2016年03月03日

作者と観客(読者・視聴者)のゲームを始めましょう

ストーリー脚本教室(実践編18)

 『ゲーム』を見つけて『プレイ』することが大事だと、前回書きました。

 簡単な言葉に言いかえると、『遊びどころを見つけたら、それを心底楽しんで遊び尽くしましょう』ということです。
 遊びどころとは、いろんな物、局面、関係などから生まれます。

 『追っかけ』はわかりやすい遊び所ですよね。
 遊びどころって、どうやったら見つかるの?
 あんまり考えすぎなくていいです。
 頭で考えていると、なかなか見つからないかもしれませんが、僕らの無意識はきっと見つけてくれるはずです。自分も信じてください。かならず見つかります。

 ゲームをどうやって見つけるのかについて、もう少し書いていきましょう。

◯謎解きは誰もが大好き。

 ストーリーのパターンの一つに『ミステリーを解け』があると書きました。
 
 多くのミステリー映画や、探偵映画など、物語の中で起きる事件の謎を主人公が解いて行かなければならなくのが、このパターンの作品です。

 ここにあるのは、まさに謎を解くというゲームです。
 作者は、観客に対して、さまざまな謎をしかけていきます。
 観客は物語の中で、主人公と一緒に謎を解くというゲームをプレイすることになります。

◯シーンの中にもミステリー(謎)をしかけつづけよう。

 大きな物語全体のミステリーだけではなく、短いシーンの中にも、ミステリーをしかけることで、観客を惹きつけることができます。

 ちょっと例を見てみましょう。
 今から書いていくことに出会った時の観客(視聴者)の心理を考えてみてください。

 たとえば、
 「シーンに一人の美少女があらわれる」とします。
 もうそれだけで、そこには謎が発生しています。

 (この少女は誰だ? 何者だ?)

 観客は、それが気になって、知りたくてたまりません。
 ましてや、
 「その少女の目の前に、無残な死体が転がっていた」りしたら、もう大変です。

 (おい、おい、おい! いきなり死体かよ! いったい、何があったんだ?)

 もうこの謎を解かないことには、夜も寝られなくなってしまいます。

 これがシーンの中に謎をしかけるということです。
 謎で、観客をひっぱっていくのです。

◯回答は出すタイミングが大事です。

 こんなふうにしかけたら、すぐに回答を与えてはいけません。
 じらして、じらして、引き延ばしていってください。
 それが観客が求めている、お楽しみなのですから。

 ただし伝えるべきことや、その場で解いてやるべき謎はあります。
 まずこの少女が誰かは、できるだけ早く教えてあげたほうがいいです。

 謎にも、重要度が高いものと、低いものがあります。
 的確に謎を解いていくことが、この『ミステリーを解け』におけるルールです。

 たとえば、この少女が次にこう言うとします。
「お父さん、ごめんなさい……」

 このセリフで、観客は、少女は倒れている男の娘であるということがわかります。
 この少女と倒れている男の関係性がわかりました。
 しかし、さらにもう一つ謎が増えました。

(娘が謝っているということは、父親の死んだ理由に、娘がかかわっているということなのか? いったい、どうして男は死んだんだ?)

 謎はさらに深まりました。
 これでいいのです。

 一つの謎を解いても、さらに謎が深まっていく。
 これが連続していけば、観客を惹きつけ、飽きさせないストーリーができあがっていくというわけです。

◯これは作者と観客のゲーム。

 謎がどう解かれるのかを、観客は予想します。
 その予想を、どれだけ裏切ることができるのか。
 それが作り手と観客とのゲームです。
 予想を超えられなかったら、このゲームは作り手の負けになります。
 できれば観客の予想を超える展開にして、このゲームに勝ちたいものです。
 あなたが勝てば、観客は負けても、気持ち良くそれを認めてくれるでしょう。
 それこそ幸せな作者と観客の関係ですね。


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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 08:07 | Comments(0) |  | 映画 | 脚本 | テレビ | 映画と小説 | 演劇
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