2014年09月03日

いい演技とは? コーチの役割とは?

 いい演技とはなんなのか?

 いまさら、こんな本質的なことを考えています。
 (高校生に演技を教えていて、ふとそんなことを考えました。)

 悪い演技というのは、感覚的にすぐ感じることができます。
 演じている人が、頭の中で別のことを考えていたりして、その場にいないと感じるとき。
 (うわのそらでいる人を演じているときは別でしょうけど)

 『その場にいない』とは、どういうことでしょうか?
 目の前のフィクションの空間を、壊していると考えるべきなのかもしれません。
 登場人物になっている以上、そのフィクション空間のリアルでなければならないのに、意識の一部がそのフィクションを見ている側に残っていると、そういうことが起きてしまうのです。

 簡単に言うと、『リアリティがなくなっている』ということでしょう。

 『リアリティ』とは、本当らしさということです。
 『本当』ではないのです。『らしさ』なのです。
 観客はフィクションの空間で起きていることだと理解しているので、もとよりそこに『本当』は求めていません。でも『嘘』ではいやなのです。『本当らしさ』を見たいのです。

 逆に言うと、『らしさ』を創り出すためには、『本当』とは何かを知る必要があります。

 『本当』とはなんでしょう?
 人間の本当とはなにか?
 非常に哲学的なテーマに思えてきましたが、実はシンプルなことなのかもしれません。
 五感。
 視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。(細かく分類していけばもっと感覚はありますけど)
 そして内的な衝動である、『感情』。
 それらが人間の動きをつくりだしているものです。

 そこに嘘がなければ、それは本当ということになるはずです。

 つまり俳優が五感と感情を表現して、それが見ている人に嘘ではないと感じられることができたら、それがリアリティということなのです。

 『五感と感情の表現をちゃんとする』ということは、難しいことでしょうか?
 
 人間は現実世界では、あたりまえのこととして『五感と感情』を使って生きています。
 なにかを見て、何かを触れて、何かを感じて、何かを味わいながら。自然にわき起こる感情で、笑ったり、泣いたり、怒ったりしながら生きているのです。
 それは人間には自然に身についていることです。
 しかしそれを表現するとなると、いろいろと余計なことを考えて、それが不自然になってしまうのです。
 つまり考えるということが、自然な表現の邪魔をするということになります。

 思考に入らず、自然にわき上がる感情のままに、ふるまるうこと。
 結局のところ、いい演技とは、そういうことになるわけです。

 いや、もっと正確に言うならば、『思考に入らず、自然にわきあがる感情のままにふるまっているように見えること』です。
 『見えること』というのが皮肉です。
 本当でなくても、そう見えればいいのです。
 もちろんそう見えるためには、限りなく本質に迫っていなければならないのですが。
 
 演技の指導(コーチ)をする人に求められる技術は、そのやりかたを俳優志望者にわかりやすく教えてやることでしょう。

 なにも教わらなくても、それができてしまう人もいます。
 われわれは幼い頃から『ごっこ』遊びをすることで、それを身につけているからです。
 社会生活の中でも、本当らしい演技を見事に使いこなして生活をしています。
 ですからほとんどの人は、演技力を持っているはずなのです。

 コーチの仕事は、本来持っているその力を、うまく出せるように導いてやることなのです。
 ようやくここにたどり着きました。(長かった)

 『演技指導の基本は、俳優が本来持っている力を、より良く引き出してやることである』

 あんがいこれは的外れではないと思います。

 コーチの技術としては、引き出し方ということになりますね。
 どんな方法を使って、俳優の中から持っているものに気づかせ、本質的な力を引き出してやるか。
 いろんな方法があるとは思いますが、各個人によって、その対処方法は違ってくるはずです。
 一人一人、人間は違っていますから。

 長文になってしまいました。ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございます。


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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:20 | Comments(0) | 演劇
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