに注目します。

●主人公は誰なのか?

 物語を観客と一緒に旅してくれるパートナーが主人公です。
 ですから作り手は、多くの場合最初に主人公を登場させます。
 もちろん例外もあります。
 作り手は、かならずこの登場人物が主人公ですと、観客にわからせているはずです。
 それをどうやってやっているのかに注目します。

 いろんな方法で「この人が主人公です」とわからせる方法を取っているはずです。

●主人公を好きになれるのか?

 観客が主人公を嫌ってしまっては、物語に連れていくことはできません。
 ですから作り手は、かならず主人公を観客に好かれるような方策を取っているはずです。
 どんな手を使っているのか、それを見つけてください。

 もちろんスターがそれを演じている場合に、その人が主人公だと暗黙の了解で観客はわかっているのですが、物語の登場人物として、どういうことをやっているのかの方により注意して見るようにしましょう。


 冒頭の一分から五分の間にも、要チェックするべきところは、こんなにもあります。
 ストーリーを楽しみながら、頭のどこかで、これらのことを意識して見るようにしてみてください。
 無意識にそれができるようになったらしめたものです。
 あなたの作品でも、それらのことが自然にできるようになっていくことでしょう。

 次はいよいよストーリーが動きだすところです。
 それはまた次回に。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 12:21 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 脚本

2016年03月25日

人の気持ちに敏感になる方法

ちゃさんからの質問に答えます。

◯「感情を勉強するために、人の気持ちに敏感になる方法はあるのか?」

 あります。

 人は、瞬間に生きています。
 その瞬間、瞬間で、さまざまに心を動かして、感情も変化しています。
 しかしそのことは無意識で行っていることなので、自分が動いて変化していることについて、けっこう鈍感になっています。

 そこにまず敏感になる練習をしましょう。

 『自分の感情(気持ち)がどう動いているのか』を意識するのです。

 トレーニング方法としては、こんなやりかたがあります。
 自分の中で起きたことを、口に出していいます。

 まず時間を決めてください。(三分とか五分とか)
 そして他の人に見られても大丈夫な環境でしてください。(はたから見たらおかしな行為ですから)
 そして自分の気持ちが動くたびに、それを口に出して言います。

 こんな風に。
 あなたはテレビドラマを見ながら、お菓子を食べています。
 ポテチを食べて、ちょっと気持ちが動きます。
「わたしはポテチを食べて、意外においしいと思った」
 ドラマに好きな俳優が出ます。
「わたしは、◯◯君を見て、すこしウキウキしてきた」
 そこに母親がやってきて、もう寝なさいと言われます。
「わたしは、母親に注意されて、少しむかついた」

 こんなふうにして、ほんの短い時間の中ででも、自分の心が動いているということに気づき、それに対して敏感になるようしていきます。
 自分の感情の変化に敏感になれば、他人の感情の変化にも敏感になれます。
 まずは、自分の中で、瞬間瞬間、すごい変化が起きていることに気づき、それを受け入れていきましょう。

 ここが第一歩です。

 このトレーニングは、なかなか一人でやるのは難しいですけど、自分の中にさまざまな衝動があり、感情が変化していることに気づくだけでもいいのです。


◯「さまざまな人と出会うコツ」

 これも気持ち(意識)しだいだと思います。
 自分が出会うということは、相手にとっても出会うということです。
 お互いさまなのです。

 いろんな場所に出かけていき、そこで人と出会うチャンスに飛びこむ「勇気」を持ってください。
 こわがっていたら何もはじまりません。
 一歩を踏み出す勇気を出すのです。
 最初の一歩が踏み出すことができれば、次の一歩も出てくるでしょう。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 04:53 | Comments(1) | 演劇 | 脚本