2016年02月29日

ストーリーをタイプにわけてみましょう

ストーリー脚本教室(実践編15)

 前回は、シーンの中で困っている人が、主人公になっていくということを書きました。
 今回は、それをもっと具体的に書いてみます。

◯困らせるのスケールでかくなったのが、パニック物

 映画『2012』がWOWOWで放送してたので、久し振り見ました。
 2009年の映画。
 巨大地震や津波や噴火で地球が壊滅するという終末世界を描いた映画です。
 こういう映画は、あの災害の前だから見ることができたけど、いまだとやっぱり辛いことを思い出してしまいますね。
 こんなことは実際には起きないと思っているから、映画として楽しめるわけで、現実に大津波を見てしまったあとでは、複雑な気持ちになります。
 当時、マヤの予言で、2012年に終末が来るなんて噂が広まったりしたことを思い出しました。

 この作品は映画のジャンルとしたら、「パニック映画」に入るのかもしれません。
 映画を見ながら、こういうタイプの映画の構造のことを考えてみました。

◯映画を構造でタイプ分けしてみたら。

 ストーリーの構造を、大まかに1行で言うと、こうです。

「とんでもなく恐ろしいものが、襲ってくる。人は、それから逃れて、生き残ろうと懸命にがんばる」

 パニック映画にはどういうものがあるのか、ウィキペディアを見れば、だいたいのところは書いてありますから参照してみてください。

 しかし大がかりな大災害ばかりをあつかうばかりが、このタイプの映画ではありません。
 『13日の金曜日シリーズ』や『悪夢シリーズ』みたいに、サイコキラーやモンスター的なものが、襲ってきてそれに立ち向かわなければならなくなるものも、このタイプの映画に入れていいと思います。

 どちらにしろ、とんでもない『問題』『トラブル』が、主人公に襲いかかるのです。
 主人公は、はじめから『困らされる』ことになります。
 スケールでかく主人公を困らせるのが、パニック物と言われているものなんですね。

◯お化け屋敷の構造

「怖いものが襲ってくる。逃げなければ!」

 一言で書くとこうなります。
 子供のときに、こんな体験したこありませんか。遊園地とかで。
 そう『お化け屋敷』です。

 怖いけど、なんか楽しい。
 それはお化けが嘘だと知ってるから。

 これからの映画たちは、つまりお化け屋敷と同じです。
『お化け屋敷タイプの映画』と言ってもいいでしょう。

 お化け屋敷的な見世物は、昔からありました。
 それが映画にも脈々と受け継がれているということですね。表現の形式は進化しましたが、根本にあるのは、このお化け屋敷の構造です。

 遊園地のお化け屋敷では、いかにお客さんを安全に怖がらせるかがテーマです。
 お化け屋敷映画も、同じです。

 人は現実では、怖い目にあいたくはないけれど、遊園地のお化け屋敷では、自らから怖いところに飛びこんでいきます。
 そのほうが面白いことを知っているから。

 フィクションの中では、危険な目にあったほうが面白いということを、みんなとっくに知っているのです。

◯即興芝居(インプロ)でも同じです。

 これは即興芝居(インプロ)でも言えることです。
 俳優(プレーヤー)が、自分の予想できる範囲の中でしか演技をしていなかったら、そのシーンはつまらなくなります。
 演じている自分自身でさえ、未来がまったくわからないところに飛びこんでいくからこそ、即興芝居は面白くなります。
 ですから勇気を持って(リスクを負って)、予想のつかない未知なるところに、自分を追いこんでいくプレーヤーが、いいインプロヴァイザーと呼ばれるのです。

 僕が脚本作りと同時に、即興(インプロ)をつづけているのには、両方がいつも刺激をする関係にあるからです。

 またちょっと横道にそれましたね。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:19 | Comments(0) | 映画 | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月28日

主人公は、一番困る人です

ストーリー脚本教室(実践編14)

 主人公を起てるための方法を、前回はいくつか紹介しました。
 ストーリーが縦糸ならば、主人公を魅力的に見せるためのエピソードは、横糸かもしれません。
 縦糸と横糸がうまくからみあって美しくて強い布ができるように、物語もそうでなければなりません。

◯人が人を困らせる方法は、わりとすくない。

 僕は即興芝居(インプロ)のトレーニングを、俳優さんたちとよくやります。
 それは僕がインプロのチームを組んでいて、その演出(トレーナーといってもいいかもしれません)を受け持っているからです。
 そのトレーニングの一つに、『相手を困らせる』と言うものがあります。

 俳優は即興で相手を困らせる役を演じるのです。

 たとえば、『貸してたお金、返してもらう期限は今日なんだけど』とか『Aさん、診察の結果が出ました。あなたは末期癌です。まちがいありません』とか『別れましょう。もうつきあえない』とか、相手を困らせる役になってシーンを始めます。

 これはできるだけ熱量の高いシーンをつくるためのトレーニングで、僕が考案したものです。
 そういうことをやっているうちに、実は「相手を困らせるというシチュエーションは割と少ない」ということに気づきました。

 そしてもう一つ気づいたのは、この困らせるアイディアは『相手の感情を揺さぶるもの』でなければならないということです。
 そうでないと面白くならないのです。(面白くなるというのは、相手が本当に困って感情が変化するという意味です)

◯相手を困らせるアイディアをためこもう。

 ストーリーを面白くするためには、この『困らせるアイディア』というものが必要になります。
 思いついたら、メモしてためこみましょう。

 僕たちは日常生活の中では、できるだけトラブルが起きないように気をつけながら生活しています。他人を困らせないように暮らしています。しかし、面白い物語をつくろうと思ったら、それをやらなければならないのです。『事件を起こし』『登場人物たちを困らせること』それが必要です。

◯主人公は、『困っている人』です。

 ここに役者二人がシーンを演じています。困らせている人と、困っている人がいるとします。
 観客はどちらの役者が、このシーンの主役だと感じるでしょうか?
 そう。困っている側の人です。
 困っている人が、どうやってその問題を解決させるのだろうかというところに、興味を引かれます。

 物語の中で、『主人公とは一番困る人』です。
 その困った状況のなかで、どうやってそれを切り抜けるか、そしてどう変化していくのか、それが面白いということなのです。

 人を困らせることを、毎日考えなければならないのが、ストーリーを作る人間です。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:22 | Comments(0) |  | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月27日

誰かのために書くということ

ストーリー脚本教室(心構え編6)

 書くことは一人の作業だけれど、自分のためだけではなく、誰かのためにという気持ちがあると、『書くエネルギー』がわいてきます。

 なぜ書くのか?
 そう自分に問いかけてみてください。

 プロで書いている人は、「注文があるから」書くという人もいるでしょう。
 でも、そういう人でも、もし注文がなかったとしても、きっと書くという人がほとんでしょう。

 そう文章を書き続けている人は、ほとんどが『書かずにいられない人』なのです。
 書きたくて、書きたくて、どうしようもなくて、毎日、書いてしまう人。
 そういう人たちが、まちがいなくいます。
 あなたも、そういう人の一人かもしれません。

 僕も、その一人です。
 きっと注文がなくても、なにかしらの創作物を書くに決まってます。

 今の時代SNSなどで、さまざまな発言が可能で、毎日いろんなことをつぶやいている人も多いです。
 僕も、これを書いているブログや、フェイスブック、ツイッターなどを使っています。
 番組や演劇公演の告知にも便利だと思っているからです。
 創作物も、公開するのはやりやすくなりました。
 
 最初の動機は、自分が書きたいから書くという、すごく原初的なものでしょう。

 それに『誰かのために』という思いが加わると、そのエネルギーは方向性を持ち、さらに強くなります。
 この連載ブログも、「作家志望の一人の青年のために」という思いではじめたものです。
 おそらく彼に、僕は昔の自分を見たのかもしれません。
 昔の僕をはげましてくれた人たちから受けたエネルギーを、僕も彼に送りたいと思ったのでしょう。

◯演技をするときの俳優も同じです。

 俳優が演技をするときに、どんな心構えで演じるといいかと聞かれたなら、僕はこう答えます。
『自分のためではなく、相手のためにという気持ちで演じてください』
 シーンを演じるとき、多くの場合、俳優には相手役が存在します。
 このときに相手のために演じると思ってほしいのです。
 そうすることで相手のセリフ、行動に集中できるし、それを感じる相手も、きっとそれに応えてくれるようになります。
 すなわちシーンのエネルギーは高まり、いいシーンになっていきます。
 それはそれを見ているお客にも伝わります。
 結果的に、お客のためにもなるというわけです。

 誰かのために(相手のために)演じている俳優は、きっといい俳優と言われるでしょう。

◯誰かのためにということは、『対象がはっきりしていること』ということ。

 このことについては前にも書いたかもしれませんが、自分の書いている作品のターゲット(観客・読者)を、はっきりと見ながら作品を書くことも、書き手にエネルギーを与えてくれます。
 この人たちのために書くのだ!
 という気持ちは、まちがいなく力になるのです。

 僕はいま、四月から始まる『ベイブレードバースト』というアニメの脚本に取りかかっているのですが、この作品のために、実際にベイブレードで遊んでいる少年たちを見に行きました。
 東京と福岡の二カ所のベイブレードの大会を取材に行ったのです。
 そこに集まっている少年たちを目に焼き付けました。
 自分の書こうとしている作品を見てくれるのは、彼らだと思うからです。
 今の作品は、彼らのために書いています。
 彼らが楽しんで笑顔になっている姿を想像します。
 そのイメージは、また僕の力になってくれるのです。

 あなたも自分の作品を読んで(見て)くれる人の姿をイメージしてください。
 そしてその人のために、作品を書き始めましょう。
  


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2016年02月26日

主人公を起てましょう

ストーリー脚本教室(実践編13)

 主人公を起てるためには、できうる限りの知恵を使うこと。
 何が正解かというのは、なかなか言えるものではありませんが、主人公を観客(読者・視聴者)に好きになってもらって、「また会いたい」と思ってもらえたら、大成功です。

◯他の作者のテクニックを調査すること

 僕は「寅さんシリーズ」が大好きです。
 このシリーズを支えているのは、フーテンの寅を演じている渥美清さんの魅力です。
 傍若無人で口は悪いけど、妹思いで、人情にあつい寅さんを、渥美清さんはまるで自分自身と重なるように演じきっていました。
 そんな寅さんを、嫌いになる人はほとんどいません。
 寅さんと会って、面白い話を聞きたいと、思わせてくれるのです。
 こんなキャラクターを作り出したのは、脚本演出の山田洋次さんと、渥美清さんです。
 映画という物語のなかで、どうやって観客を寅さんの味方につけていくのか、そのやり方を研究してみるのは、新しい視点をあなたに与えてくれると思います。

 他の成功している作品(アニメでもドラマでも漫画でも小説でも)を、この『観客をどうやって主人公の味方につけているか』という視点から研究してみてください。
 どの作品でも、作者は、そこに工夫とエネルギーをかけていることがわかるでしょう。

◯ネコを助ける
 アメリカの脚本家で脚本の書き方についての本を何冊か書いているブレイク・スナイダーは『SAVE THE CAT』という本で、まさにタイトルの通り、主人公がネコを助けたら、観客はその人を嫌いにならないという、脚本家の手口(テクニック)について書いてます。

 これは一つの例なのですが、先人たちは、さまざまな技術をすでに開発済みです。
 あなたは無理して、自分のオリジナル技術を編み出す必要はないです。まずは先輩たちのテクニックを学び、それを使えるようになればいいのです。
 もちろんやっていくなかで、自分オリジナルのテクニックを見つけだすことができたら、ぜひ僕にも教えてくださいね。

 僕がよく使っているテクニックをいくつか教えます。

 これらのことは主にストーリーがはじまった冒頭に使っています。
 物語のはじまりで、観客を主人公に寄り添ってくれなければ、そのストーリーをつづけることさえ難しくなるかもしれないからです。
 『好きになってもらえば、大成功。そうならないまでも、まずは寄り添ってもらうこと。』
 これとても大事です。

◯失敗をさせる
 (主人公がドジをやったり、失敗することで、観客に共感を持ってもらいます。自分も、よくやるって思ってもらうと同時に、そのキャラクターを、観客にあたたかい目線で見てもらえるという効果があります)

◯叱られる
 (これも前のやつと同じ効果を狙えます。主人公は理不尽なことで叱られるほうがさらに効果的です)

◯走らせる
 (走るシーンは、躍動感を生むと同時に、エネルギーを伝えることができます。走ると同じような効果を発揮するものが他にもあります)

◯バカをさせる
 (これも失敗をさせると同じですね。バカをやると失敗しますから)

 主人公を起てるためには、いろんな手法があると思いますし、それを追求するのはあなたの作家的な技術をきっと上げてくれるはずです。

  


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2016年02月25日

イメージキャストを楽しもう

ストーリー脚本教室(実践編12)

 前回は、『動物の動き』をキャラクター作りに役立てる方法があることを紹介しました。
 動物作戦と名づけましょう。
 今回は、その続き。

◯登場人物を、誰か知ってる人にたとえる作戦。(有名人でもオッケイ)

 登場人物を『起てる』ということは、観客(読者)にその人物を好きになってもらうためにすることです。
 特徴をつけたり、印象深くするために、いろいろなことをしなければならないのですが、それらはすべてそのためにあると思ってください。

 ここからは具体的な方法です。
 それは簡単、自分か書こうとしている登場人物を、自分の知っているキャラ立ちしている人のイメージで描いてみるのです。

 自分の周りに、そういう人が見当たらなかったら、映画やドラマに出てきたスターでもかまいません。
 そのスターをイメージして、人物像をつくってみるのです。
 その人物の声が聞こえてきたらしめたものです。
 あなたの描く、そのキャラクターは活き活きとしたものになっていることでしょう。

 ストーリーを実際に書いていくときにも、登場人物それぞれにイメージキャストを決めて書き進めるのも、やりやすくするための一つの方法です。
 映画のプロデューサーになったつもりで、キャストを決めるのです。
 イメージするだけだったら、ギャラはただです。
 スタローンだって、デカプリオだって使い放題です。
 彼らが芝居をしているところを想像しながら、物語を書き進めることができます。

 僕は芝居を書くときに、登場人物の写真や絵を机の前の壁に貼りだして、それを見ながら書いてます。
 ときには簡単な人形をつくって、粘土の上に立てたりして、立ち位置まで決めたりしながら書くこともあります。
 すべてはイメージするための触媒になればとの思いからです。
 想像力をフル稼働させるためには、なんだってやりますよ。
 他にいい方法とかあったら、教えてくださいね。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 16:25 | Comments(0) | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月24日

人物に動物を使ってみる(動物園に行こう)

ストーリー脚本教室(実践編11)

 書く準備は、そろそろ出来たと思う人は、どんどん書いていくことが大事だって、昨日書きました。
 今回は、登場人物の『起て方』について。

 いろんな指南書などに、登場人物の作り方が書いてあると思うので、そういうのはもうどんどん取り入れて、自分なりの登場人物の作り方を身につけて欲しいです。

 人のマネは、恥ずかしいことではありません。
 いいものは、どんどん取り入れましょう。

◯登場人物を動物にたとえたら

 『マネ』というのは、登場人物(キャラクター)をつくるうえでも、活かすことができます。
 『マネ』つまり『似せる』ということは、俳優が演技をするときにも、同じようなことをします。

 実際は若い俳優が、老人を演じたり、女性の俳優が、男性を演じたり、またその逆だったり、人間が動物を演じなければならないときだってあるわけです。

 俳優のトレーニングで、『動物を演じる』というものがあります。
 このトレーニングをするために(準備として)、俳優たちは動物園に行くことになります。
 動物園に行ってなにをするのか?
 もちろん動物を見るのです。
 ただぼんやり見るだけではだめで、じっくりと観察して、その特徴をつかまなければなりません。
 特徴をつかむことがマネをする(演じる)ためには、必要だからです。

 ためしに「にわとり」を演じてみてください。
 細かく首を動かしながら、ときどき首を突き出したりして、餌をついばむ動作を入れるかもしれません。歩き方もちょっと腰を落として、こまかいステップで動くことになるでしょう。
 人間は変身できるわけがないので、ニュアンスを演じることになります。

◯『まず見る、観察する』

 それが俳優にとって、なんの訓練になるのかというと、まず『見るということ』『観察する』ということです。
 俳優は舞台では、主に『人間』を演じます。
 そのためにもいろんな人間を見て、観察し、それを演技に取り入れる必要があることを、体感として学ぶという目的が、まずあります。

 そしてもう一つ、さまざまな動物のニュアンスを自分の演技に取り入れるということもあるのです。

 さきほどのにわとりの動きを、人を演じるときに取り入れたとします。
 たえず細かく首を動かしたり、こせこせした歩き方をしている人を演じることになります。
 それが観客には、どう見えるのか。
 なんだか落ち着きがなくて、小心者の人として見えるはずです。

 俳優が「小心者」の人を演じようとしなくても、そういう人になってしまうということなのです。

 まったく同じことが、他の動物の動きを取り入れたときにも起きます。
 ライオンの雄の動きのニュアンスを取り入れたとしたら、きっとそれは、強そうで威厳のある人になるでしょう。
 きつねの動きを取り入れたら、それはきっと油断のならない人になるでしょう。

 つまり、どういうことかというと、キャラクターができてくるということです。

◯人物に動物にニュアンスを取り入れる

 ストーリーや脚本の作り手が、自分の物語の登場人物をつくるときに、この動物のイメージを借りて、人物を造形していくということもできるということです。

 例えば、この人物は、「ねずみのようにすばしっこい」とか「犬のように忠実」とか、「かわいいシャム猫のように色っぽい」とか、動物のニュアンスをキャラクターにのせてみるのです。
 イメージしやすくなりますよね。

 自分が描こうとしている物語を、より興味深くし、面白くするためには、登場人物の魅力が必要です。
 その作品を、ヒットさせて、より多くの人に見てもらえるようにするためにも、人物は魅力的に描かなければなりません。
 その魅力があるかないかが、作品の運命を決めると言っても過言ではないのです。

 この人物作りの作業には、最大のエネルギーを使ってください。

 今回は、動物のイメージを使うという方法を紹介しましたが、この他にもいろんなやりかたがあります。
 僕が全部を知っているわけではないですが、いくつかは気づいているところがあるので、それをおいおい書いていこうと思います。

 追記。(芝居の演出家用)

 俳優に動物の動きのニュアンスをやってもらうというのは、芝居の演出をしているときにも、使うことがあります。
 登場人物にもっと特徴をつけたかったり、舞台上での動きをもっと活き活きとさせたいときに、俳優の耳元で「獲物の襲いかかるライオンのイメージで、相手にくってかかってよ」とか「ここはご主人に甘える、雌猫のイメージで、相手役に迫ってみて」とかささやいて、俳優を刺激してやるのです。
 そのほうが俳優にとってもわかりやすいことがあるからです。
 演出のイメージを、俳優に伝えるときにも、アニマルは活用できます。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 03:00 | Comments(0) | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月23日

毎日続けることが大事です

ストーリーや脚本を書こうとしている人に、アドバイスすることがあるとしたら、
「とにかく毎日、書くこと」「とにかく毎日、誰かと話すこと」「とにかく誰かと出会うこと」
まずは、この三つかな。
出会って、話して、書く。

毎日やるのは、けっこう難しいです。
書きたいと言ってる人でも、さぼってる人います。
さぼっちゃだめ。
つづけるのが大事です。
  


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2016年02月22日

限られた時間の中で

ストーリー脚本教室(実践編10)

 構成のメモができたら、あとはシーンをどんどん書いていくだけです。
 いよいよシーンを書くときに気をつけることというか、シーンを書いていくときのこつみたいなものについてです。

◯一つのシーンで、多くのことをやりすぎないこと。

 ついついやりがちなのですが、一つのシーンにいろんなものを詰め込みたがるものです。
 ストーリーを前に進めようとするあまりに、情報が多すぎてしまうのです。

 しかしこれは気をつけなければなりません。

 一つのシーンにいろいろ詰め込みすぎないこと。
 一つのシーンで、やることは、一つだけで充分です。

 たとえば、主人公が、相手役のAさんに、感謝するシーンだとします。
 Aさんに感謝しながら、別のBさんにも感謝することにしたとします。
 するとAさんに感謝するというシーンの意味が薄れてしまうのです。

 わかりやすく書きましたが、じっさいにこんなふうにはっきりしていることは少ないです。
 ただ無意識にやりがちなんです。

 一つ、一つのシーンが、有機的につながって、一つの物語になっていきます。
 階段は、一段ずつ上がりましょう。

◯シーンの中では登場人物の感情を動かすこと

 人は感情があるからこそ、行動を起こします。
 行動には、かならず感情がともないます。

 どんな感情で、その人物がそのシーンにいるのか。
 それをはっきりと把握してこそ、シーンが活き活きしてきます。

 そして、その感情を思いっきりうごかしてやるのです。
 感情が変化すれば、シーンが動き出します。
 ストーリーが展開します。

 登場人物たちがかかわり、感情が変化するようなことを起こしてやるのが、ストーリーを作る人の役目です。

 感情の変化こそ、シーンを前に進めてくれるのです。

 もし、あなたの書いたシーンの中で、人物の感情が表現されていなかったら、そのシーンはおそらくつまらないし、カットしてもいいシーンだと思っていいでしょう。
 そういうときは、さっさとカットです。

◯シーンは、短いほうがいい。
 ひとつのシーンがあまり長く続くのは、あまりいいことはありません。
 書いていて、なんとなく長いなと感じたら、それを見る人、読む人にとっては、もっと長く感じるシーンだと思っていいです。
 短く、簡潔にする努力をしましょう。

 無駄なセリフを書いていないか?
 無駄な動きをしていないか?
 無駄なギャグを入れようとしていないか?
 セリフがなくても、動きで表現できるのではないか?

 シーンをチェックしましょう。

 自分の時間も、お客さん(読者視聴者)の時間も限られています。
 限られた時間の中で、作品を表現するのが、ドラマ作りの醍醐味でもあります。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:53 | Comments(0) | 名誉館長の一言 | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月21日

ウルトラマンを作った男の芝居を見てきました。

紀伊國屋サザンシアターで劇団民芸の『光りの国から僕らのために〜金城哲夫伝〜』の千穐楽を見てきました。
脚本・畑澤聖悟、演出・丹野郁弓
出演、齋藤尊史、みやざこ夏穂、桜井明美、他。
光りの国から

急に思い立ったので、当日券に並んで(一番でした!)、いい席をゲットしました。
前から五列目のセンターよりという最高の席でございました。
たぶんキャンセルで出た席ですよねー。
なんか申し訳ない感じでした。

金城哲夫というのは、僕にとっては伝説的な脚本家の一人です。
三十年以上前から、金城さんについて芝居の台本を書きたいと思って、地道に資料を調べてきていただけに、民芸さんにまさかの先をこされてしまいました。

しかし金城さんのことを知っているのは、かなりマッニアックな人たちに限られていると思います。まず民芸の芝居を見にくるお客さんたちのイメージではありません。
だって、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンですよ。

客席に座ってまわりを見まわすと、やはり年配の人たちが多いです。
八十オーバーの人たちもたくさんいらっしゃる感じ。
年齢的には、金城さんと同年代だとは思いますが、ウルトラマンに熱狂した世代ではないことは明らかです。
まさに僕と同年代のウルトラ初期世代の人たちも、数多くいらしている感じはしました。
しかし、この作品を上演しよう、ウルトラマンを作った男にフォーカスをあてようとしてくれた民芸、えらいと僕は思います。
もちろん金城さんを語るときに、沖縄と本土の関係とか、必ず描かなければならないテーマがあるところが、ある意味、民芸っぽいとは思いました。

作品に関しては、金城さんに関して、かなり研究している僕も納得できる脚本になっていました。
欲を言えば、怪獣はピグモンだけじゃなく、もっと出して欲しかったし、できればウルトラマン、ウルトラセブンとかも出して欲しかったです。
金城さんをあつかうならば、そこは欠かせないところだと思うんです。
もちろんそういうキャラクターたちを出演させるということには、かなりのハードルがあることはわかった上で言わせてもらいました。
出さなかったのか、出せなかったのか、そのあたりは興味あるところですね。

作品(脚本)に関して、書き出すと、この作品に関しては止まらなくなりそうです。
自分の作品ではないのに、自分の作品のようになぜか思い入れが出てしまいます。
金城作品や井上ひさし作品に影響を受けて、脚本の世界に飛びこみ、今まで三十年以上戦いつづけているわけで、脚本家の話に思い入れがわかないわけがないのです。

ラスト近く、金城さんが、とうもろこし畑で自分が死んでしまったことにも気づかずに酒を飲みながら、現在の上原正三さんと話をするシーンで、僕の涙腺は崩壊してしまいました。
作者は上原さんに「五十年、書き続けてるけど、いまだにお前がつくったウルトラマンを越えるものをつくれないよ」と言わせていました。
そこが一番泣かされたところでもあり、いや、ちがうだろ! と思ったところでもありました。

さっさと沖縄に帰ってしまった金城さんの意志を引き継いで、50年以上も脚本の世界で書き続け、多くの子供たちに影響を与え続けてきた上原正三こそ、とっくに金城哲夫をしのいでいるんだと、僕は思ったのです。
上原さん、あなたこそが、本物のウルトラマンだと。

今回の脚本では、上原正三という作家が、あまりフィーチャーされてなかったと思います。
金城哲夫を描くなら、上原正三も同じ比率くらいで描かねばならなかったのではないか。
50年、子供向けの脚本を書き続ける、上原正三の業とはなんなのか?
そこにもスポットをあてて欲しかったと思いました。
作中では、家を建てて50坪の土地を占領したと言っていましたが、そんなことで満足するような人じゃないだろう。
そんなことを、この芝居を見終わって、興奮を静めるために、ひたすら歩きながら考えたのでした。

日本の影響というか、支配を受けつづけた琉球。
そこから出て来て、子供番組というもっとも人間に影響を与えることのできるもので、結果的に日本を変えていった金城哲夫。そして上原正三。
金城は、道半ばで倒れたが、上原はずっと走り続けた。
ある意味、ウルトラマンで日本を変えたのかもしれない。
今もウルトラマンは子供たちに影響を与え続けているのだから。

この作品が出てしまったので、僕が書こうとしていた金城哲夫の物語は、お蔵入りです。
それは残念だけど、金城哲夫の物語が、こうしてサザンシアターで上演されたということは、すごいできごとだったと僕は思うのでした。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 17:59 | Comments(0) | 演劇 | 脚本

2016年02月21日

原稿もダイエット

ストーリー脚本教室(心構え編5の続き)

◯『直し』についての、実践的なことについて

 自分が書いたものを、初稿のまま発表したり、ネットにアップしたりするのは、もちろんダメです。

 書いたものは、必ずもう一度目を通してください。
 そして何回もチェックして、書き直して、完成に近づけていきます。
 それは絶対にしなければならないことです。

 そのために僕は書いたものは、『必ずプリントアウト』して、紙でチェックします。
 今はほとんどの人がパソコンで原稿を書いていると思います。
 キーボードとモニターで書いた文章は、やはり手書きの文章とは、微妙に違ってきます。
 それはかまわないのです。
 しかし誤字脱字とか、モニター上だとけっこう見逃してしまいがちなんですね。
 ワードなどチェック機能がついているソフトもありますけど。
 プリントして、紙に落として、読み直すということには、そういう誤字脱字のチェック以外にも、ひとつ効果があります。
 手で紙に触り、ペンを持っているということで、脳の新たな部分が刺激されるようなのです。

 キーボードとモニターで書いていたときとは違うアイディアが、読み直しているときに出てくることがあります。
 それも直しにはどしどし使っていきましょう。

 そして無駄なところを発見しやすいということもあります。
 無駄なところは、ずばずばカットしたほうが、いい作品に仕上がっていくのは当然のことです。
 無駄に気づいたら、まよわず削り取りましょう。

 簡潔であれば、簡潔であるほどいいです。
 原稿のスリム化、大事です。

 体と脳は密接につながっています。
 体を動かすと、脳が動きます。

 じっとしてモニターをにらんでばかりじゃなく、動きましょう。歩きましょう。走りましょう。踊りましょう。
 脳はみるみる活性化していくはずですよ。
  


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2016年02月20日

人の意見を受け入れよう

ストーリー脚本教室(心構え編5)

◯『直し』について、または『受け入れること』について。

 実践編をつづけたので、今日は心構え編です。
 前回の心構え編4では、締め切りは、作家の味方であるという話を書きました。
 締め切りがあるから、がんばれるんだということです。

 今回は、『直し』についてです。
 一人で書いていると、自分の作品の足りないところや、間違っているところは、なかなか見つけにくいものです。
 人は、自分のことについては、客観的になることは本当に難しいです。

 自分が書いたものを、客観的に見るということはとても大事です。
 そのためには他人の意見を聞くということ、そしてそれを取り入れるということが。

 『素直でいること』『人の話を聞くこと』『いいアイディアはどしどし取り入れること』
 こう書くと、まるで脚本のための心構えではなく、日常の生き方についてお説教しているみたいになってしまいますね。
 でも日常と表現とは、実はすごく近いところにあるのだと思います。

 もちろん『自分の意志を通すこと』は大事です。
 『自分で決めること』も。
 ただそこにいく過程で、ほかの人たちの考えを取り入れるというのも、いいことだと言いたいのです。

 『意見を聞くこと』は、もしかしたらきつい体験になることもあります。
 相手によっては、厳しい意見や、だめ出しをしてくるかもしれないからです。
 自分の書いたものについて、厳しい意見を聞くのは、気持ちのいいことではないこともあります。もしかしたら傷つくかもしれません。がっかりさせられ、落胆してしまうかもしれません。
 でも、それを恐れていては、前進はありません。

 それらの厳しい意見も、きつい言葉も、自分の枠をひろげていくためのエンジンになるんだと思ってください。
 そしてそれらを受け入れたとき、あなたは、次のステップに踏み出すことができるのです。

『受け入れてみましょう』まずは、相手の意見を。
 そこには、かならず理由があるのですから。

 プロになっても、『人の意見を聞くこと』『直し』は、アマチュアのときよりも大事になります。
 編集者やプロデューサーや、監督、スポンサーなど、多くの人達があなたの作品に対して、意見を言ってくれます。
 それらのことばに『感謝しましょう』そして、意見を取り入れて、あなたが『決めて』作品を成長させていくのです。
 プロも、みんなやっています。

 何回も、何十回も、直しを繰り返して、作品は完成に近づいていきます。
 『直しを怖がらずに、楽しんでください』
 『人の意見を聞いてください』
 『客観的に自分の作品を見てください』
  


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2016年02月19日

構成を練る作戦の続きです

ストーリー脚本教室(実践編9)

 前回の続きです。
 くわしいプロットをつくるやりかた、登場人物をくわしくしていくやりかたを、紹介しました。
 それらを地道につづけていくことが大事です。

◯カードを使って構成を練る作戦。

 百円均一ショップなどで売っている、葉書よりも小型のカードを買ってきます。
 そのカードを使って、構成を練っていくやりかたも、僕はときどきやっています。

 カードの一枚に書き込むのは、そのシーンに出てくる人物と、そこで行われる行動、アクション、感情の変化などを、メモ的でいいので書き込んでいきます。(てきるだけ簡潔に書いた方がいいです)
 もしセリフ等が浮かんだら、それもメモしておきます。
 シーンごとに、このカードをつくっていくのです。

 カードをバーッとならべると、自分が書こうとしている物語が、全体で俯瞰できるしくみです。
 全体をながめると、本当に必要なものと、そうでないものとが、自ずと見えてきます。
 シーンを入れ替えると、さらに効果的だったりするところも、見つけだすことができることもあります。

 このカード作戦のいいところは、持ち歩けるということです。
 カードの束は、どこに行くにも携帯できるので、ちょっと時間があれば、そのカードをながめて構成を練ることができるわけです。
 移動することの多い人には、使える作戦だと思います。

◯ポストイット、壁に貼り付け作戦。

 これも僕が日常的に使ってるやりかたです。
 強粘着のポストイットというのがあります。
 糊の強いやつです。
 すぐにはがれてしまうやつはダメです。

 これにカード作戦と同じように、シーンで書かなければならないことをメモしていきます。
 そしてそれを、どんどん壁に貼っていくのです。
 これははったりはがしたりすることができるので、それを並べ替えながら構成を練っていくというやりかたです。

 手近に自由に使える壁がないとだめですけどね。
 大きなホワイトボードとかを持っている人は、それを使えばいいと思います。
 僕的には、執筆する部屋の壁を全部使えれば理想ですね。

 この作戦を僕も使っているので、僕の仕事部屋の壁には、ポストイットがべたべた貼られてます。

 これで気をつけなければならないのは、ポストイット(これは製品名でしたね。ほかの会社の類似製品でもいいです)ははがれる可能性もあるということ。
 はがれてどこかに飛んでいってしまうと、見つけるのは難しくなります。
 気をつけてください。

◯構成には、いろんなやり方があるので、自分に合った方法を見つけてください。

 ストーリー、脚本などを書き進めていくなかで、あとで構成で悩むよりも、書き出す前に構成をきっちりと決めてから書き始めた方が、途中で迷わずにすむことが多いです。

 しかし、それが総てでもありません。
 構成なしで、どんどん書き進めていくことが、自分に向いているという人もいるでしょう。
 その人は、自分のやりかたを推し進めてくれればいいと思います。

 面白い作品が出来上がることが目的なので、結果が良ければ、やりかたはなんでもいいのです。
 ここで僕が紹介しているのは、あくまでも、一つのやりかたなのですから。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:29 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月19日

連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏

友人の漫画家、巻来功士の『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』という自伝的漫画を読みました。
いやー、面白かった!
漫画家さんの舞台裏を、こうも赤裸々に描いていいの? って心配になるくらい、面白くて、一気に最後まで読ませていただきました。
巻末についている、元編集長との対談も、興味深いです。
編集者と漫画家の関係が、浮き彫りになっています。

僕も分野は違うけど、同じ時代に脚本の世界でもがいてここまで来ているので、いろんな共通項とか見つけながら読んでました。
僕がアマゾンで残り一冊というのを買ってしまったので、売り切れてるかもしれないけど(再入荷待ちになるかも)、漫画という世界で生きて、もがいている人のドラマを読んでもらいたいと思います。


巻末の対談で、元編集長が「漫画の縦糸と横糸」という表現をしているところが、すごく興味深かった。
縦糸とは、ストーリーのこと。
横糸とは、キャラクターの魅力や演出のことと受け取った。
縦糸のうまい人と、横糸のうまい人がいて、それがうまくからみあったときに、いい作品ができていくという言い方を元編集長はしていた。
なるほどと思った。

人に見せる物語を作っていくためには、このストーリー作りと、その表現方法、演出方法などが、大事だと言うことですね。

いま、日本では、漫画原作の映画やテレビドラマがたくさんあります。
原作付きでないと、なかなかオリジナル企画が通りずつらいという現実もあるのですが、実際に漫画家さんたちの努力というか、売れる漫画をつくりあげるために使っている才能と努力は相当なものであると思います。

漫画家になるためには、ストーリーをつくると同時に、絵の才能、演出の才能も必要なわけで、そうとうな技術力を持っていないと、それで生活していくのは難しいです。(もちろんほかの分野も同じなんですけど)
僕は、そんな厳しい場所であがきながら、生活している人たちを、心から尊敬します。

連載終了
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:33 | Comments(0) | 名誉館長の一言 | 

2016年02月18日

さぁ、いよいよ構成に入っていきますよー。

ストーリー脚本教室(実践編8)

 あらすじができたら、それを作品(脚本・小説)にしていきます。
 それにはいくつかの過程をふんだほうがいいと思えることがいくつかあります。
 ここからは、それについて書いて行こうと思います。

 あらすじから、作品にしていく過程は、作家それぞれのやりかたがあると思いますが、ここでは僕がやっている方法をいくつか紹介しますね。

◯あらすじをくわしくしていく作戦

 これは、タイトル通り、短いあらすじを、長いあらすじに成長させていくやりかたです。
 あらすじでは省略して書いている部分や、書き込んでいないことなどが多くあります。
 それらをあらすじに書き加えていき、もっとながいあらすじに成長させていくのです。
 他の人に見せるわけではないので、いくら長くても問題はありません。
 書いていく過程で、いろいろと新たに気づくことなどもあります。
 完成の状態を想像できるくらいに書き込んでみるのもいいでしょう。

 じっさいに長いあらすじを書くと、作品化していくと、ずいぶん削らなければならないことがあることに気づきます。
 この長いあらすじ(プロット)では、カットしてもいいところを、書き込んでいることが多いからです。
 カットすることは後でいくらでもできるので、ここでは思いついたことは、書き込んでいて損はないと思います。

◯登場人物をくわしくしていく作戦

 あらすじをくわしく書いていく前に、僕はたいていの場合、登場人物のリストをつくります。
 登場人物の名前から、家族環境、配偶者(恋人)の有無、どんな外見の特徴を持っているのか、どんな性格なのか、どんな目的を持っているのか、その性格を形作った背景はなんなのか、どんな癖があるのか、どんな口調でしゃべるのかなど、思いつく限りのことを、そのリストには書き込んでいきます。

 この作業はいくらくわしくしてもいいです。
 あくまでも自分のためのメモですから。
 メインの登場人物に関しては、全員分のメモをつくったほうがいいでしょう。

 この作業をしている過程でも、あらたなドラマのアイディアが湧いてくることもあります。
 あらすじを大きく飛躍させてくれるのは、この登場人物たちなのですから。
 登場人物たちが、作家の中で、ちゃんと生きた人間として動き出すまで、このメモを書くことができたら最高です。

 続きはまた次回。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:45 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月17日

締め切りとうまくつきあうべし

ストーリー脚本教室(心構え編4)

 書き続けるためには、かなりのエネルギーが必要です。
 作品を完成させるというモチベーションを維持しつづけるのはとても難しいです。
 すでにプロなら、仕事のオファーがあって、何日までに原稿をあげなければならないという期限(締め切り)というものが存在しますが、アマチュアだったり、修行中だとしたら、それを自分で設定しなければなりません。

◯締め切りを設定しよう。

 この締め切りというのは、作品をつくりあげるときに、作家の背中を押してくれます。
 人間とは、自分にきわめて甘い生き物です。
 締め切りがないと、なにかと理由をつけて、さぼろうとしてしまいます。
 そういうもんなのです。

 僕の場合も、同じです。
 締め切りがないと、なかなか書き始めることができません。
 自分では、作品のための準備をしていると、自分に言い聞かせて、書き始めるのをずるずると引き延ばしていたりします。(自分でも、それではいかんと思っていても、ついついそうなってしまいます。)

 でも締め切りがあると、それが僕の尻を叩いてくれて、作品を完成させようとしてくれます。

 締め切りは、作家にとって、パートナーともいうべき存在です。
 自分で自分の締め切りを決めて、作品を書き始めましょう。
 そしてかならずエンドマークまでかき上げること。
 作品の善し悪し以前に、完成させることができるかどうかが、大事です。
 まずは最後までかき上げるのです。
 そこがスタートだと思ってください。

 そこから何度も何度も作品に手を入れる、『直し』という作業が始まります。

 覚悟してください。
 作品をつくるということは、『締め切り』と『直し』とずっとつきあっていくということなのです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 21:40 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月16日

ストーリーを書くためのウォーミングアップ

ストーリー脚本教室(実践編7)

あらすじを書くために必要なことは、すべてに通じる文章術!

前回、あらすじを書くためにも、他の表現にも大事な方法があると書きました。
『くわしくする』と『前に進む』
この二つです。

◯『くわしくする』は、もう充分ということろの見きわめが大事。

 たとえば、一人の登場人物が、シーン(舞台)に現れたとします。
 観客(読者・視聴者)は、まず何を思うのかを考えてください。

 観客は、この人物のことを何も知らないのです。
『だれ!?』と、思うはずです。

 まず、これが誰なのか。どういう人物なのかを教える必要があります。
 いや、その前に、ここがどこなのかも伝えなければなりません。

 観客は、それがわからないままにストーリーが進んでしまうと、とたんに興味を失ってしまいます。
 すべてをわからせる必要はないのですが、興味を無くさない程度の情報は、観客に与えなければならないのです。
 観客の想像力を刺激するのが目的だとしても、最低限の情報がないと、見てもらうことさえできなくなってしまいます。
 この出すべき情報のさじ加減が大事です。
 情報が多すぎても、わかりすぎてつまらなくなるし、少なすぎて興味を失わせてもいけません。
 ちょうど良いのはどれくらいかを判断するのは、書き手のセンスです。

 シーンに登場した一人の男を、できるだけ完結に観客に伝える方法をいかに編み出すか。
 それは書き手の技術力をいかに高めるか、そしてそれを経験で磨いていくかにかかっています。
 努力してください。

◯もう充分というところに来たら、それは『前に進む』タイミングです。
 ストーリーを展開して、次に進んでください。
 そして、またくわしくしなければならないものが出てきたら、またそれをくわしくするのです。

 それを繰り返していくことで、ストーリーが出来ていきます。

 たとえば、こうです。

 (これから書くのは、まったくの即興で書いてます。何も考えずにキーを打っています。)

 タイトルは
『タイムトラベラーと会ったときの話』

 一週間前のことですが、近所の公園で一人の不思議な男にあったんです。

 (いつ、どこではわかります。ここで疑問が出るのは、不思議な男は、どんな男なのか? それをただ詳しくしていきます。ただそれだけです)

 その男は、ぼろぼろのコートを着ていて、髪の毛は伸び放題、身体全体からは煙というか火薬みたいな匂いを発していて、まるで火事の現場から逃げ出してきたかのように、顔はすすだらけでした。年齢は二十代後半くらい、ただなんだかとても嬉しそうに微笑んでいて、その瞳はキラキラと輝いていました。男は、自分の原田カナタと名乗りました。

 (この男のことをくわしくしようと思えば、まだまだいくらでも書くことができるはずです。ただし、ある程度は観客にイメージすることができるところまでは書いた、充分だと思ったら、次に進みます。
 いま書いた文章のなかに、かならず次に書くべきことのヒントがあるはずです。ヒントというか、次のイメージへ思考をジャンプさせてくれるきっかけとも言うべきものです。
 ここで僕のイメージを触発させるのは、男が微笑んでいて目がキラキラしていたというところです。
 なぜ男は、こんな表情をしているのか?
 前に進みます。)

 カナタは、僕に、今は何年なのかと訊くので、2016年だと教えると、いきなり僕の体に抱きつき、「やったぁ、成功した! 僕はタイムトラベルしたぞ!」と言うのです。

 (ここで僕は、タイムトラベルしたぞと言う男に抱きつかれた、自分の気持ちはどうだったろうと疑問に思いました。そこでこの気持ちを詳しくします)

 僕は、やばいと思いました。この男は、頭のいかれたやつで、もしかしたら精神病院から抜け出してきたのかもしれない。かかわるとろくなことにならないぞという不安感が湧いてきました。

 (気持ちを詳しくするのは、これくらいで充分でしょう。そうしたら、また前に進みます。ヒントは、自分の書いた文章の中にあります。無意識はすでになにを書くべきかをつかんでいるはずなのです)

 僕はこの男を、押し返して、逃げだそうとしました。
 ところが男は、僕の体を後ろからつかんではなそうとしません。
「きみは、篠田俊太郎だろう。僕はきみに伝えなければならないことがあるんだ」

 (自分の名前を男が知っていたのは、なぜか? 伝えたいこととは、なんなのか? いきなり二つも謎が生まれました。次には、これを詳しくしていきます)

◯こんな感じで『くわしくする』と『前に進む』を繰り返していけばいいのです。
 おそらく前に進んでいくうちに、ストーリーの実体がしだいに浮き上がっていくはずです。
 ストーリーは何もかんがえていなくても、即興でいくらでも書けるのです。

◯いま紹介したのは、頭のウォーミングアップとしても有効です。
 ストーリーをつくるため、あらすじをつくるために、頭と心のウォーミングアップをするのは、いいことだと思います。
 くわしくすると前にすすむゲームをやってみてください。
 いいウォーミングアップになるはずです。

◯あらすじは、あまり詳しくなくてもいいですが、感情の変化や、起きる事件など、これは絶対に書いておかなければならないというところは外さないようにしたいものです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 22:05 | Comments(1) |  | 映画 | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月15日

あらすじを書いてみよう

ストーリー脚本教室(実践編6)

 あらすじを書いてみよう

 主人公をつくって、追いつめるアイディアを書き出したら、その中からものになりそうなものを、いくつかチェックします。

◯あらすじをつくります。

 主人公をつくって、それを追いつめるアイディアがまとまったら、それらを使って短いあらすじを書きます。

 あらすじは、一言で書いたものよりも、長くかきます。
 書くものによって、あらすじの長さはさまざまですが、A4の紙に一枚以内がいいでしょう。
 あまり長くなっても、読むのが面倒くさいと感じさせてはいけません。
 さっと読めるくらいの長さがちょうどいいです。

◯肝心なのは、『面白そう』と思えるかどうか。

 面白さの基準は人それぞれですが、「なんか面白そう」とできるだけ多くの人の印象に残るようなあらすじがいいです。
 そのストーリーが書き出すに値するものか、そうではないのかが、ここで決まると思ってください。

◯あらすじを書き出す前に、ストーリーだけではなく、あらゆる文章術の基本中の基本をここで改めて書いておきます。

◯文章の基本は、『くわしくする』と『前に進む』の二つです。
 そしてそれはストーリーの基本でもあります。

 くわしくすると前に進むについては、次回実践編7で、もっと詳しく書きたいと思います。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 17:14 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月14日

主人公を追いつめましょう。

ストーリー脚本教室(実践編5)

 「苦労は買ってでもしろ」と、昔の親はよく言ったものです。
 なんてこと言うんだ、苦労なんてしなくていいなら、したくないよと思ったものですが、ストーリー作りの場合は、たしかにその通りだなと、今なら思います。

◯主人公を、いかに追いつめるかが、物語を面白くしてくれます。
 いかに主人公に苦労をさせるかが大事というわけです。

◯ストーリーを簡単に作ろうと思ったら、主人公にふりりかかるかもしれない、問題(トラブル)をとにかくたくさん考えます。
 このときに実際にそのアイディアを使うかどうかは、あまり考えずに、とにかく思いつくかぎりの『問題』を書き出していくのです。

◯たとえば、
 仮に主人公は、三十歳の脚本家、篠田俊太郎だとします。
 その篠田に、どんな問題が降りかかるのかを、思いつく限りメモしていくのです。

 書いていた原稿が消えてしまう。
 仕事がなくなる。
 恋人の浮気。
 トイレに入ったら、紙がなくて、さらに閉じ込められる。
 ギャングに襲われる。
 交通事故にあう。
 痴漢にまちがわれて逮捕される。
 地震にあい、家がやける。
 両親が死ぬ。
 宇宙人にさらわれる。
 タイムスリップしてしまう。
 友達と仲違いする。
 病気になる。
 はげる。
 妖怪に襲われる。
 怪獣にふまれる。
 ごはんにゴキブリがまじっている。

 とにかくなんでもいいのです。おもいつく限りのアイディアをしぼりだします。
 そしてそれをメモします。

 次に、主人公と、そのメモをながめるのです。
 ふさわしいアイディアがフワリと浮き上がり、しだいに想像の翼を拡げていってくれます。

◯ストーリーとは、基本的に主人公が、とんでもない目(問題トラブル)にあうことで生まれます。
 そしてそれをなんとか解決しようと、主人公が行動するのですが、よけいにトラブルは大きくなっていき、主人公はどんどん追いつめられていきます。

 それが最も簡単にストーリーをつくる方法です。

 もうこれ以上おいつめれないというところ(最大のピンチ)に主人公をたどりつかせることができれば、しめたものです。
 きっとかなり面白いストーリーになっているはずです。

 そこを主人公が、なんとか解決して、主人公自身が少し変化していれば、もうストーリーの一丁上がりです。

◯ストーリーをつくる人間は、自分が生み出した主人公に対して、ひどいことをしても平気でなければなりません。
 「追いつめられること」こそ「主人公たる資格」だと思ってください。

 さぁ、主人公を追いつめましょう。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 00:28 | Comments(0) |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本

2016年02月12日

ストーリー脚本教室を書き始めたわけ

 僕が今、このブログでストーリーや脚本作りについて、けっこう詳しく書きはじめたのは、先日の鳥栖での講演会とワークショップに行ったことがきっかけでした。

 講演会が終わって、僕のところに、何人かの人が話をしに来ました。
 そのなかに、「ぼく、高校七年生なんです」という人がいました。
「いろいろあって……」
 と、いう彼は小説を書いていると僕に話してくれました。
 前に僕の講演会にも来ていて、またどうしても来たかったからと、彼は言ってくれました。
 翌日に大学受験が控えているにもかかわらず。

 彼が、高校に七年通うことになった理由は、プライベートなことなのでここには書きませんが、よほどのことがあったのはすぐに想像がつきました。

 僕も鳥栖で二年間浪人していたことがあるので、人生の中でなんだか宙ぶらりんになっているような状態に関しては、良くわかっているつもりです。
 七年生の彼の気持ちも、少しはわかる気もします。

 彼はいまから書こうとしているものについて、なにか参考になればと思って、僕の講演会に来たのだと思いました。

 なにか彼のためになることをしてあげたい。
 そして、またそれが彼と同じように、ちょっと先輩のやってきたことから学びたいと思っている人のためになればいい。
 そんな思いから、このブログでの連載をはじめました。
 急に、僕のブログでの書き込みが増えたので、驚いている人もいるとは思いますが、そんなわけで、高校七年生が僕の心に火をつけてくれたのでした。  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:10 | Comments(1) | 名誉館長の一言 | 脚本 | オセッカイザー

2016年02月12日

ワクワクしてますか?

ストーリー脚本教室(心構え編3)

 心構え編1では、創作ノートを作ろうと言う話を書きました。
 心構え編2では、脳のウォーミングアップについて書きました。

 三回目は、「楽しむこと」についてです。

 あなたがパソコンの前に座って、なにか書きだそうとするとき、または原稿用紙に向かってペンを走らせようとするときの気持ちが大事です。

 このとき、あなたの心には、どういう気持ちがあるでしょうか?

 ちょっとでも「いやだなぁ」「くるしいなぁ」「たいくつだなぁ」なんて気持ちはありませんよね。
 これから出かけるストーリーの冒険への期待で「ワクワク」しているにちがいありません。

 そうでなかったら、こんなに大変な冒険に乗り出すわけがありませんからね。
 作品を書き上げるということは、まさにマラソンを走り通す覚悟が必要です。
 それは精神的にも体力的にも、かなり大変なことです。
 そこに「楽しみ」「よろこび」がなければ、完走することすら難しいです。

 なんとかヘロヘロになりながら完走したとしても、それで終わりではなく、ひどい感想や厳しい批評を受けて、何度も直さなければならなくなったりするんです。

 何年もこの仕事をしてきた僕ですが、おいそれとは他人には勧められる仕事ではありません。

 これを書かずにはいられない人や、書くことが楽しくてしかたがない人にしか、お勧めできないんです。本当に。

 あなたが何かを書かずにはいられない人で、創作することが楽しくてしかたがない人なら、まよわずに冒険にでかければいいです。
 そうでなければ、もう一度自分に問いかけてください。

 ワクワクしてる? って。

 まるで恋人に会いにいく、ウキウキ感で、キーボードを打ち始めましょう。
 ノートにメモを取りましょう。

 そのワクワク、ウキウキは、かならず読んでくれる人、見てくれる人に伝わるはずです。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:52 | Comments(1) | 名誉館長の一言 |  | 映画 | テレビ | 演劇 | 映画と小説 | 脚本