2016年02月26日

主人公を起てましょう

ストーリー脚本教室(実践編13)

 主人公を起てるためには、できうる限りの知恵を使うこと。
 何が正解かというのは、なかなか言えるものではありませんが、主人公を観客(読者・視聴者)に好きになってもらって、「また会いたい」と思ってもらえたら、大成功です。

◯他の作者のテクニックを調査すること

 僕は「寅さんシリーズ」が大好きです。
 このシリーズを支えているのは、フーテンの寅を演じている渥美清さんの魅力です。
 傍若無人で口は悪いけど、妹思いで、人情にあつい寅さんを、渥美清さんはまるで自分自身と重なるように演じきっていました。
 そんな寅さんを、嫌いになる人はほとんどいません。
 寅さんと会って、面白い話を聞きたいと、思わせてくれるのです。
 こんなキャラクターを作り出したのは、脚本演出の山田洋次さんと、渥美清さんです。
 映画という物語のなかで、どうやって観客を寅さんの味方につけていくのか、そのやり方を研究してみるのは、新しい視点をあなたに与えてくれると思います。

 他の成功している作品(アニメでもドラマでも漫画でも小説でも)を、この『観客をどうやって主人公の味方につけているか』という視点から研究してみてください。
 どの作品でも、作者は、そこに工夫とエネルギーをかけていることがわかるでしょう。

◯ネコを助ける
 アメリカの脚本家で脚本の書き方についての本を何冊か書いているブレイク・スナイダーは『SAVE THE CAT』という本で、まさにタイトルの通り、主人公がネコを助けたら、観客はその人を嫌いにならないという、脚本家の手口(テクニック)について書いてます。

 これは一つの例なのですが、先人たちは、さまざまな技術をすでに開発済みです。
 あなたは無理して、自分のオリジナル技術を編み出す必要はないです。まずは先輩たちのテクニックを学び、それを使えるようになればいいのです。
 もちろんやっていくなかで、自分オリジナルのテクニックを見つけだすことができたら、ぜひ僕にも教えてくださいね。

 僕がよく使っているテクニックをいくつか教えます。

 これらのことは主にストーリーがはじまった冒頭に使っています。
 物語のはじまりで、観客を主人公に寄り添ってくれなければ、そのストーリーをつづけることさえ難しくなるかもしれないからです。
 『好きになってもらえば、大成功。そうならないまでも、まずは寄り添ってもらうこと。』
 これとても大事です。

◯失敗をさせる
 (主人公がドジをやったり、失敗することで、観客に共感を持ってもらいます。自分も、よくやるって思ってもらうと同時に、そのキャラクターを、観客にあたたかい目線で見てもらえるという効果があります)

◯叱られる
 (これも前のやつと同じ効果を狙えます。主人公は理不尽なことで叱られるほうがさらに効果的です)

◯走らせる
 (走るシーンは、躍動感を生むと同時に、エネルギーを伝えることができます。走ると同じような効果を発揮するものが他にもあります)

◯バカをさせる
 (これも失敗をさせると同じですね。バカをやると失敗しますから)

 主人公を起てるためには、いろんな手法があると思いますし、それを追求するのはあなたの作家的な技術をきっと上げてくれるはずです。



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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:35 | Comments(0) | 脚本 | テレビ | 映画と小説 | 演劇
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