2016年04月02日

昔のアフレコ現場のこと

ストーリー脚本教室(心構え編20)

 アフレコの話しの続き。
 前回は、脚本家がアフレコに立ち会うことの意味について書きました。
 今回は、僕が最初にアフレコ現場に行って驚いた話しです。

◯最初のアフレコ現場

 前回書きましたが、僕が最初にかかわった作品は1981年から製作に入っていた「テクノボイジャー」でした。
 ほぼ同時期に「ドン・ドラキョラ」にもかかわっていたので、おそらくどちらかのアフレコスタジオに行ったのが最初だったはずです。

 このころのアフレコというのは、フィルムで行われていました。
 いまはほとんどがハードディスクに入れてあるデータから映像をモニターにだして、それにあわせて収録は行われています。
 すべてがデジタル処理なので、シーンの頭出しや、編集も自由自在です。
 しかし81年当時は、フィルムを上映しながら、それにあわせてテープに録音するというアナログでの作業でした。

 ぼくは、その状況にまず驚きました。
 16ミリのフィルムには、アニメの映像が完全に出来上がっているわけではありませんでした。
 色がついている絵があればいいほうで、ほとんどがまだ彩色されていない原画が、そのまま撮影されていたり、ひどいところだと、なにもないフィルムに、ただ赤線とか青線とかが引いてあるところさえあります。
 これにあわせて声を録音していくのです。

 声優さんたちの技術には、さらに驚かされました。
 リハーサルで、一度フィルムを上映しながら、自分が声をいれるところを確認していきます。
 そしてテスト。
 そこではじめて台本をみながら、声をあてていきます。
 もうこの一回目のテストで、だいたいの芝居は出来上がっています。
 音響ディレクターからの、修正の指示が出たあと、ラステス(ラストテスト)があります。
 そして本番です。
 本番はほほ一発勝負な感じ。
 失敗すると、テープを巻き戻して、そこから再スタートになります。
 他の俳優さんたちに迷惑をかけるといけないので、声優さんたちは真剣そのもの。
 当時の録音テープのトラック数はあまり多くなかったと思います。
 多重録音するにも、トラックに限りがあるので、なんども取り直すということはあまりしていませんでした。
 こまかいテープの編集作業などを同時にしながら、アフレコの作業は進んでいきます。
 一本の短いアニメの声をあてるにも、かなりの時間をかけて作業をしている俳優やスタッフたちの姿に、僕は感動さえおぼえたのでした。

 今のアフレコスタジオは、そのころとはかなり様相がちがいます。
 デジタル化が進んだのが大きいですね。
 映像もデジタルデータで再生されるし、それにつける音声もすべてコンピューター処理されています。
 音声の切り取りや、データの移行なども簡単にできるので、修正作業などは昔に比べたら格段に容易になっています。

 声優さんたちにかかる負担も、その分軽くなっているのではないでしょうか。
 まずリハーサル、テストの数が少なくなってます。
 俳優さんたちには、あらかじめ映像データと台本が渡されているので、事前にチェックをしてスタジオに臨むことができるようになりました。
 このことは俳優さんたちに、事前チェックをする時間をとらせるという手間はありますが、俳優さんたちにとっては、いきなりぶっつけ本番にならずに済むという利点があるでしょう。

 今は、だいたいリハーサル、本番の二回で収録は行われています。
 そのたった二回で、正解を出さなければならない声優さんたちは、大変だろうと思いますけど。

◯往年の名声優さんたちとの出会い

 僕は幸いなことに、脚本家としてアニメにかかわることができたのが早く、アフレコの現場などに行くことができたので、もう亡くなってしまった往年の声優さんたちともたくさん関わらせていただきました。
 それらの仕事ぶりを間近で目撃することができたのは、とてもラッキーだったと思っています。
 テレビの中から聞こえてくる声を、間近で見ることができた思い出はかけがえのないものです。

 多くの現場で、さまざまな俳優さんたちと出会い、いくつもの思い出をつくらせていただきました。
 もう亡くなってしまった方もいらっしゃいます。
 僕だって、いつどうなるか、神のみぞ知るです。

 一瞬、一瞬、大事にしながら、今を生きていきたいものです。


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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:30 | Comments(0) | 脚本 | テレビ
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