2008年09月15日

陸軍中野学校と好きだ、

仕事で追いつめられると、やたらと掃除をしたくなったり、映画を見たくなったりします。
本能のままに、ビデオ屋で何本かのDVDを借りてきて、一気に見てしまいました。

『陸軍中野学校』『陸軍中野学校・雲一号指令』『好きだ、』
陸軍中野学校と好きだ、
『陸軍中野学校』は、昭和の大スターの一人、市川雷蔵の主演作。(制作は1966年)
太平洋戦争になだれこむ寸前の日本で、スパイとして育てられた男の悲劇を描いたもの。
ついつい制作者や脚本家サイドの視点で見てしまうんですけど、難しい素材だったと思います。
日本が当事者だった戦争という悪を描かずには通れないものですからね。
悲劇に巻きこまれる人間たちを描きながら、なおかつ映画として面白くしなければならない。
しかも主演は、大スターなわけで、彼を最も輝かせなければならない。
そんな難しいテーマに挑んだ脚本家や監督を讃えたいです。
市川雷蔵は、この作品でもクールで美しい。さすがスターの貫祿。
よくできた作品です。
監督は、増村保造。(女性を美しく描くことにかけては凄腕の監督)
脚本は、星川清司。

『雲一号指令』は、『陸軍中野学校』の続編。監督、森一生。脚本は長谷川公之。
この頃の、日本映画はシリーズ物が多かったんですね。

実際の陸軍中野学校の存在を、僕が知ったのは、中学生の時でした。
国語の教員だった○石先生が、あるときポロリと僕に言ったのです。
「おれは、昔、スパイで、中国に入っていたんだ」と。
彼はまちがいなく、この陸軍中野学校の出身だったはずです。

僕が中学生だったのは、昭和四十年代。
太平洋戦争が終わって二十年以上が経っていた。
しかし、フィリピンでゲリラ戦をつづけていた小野田寛夫さんが投降したのは、戦後三十年以上も経ってからだった。
小野田さんは、やはりこの陸軍中野学校の二俣分校の出身で、ゲリラ戦の訓練を受け、命令が下るまで戦い続けろと指令を受けていたのだ。
当時のスパイ教育の徹底ぶりに驚いたものでした。
昭和の歴史の一つとして、陸軍中野学校は、もっと取り上げられてもいいテーマかもしれません。

陸軍中野学校と好きだ、
『好きだ、』は、2005年に公開された青春映画。
いま、篤姫の主演で大活躍の宮﨑あおいと、瑛太が出ています。
脚本・監督は石川寛。

17歳の時代と、34歳の今。
17年の時を経た、二人の男女が描かれます。
17歳が、宮﨑あおいで、34歳が、永作ひろみ。
別人なんだけど、なんだか二人は良く似ています。
同一人物なんだと、すっと思えました。

この映画、ちょっと独特の撮り方をしています。
うまいのかへたなのかわからない撮り方です。
ストーリーも、淡々としていて、あまり特別なことが起きたりしません。
見始めて5分で、『ちょっと退屈な脚本だなぁ、早回しで見ようかな』と思いました。
リモコンを手にかけた僕の手を止めたのは、俳優さんたちの演技でした。
『えっ、これって即興でやってるのか……』

おそらく俳優に、キャラクターと状況をあたえて、あとはその場で即興の演技をやってもらい、それをカメラでとらえるという撮影方法をしているのだということに気づきました。
とたんにこの映画への興味がわきました。

ただリアルなだけでは、面白くなりません。
リアルでいて、ちゃんと感情が揺れ動く場面を切り取ることができなければならないのです。
俳優にとっては、スリリングなチャレンジだったと思います。
撮影のその瞬間に、リアルな感情を生み出さなければならないわけですから。

俳優たちのみずみずしい演技を堪能できました。
そして映画の記録性という意味において、その時にしか存在しないもの(役者の肉体、感情)をとらえようとする監督の意図は、ちゃんと伝わってきました。

僕たちも、いま生きている、この現実の瞬間を大事にしていかねばね。


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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 20:51 | Comments(1) | 映画
この記事へのコメント
突然のコメント失礼致します。
勝手ながら私どものサイトからこの記事へリンクをさせていただきました。
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Posted by sirube at 2008年09月15日 21:22
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