2008年08月28日

ギリシア2


ギリシア取材、三日、四日目。
カランバカという町から、すぐ近くにある奇岩地帯のメテオラにバス移動。
巨大な切り立つ岩山が、まるでナイフで削られたような造形になっている。
どうしてこんなものが出来上がったのか、はっきりとしたことはわかっていないという。
それがメテオラだ。

切り立った岩山の頂上には、いくつも修道院が立てられている。
かつては二十以上もあったらしい。
これらの修道院には入るだけでも難しい立地になっている。
かつての修道士たちは、どうやってこの修道院を作ったのだろうか。
レンガを、ひたすら山の頂上に運んだエネルギーは膨大だ。
ここはいま世界遺産になっている。
たしかに、それに匹敵する眺望だ。

イマジネーションを刺激された。
ここに来る前に、なんとなく想像していた設定が、実際の奇岩地帯を見たことで、補完され、さらにふくらんでいく。
これこそ取材の醍醐味だ。
僕は、感性を百パーセントオープンにして、なにかを感じ取ろうとする。
視覚に、触覚に、嗅覚に、味覚に、飛び込んでくるすべてをキャッチするのだ。
そして、想像する。
どんなものが出来あがるのか。
楽しみだ。

バスでギリシア北部を移動して、イオアニアを目指す。
ここは、大きな湖のほとりにある、大きな町だ。
城砦都市が、かつてあったところで、古い城壁にかこまれた旧市街と、新市街とにわかれている。
日本人の観光客は、まったくといっていいほどいない。
歩道にいる犬まで、珍しそうに僕らを見上げた。

翌日は、イオアニアを出て、ヴィコス渓谷に向かう。

途中で、ザゴリアの村々に寄った。
ヴィッサ村というところは、昔ながらの石積み作りの民家が、斜面に張りつくように立っている。
周囲の山は、すべてプレート状に断層が入っている岩山だ。その岩山の岩を使って、すべてが作られているのだ。
壁も、柱も、屋根も、すべて岩山から切り出された石だ。
岩山と、家が一体化している。
ここの人たちは、昔からこうして暮らしてきたのだろう。

最近は、別荘や避暑の場所として、このあたりに来る人がいるらしく、新しい家やホテルも立っていた。
それらは古い形式ではつくられていなかったので、ちょっと味気ない気がした。

ヴィコス渓谷は、まさに絶景!
スリル満点。
アメリカのグランドキャニオンにも匹敵するかというような、壮大な渓谷なのだが、谷が狭いので、そのぶん距離感がわかるだけに、迫力も増している。
絶壁に登山道のような細い道があり、それを伝うように歩いていくと、ふいに壮大な景色が目の前に開ける。
そこは切り立った断崖絶壁の谷だ。
いつ崩れるかもわからないような岩の道のギリギリまで行ってみた。
飲み込まれそうな谷底が見える。
たぶん落ちたら、底につくまでしばらくかかるだろう。
まだ観光地化していないので、制限するものはなにもない。
事故が起きても、まったく不思議のない場所なのだ。
日本だったら、絶対に立入禁止だろうなぁとか、そんなことを思ったりした。
ギリシア人は、おおらかなようだ。
自己責任で行けということなのかもしれない。

幸い、僕は、高所恐怖症の気はまったく持っていないので、平気だったが、同行の人のなかには足がすくんでいる人たちもいた。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 14:12 | Comments(1)

2008年08月26日

ギリシア1

取材でギリシアに来ています。
今日は、二日目です。
今回、家を出てから、アテネのホテルに入るまで、丸々24時間かかりました。
これを長いと思うか、早いと思うかは、人それぞれですが、けっこうこたえました。

直行便がなかったので、パリ経由での移動になりました。
いったんパリに行って、4時間ほど戻ります。
なんか損したような気になります。

しかし、旅の興奮は、こんなことではダウンしません。
いい感じで、取材を続けてます。

初日は、アテネからデルフィのアポロンの神殿に向かいました。
さすがに神話の国です。
途中の町々の風景のなかにも、神話に登場する場所があらわれます。
オイデプス王が、捨てられた山とか、スフィンクスと会ったところとか、道を選んだ三叉路とか、なんだかワクワクしてきます。

実は今まで、それほどギリシア神話に興味があったわけではなかったのですが、こうして神話の世界に登場する場所を実際に見たり、空気を感じたりすると、がぜん興味がわいてきます。
かの有名なオイデプス王の悲劇の現場を、まず見れたのはラッキーでした。

アポロン神殿は、そりゃすごい遺跡でした。
山の斜面に、巨大な劇場や競技場、そして神殿の跡がつづいています。
それを登っていくのは、けっこうたいへん。
ひきこもり生活で弱った足にはこたえました。

でも、やはり神々を奉る場所っていうのは、これくらいの規模だからこそ、威厳があるのでしょう。
在りし日の姿を想像しながら、遺跡を歩きました。

ギリシア周辺の都市国家のお偉いさんたちが、神のご託宣をもらいに、ここまでやってきていた道のりを思えば、僕の24時間移動なんて、たいしたことありません。

しかし、このすごい遺跡も、ギリシアがトルコに支配されていた数百年の間には、遺跡の上に村ができていたそうです。
その村をどかせて、遺跡を発掘したということ。
よくぞやってくれました。
エフハリストー。(ありがとう)

  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:57 | Comments(0) | 散歩

2008年08月20日

蝉パワーだ!

この一月くらい、ほとんど部屋に閉じこもってたので、足の筋肉が弱ってます。
あとすこしラストスパートをするために、一週間ぶりくらいに外にでました。
朝、やっぱり外は気持ちいい。
暑くても、さわやかです。

そこで大発見!
羽化直後のせみです。
一生懸命、木にしがみつき、羽を伸ばそうとしています。
美しい。




なんだか感動して、エネルギーをもらいました。
そのせみパワーで、ついに第一稿を書き上げました。
やったよ、おかあさーん!
エベレストの登頂に成功した感じです。

さすがに体力が弱っています。
映画館に行ったら、ぐっすり寝ちゃいました。
『ハムナプトラ3』
ジェット・リーが悪役の将軍やってました。

睡眠時間が不規則だったので、一度にたっぷり寝れなくなっていて、調子が悪いです。
これから体力取り戻す、リハビリはじめます。

蝉は、長い時間、地面の中にいて、外に出てきたら、短い人生をものすごいエネルギーを放出するんですよね。
不思議な生き物です。
蝉に限らず、命はすべて不思議ですけどね。

  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:35 | Comments(0) | 散歩

2008年08月13日

谷本歩実選手


谷本歩実選手、金メダルおめでとうございます。

昨日の、谷本選手の柔道には感動させられました。
優勝したからというのもあるんですが、その闘う姿勢に感心したのです。
やはり、勝つ選手というのは、こうなんだなぁと、あらためて思いました。

決勝戦の畳みにあがるまえ、彼女の顔には、一瞬微笑みが浮かびました。
ふつうならば緊張して、力が入り、固くなってしまうのが普通のところなのに、なんと彼女は笑ったのです。
優勝後のインタヴューで、彼女はこう言ってます。
「デコス選手と戦えるのが、うれしかった」
「彼女とは十年くらい戦いつづけていて、彼女はこの階級では最後の試合なので」
『うれしい』気持ちと、『相手を思いやる』気持ち。
この二つの気持ちを胸に、彼女は試合に臨んだわけです。

あと、こうも言っています。
「試合中のことは、なにも憶えてない。気がついてたら、飛び跳ねてた」
「体が自然に動いていた」
つまり、集中し、いわゆるゾーンに完全に入っていたわけです。

これはまさに、自分の力(能力)を出し切るための極意です。
ハッピーとレスペクト。
そして、完全なる集中。
一番大事な瞬間に、この精神状態になれた谷本選手は、本当にすばらしいアスリートだと思います。

『ハッピーでいること』
『相手を助けること(大事にすること)』
これは、即興芝居(インプロ)をやるときのプレーヤーが持つべき精神状態そのものです。
この状態こそ、リラックスして、自分の持っているアイディアや、相手のアイディアを見逃さずにいられるからです。

スポーツと、芝居と、ジャンルは違いますけど、舞台に上がる前の精神状態ということでは共通するものがあるんですね。
本当に、プレーヤーが実力を出すための精神状態とは、どういうことかということを、あらためて教えてくれた、谷本選手の試合だったと思います。

  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 10:15 | Comments(0) | 演劇

2008年08月12日

見るプロたち


世の中には、すごい人たちがいるもんだ。
オリンピックで戦っている人たちのことではない。
昨日、会った人たちのことだ。

ここのところずっと閉じこもって仕事しているわけなんだけど、知り合いの人が呼んでくれたので、芝居小屋に行きました。
シェイクスピアの『夏の夜の夢』
ここは大先生の数少ないオリジナルといわれる作品を見させてもらって、エネルギーをもらおうという作戦です。

終演後、誘ってくれた演出家の人と、劇場の近くで食事をしたんですが、そのテーブルに一緒に座った人たちが、すごい人たちだった。
二人は、キャスティングディレクターと、映画のプロデューサー。
彼らは、とにかくよく芝居を見ていた。
僕は、こんなに芝居を見ている人に、いままで一人だけ会ったことがあったけど、一気に二人目と三人目。
しかも、ナンバーワンをあらそう人たちだった。(まぁ、そんなもの競うものじゃないですけど)

二人とも、今年(1月から8月まで)はもう300本以上、芝居を見ていると言った。
一月に40本以上見ている計算になる。

これ、ふつうに考えても異常な数です。
もちろんキャスティングディレクターと、プロデューサーというのは、俳優について詳しくなければならない仕事なわけで、彼らにとっては仕事の一部なのかもしれないけど、それだけでこなせる数ではないということは明らかです。

やはり好きじゃないと、これだけの数の芝居を毎年見続けることはできません。
ここまでくれば、『芝居を見るプロ』ですね。
彼らの芝居についてのコメントには、プロの目があると思いました。

すごい人たちがいるもんです。

写真はまったく関係ありません。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 09:31 | Comments(0) | 演劇

2008年08月08日

オリンピック開幕ですね

甲子園はまっさかり、オリンピックも始まりましたねー。
選手たちには、がんばって欲しいです。

予定では、オリンピックまでには、仕事を一段落させてテリビの前に陣取るつもりだったんですが、まったく終わってません。
あいかわらず引きこもってます。
恒例の散歩さえ、ほとんどしていないので、あまり書くこともありません。
更新してなくて、もうしわけないです。

それでも、今日は、ちょっと外に出ました。
こういうときは花に目をひかれます。
猛暑のなかでも、鮮やかに花たちは咲き誇ってました。
僕も、がんばらなきゃって感じになります。
さるすべりの花と、ひまわりがが綺麗でした。

僕は、物語(ドラマ)を作るのが本職ですが、そんな僕にもとても参考になった本を一冊紹介します。
『ザ・オーディション』マイケル・シュトレフ著、絹川友梨・オーエン ヒュース訳。(フィルム・アート社)

これはブロードウェイで長年、キャスティングディレクターを務めた筆者が、オーディションを受ける俳優のために書いた本です。
役者が、オーディションで輝くためには、どういうことをしたらいいかが書かれてます。

この本を、俳優を目指している人にはもちろんですが、戯曲やシナリオを書こうとしている人にも、とても参考になります。
僕は、ときどき取り出しては、読み返したりしてます。
ドラマとは、どういうことかを教えてくれます。

僕も長年、芝居やテレビドラマやアニメを書いてきましたが、その成否は、脚本とキャスティングでほとんど決まってしまうと言っても過言ではありません。
キャスティングは、本当に大事です。
この著者のようなプロフェッショナルがいる、アメリカのエンターテイメント業界は、力があるはずです。
参考になるものは、なんでもとり入れていきたいですね。
  


Posted by 名誉館長 園田英樹 at 22:55 | Comments(0) |