2016年04月24日
インプロで主人公をつくるエクササイズ
インプロ、ショーコース、一回目
あくまでもショーでストーリー性の強いロングフォームインプロをするための稽古をはじめました。
他のインプロヴァイザーにも参考になるかもしれないので、どんなことをやったのかを、ざっくりと紹介しますね。
稽古の参加者は、みんなショーに出た経験のあるインプロヴァイザーたちです。
そして脚本の舞台にも出演している俳優でもあります。
演技とインプロの基礎的なことはすでにわかっているプレーヤーたちだということを前提として、稽古をやっています。
インプロチームでストーリーをつくるためには、プレーヤーたちの共通認識と理解が必要です。
全員で同じ方向を見て、前に進んでいかなければならないからです。
そのためのトレーニングをしていきます。
◯『連想』と『衝動』
この二つを、トレーニングをするときのキーワードにしています。
インプロをするときに、もっとも使う二つの感覚です。
プレーヤーの内側に起きるこの二つの感覚にしたがって演技をしていくことが、もっとも大事だと思っているからです。
エクササイズに入る前のウォーミングアップは、この二つをだしやすくするためのものを選びます。
◯エクササイズ
◯名前をつける
シーンに登場してくる登場人物の名前というのは、これから生まれる物語に、すごく大きな影響を与えます。
(多くの物語の主人公の名前を思いだしてください。それぞれその物語を背負うにふさわしい名前がつけられているはずです。)
特に主人公の名前は、重大です。
僕も脚本家として、さまざまな主人公を書いてきましたが、いつも主人公の名前をつけるときには苦労してきました。
これは簡単なことではありません。
普通の名前というをつけるのは、それほど難しくないんですが、特別な名前というのは、おいそれと転がってはいないからです。
もちろんキラキラネームの流行から、日常でも主人公みたいな名前をもった人もいるにはいらっしゃいますけどね。
ですから、まず最初に名前を相手につけるエクササイズをします。
◯名前(キャラクター)には、四つの種類があります。
まずはそれをわかっていなければなりません。
①ヒーロー
②普通の人
③負け犬
④罪人(悪人)
ヒーローはまさにスーパーヒーロー、英雄、尊敬できる人たちです。みんなのあこがれの的の人物のことです。
普通の人は、読んで字のごとく、平凡でわれわれと同じような人物です。
負け犬は、弱者です。失敗して傷ついて、弱っている人たちのことです。
罪人は、罪を犯している人、悪人です。アンチヒーローたちのことです。
多くの物語では、登場人物の名前だけで、多少の性格や、役割がわかるように作家は工夫しています。あとからつけていることもあるでしょう。インプロでも、これを使わない手はありません。
その主人公によって、(その名前によって)これから展開する物語の大きな方向性が決まっていくのですから。
◯エクササイズの方法
1、基本的に円になって立ち、これから相手につける名前がどのパターンのものなのかというものを決めます。
「じゃあ、ヒーローの名前ね」
そして、相手を見て、イメージがわくのを待ち、わいてきたら、その人を指さして『名前を与えます』
「アボカドマン」
アボカドマンと呼ばれた人は、自分のこと指さしてを「アボカドマン」と繰り返します。
そしてまた誰かを見て、イメージして、その人に名前を与えます。
「神宮司剣介」
これを繰り返します。
「春風香」「ワンダースラッシュ」「青空かける」「スーパージャスティス」「織田信長」などなど。
さまざまなヒーローっぽい名前が生まれてくるでしょう。
これを「普通の人」「負け犬」「罪人」でもやります。
それぞれ、それっぽい名前が生まれてくることを体感します。
たとえば、
「普通の人」……田中ひろし、鈴木あきら、吉田よしこ、メリー・アン、ジェームズ、キム、などなど。
「負け犬」……林家すべる、きたいなしお、今田ざんねん、未来なしこ、おしいことよ、またまけた。
「罪人」……罪田おかす、闇尾ぬすむ、マックロ、ひとだころす、ダークバイン、ブラックキラー、などなど。
普通の人の名前はつけやすいけど、負け犬、罪人の名前などは、ちょっと難しいです。
いきなり即興でつくるのは、たいへんかもしれません。(このあたりはエクササイズとかショーのときに工夫するべきところかと思います)
このエクササイズの目的は、名前をつけることに慣れると同時に、名前からインスパイアされることが大きいということを体感でわかってもらうということにあります。
◯主人公を作る
物語の中では、主人公の役割は重大です。
主人公しだいで物語が、どうなるのかが左右されると言っても過言ではありません。
なんといっても観客は、この主人公と共に物語を体験するのですから。
◯エクササイズ「主人公をつくる」
やはり円になって、「名前をつける」のときの要領で、一人に名前をつけます。(五六人)
つけられた人が嫌だったら、また別の人が別の名前をつけます。
(この拒否権はつけられる人にまかせます。インプロでは、イエスアンドが基本だということは、やっている人なら誰しもが知っていることですが、乗れないアイディアもたまにはあります。そういうときは衝動にしたがって否定することも大事です。さらにインプロをやるときには衝動にしたがって演技をすることが求められますが、シーンの最初とか、思考が必要な時もあります。そのときはできるだけシーンに飛びこむ前にアイディアを思いつきます。そしてシーンに飛びこんでからは思考に入らずに、その瞬間を活きた演技に没頭していくことです)
一人に名前がついたら、その人物を全員で詳しくしていきます。
一人一個ずつでかまいません。
例えば、こんな感じ。
A「アボガドマンさんは、アボガドを食べるとスーパーヒーローに変身するんですよね」
アボガドマン「はい。アボガドにひめられた超古代のパワーがわたしの体のDNAに力をあたえて変身できるようになりました」
B「アボガドマンさんには、妻と六歳の息子さんがいますよね」
アボガドマン「はい。次は娘が欲しいと思っています」
C「家族にはアボガドマンに変身できることは秘密にしてますよね」
アボガドマン「ええ、家族に心配をかけることはできませんから」
D「アボガドマンさんが変身できる時間は、一分しかありませんよね」
アボガドマン「はい。せめて三分はもつといいんですけと、一分しかもちません」
E「アボガドマンさんは、両親を殺した悪人を見つけ出して、復讐したいと思ってますよね」
アボガドマン「ええ。おさないころに両親を殺した犯人をいつか捕まえて、復讐したいと思っています」
瞬く間に一人の主人公が出来上がっていきます。
そしてこの中に、次に展開していくであろう『ストーリーの種』がたっぷりふくまれていることに気付くでしょう。
このときアイディアをつける側は、考えすぎる必要はありません。
基本的に大事な要素がいくつかあるので、それをちゃんと着けてあげます。
基本的なこととは、次の要素です。
①年齢と性別。
②家族、もしくは恋人、伴侶はいるのか、いないのか。
③苦手なこと、弱点はなんなのか。(これが特に大事です)
④目的(欲求)はなんなのか。
最低限、以上のことが明らかになっていると、舞台上にフィクションの主人公がリアリティを持って立ち上がってきます。
例ではヒーローのアボガドマンを作りましたが、このエクササイズを、他のパターンの主人公でもやっていきます。
普通の人は作りやすいと思います。そして「負け犬」「罪人」のキャラクター作りがけっこう難しいことに気付くでしょう。
ふだんの日常では、あまりそれらの人々のことを意識せずに生活していますから。
しかしエクササイズなので、うまくいかなくてもいいので、何回もやってキャラクター作りになれてください。
このときに一人につけくわえるアイディアは、多くて5、6個でいいです。
あまり多すぎてもおぼえていられないものです。
一人ができたら、次の人を新たに作っていきます。
これを参加者全員分やります。
時間の余裕があれば、何回もやっていいです。基本的につけるべきアイディアをつけられているかどうかをチェックしながらするといいでしょう。
いま紹介したエクササイズはいわゆる「ホットシート」と呼ばれているものからアレンジしたものです。
脚本家は、ストーリーを書きだすまえに必ず人物の設定案をつくるものです。
かなり細密な資料をつくることもあります。(履歴書を作る人もいます)
それらがこれから書いていく脚本を支えるものだということを知っているからです。
このインプロでやる、主人公作りのエクササイズは、脚本家が一人でやっていることを、プレーヤー全員でやるように開いたものです。
あくまでもショーでストーリー性の強いロングフォームインプロをするための稽古をはじめました。
他のインプロヴァイザーにも参考になるかもしれないので、どんなことをやったのかを、ざっくりと紹介しますね。
稽古の参加者は、みんなショーに出た経験のあるインプロヴァイザーたちです。
そして脚本の舞台にも出演している俳優でもあります。
演技とインプロの基礎的なことはすでにわかっているプレーヤーたちだということを前提として、稽古をやっています。
インプロチームでストーリーをつくるためには、プレーヤーたちの共通認識と理解が必要です。
全員で同じ方向を見て、前に進んでいかなければならないからです。
そのためのトレーニングをしていきます。
◯『連想』と『衝動』
この二つを、トレーニングをするときのキーワードにしています。
インプロをするときに、もっとも使う二つの感覚です。
プレーヤーの内側に起きるこの二つの感覚にしたがって演技をしていくことが、もっとも大事だと思っているからです。
エクササイズに入る前のウォーミングアップは、この二つをだしやすくするためのものを選びます。
◯エクササイズ
◯名前をつける
シーンに登場してくる登場人物の名前というのは、これから生まれる物語に、すごく大きな影響を与えます。
(多くの物語の主人公の名前を思いだしてください。それぞれその物語を背負うにふさわしい名前がつけられているはずです。)
特に主人公の名前は、重大です。
僕も脚本家として、さまざまな主人公を書いてきましたが、いつも主人公の名前をつけるときには苦労してきました。
これは簡単なことではありません。
普通の名前というをつけるのは、それほど難しくないんですが、特別な名前というのは、おいそれと転がってはいないからです。
もちろんキラキラネームの流行から、日常でも主人公みたいな名前をもった人もいるにはいらっしゃいますけどね。
ですから、まず最初に名前を相手につけるエクササイズをします。
◯名前(キャラクター)には、四つの種類があります。
まずはそれをわかっていなければなりません。
①ヒーロー
②普通の人
③負け犬
④罪人(悪人)
ヒーローはまさにスーパーヒーロー、英雄、尊敬できる人たちです。みんなのあこがれの的の人物のことです。
普通の人は、読んで字のごとく、平凡でわれわれと同じような人物です。
負け犬は、弱者です。失敗して傷ついて、弱っている人たちのことです。
罪人は、罪を犯している人、悪人です。アンチヒーローたちのことです。
多くの物語では、登場人物の名前だけで、多少の性格や、役割がわかるように作家は工夫しています。あとからつけていることもあるでしょう。インプロでも、これを使わない手はありません。
その主人公によって、(その名前によって)これから展開する物語の大きな方向性が決まっていくのですから。
◯エクササイズの方法
1、基本的に円になって立ち、これから相手につける名前がどのパターンのものなのかというものを決めます。
「じゃあ、ヒーローの名前ね」
そして、相手を見て、イメージがわくのを待ち、わいてきたら、その人を指さして『名前を与えます』
「アボカドマン」
アボカドマンと呼ばれた人は、自分のこと指さしてを「アボカドマン」と繰り返します。
そしてまた誰かを見て、イメージして、その人に名前を与えます。
「神宮司剣介」
これを繰り返します。
「春風香」「ワンダースラッシュ」「青空かける」「スーパージャスティス」「織田信長」などなど。
さまざまなヒーローっぽい名前が生まれてくるでしょう。
これを「普通の人」「負け犬」「罪人」でもやります。
それぞれ、それっぽい名前が生まれてくることを体感します。
たとえば、
「普通の人」……田中ひろし、鈴木あきら、吉田よしこ、メリー・アン、ジェームズ、キム、などなど。
「負け犬」……林家すべる、きたいなしお、今田ざんねん、未来なしこ、おしいことよ、またまけた。
「罪人」……罪田おかす、闇尾ぬすむ、マックロ、ひとだころす、ダークバイン、ブラックキラー、などなど。
普通の人の名前はつけやすいけど、負け犬、罪人の名前などは、ちょっと難しいです。
いきなり即興でつくるのは、たいへんかもしれません。(このあたりはエクササイズとかショーのときに工夫するべきところかと思います)
このエクササイズの目的は、名前をつけることに慣れると同時に、名前からインスパイアされることが大きいということを体感でわかってもらうということにあります。
◯主人公を作る
物語の中では、主人公の役割は重大です。
主人公しだいで物語が、どうなるのかが左右されると言っても過言ではありません。
なんといっても観客は、この主人公と共に物語を体験するのですから。
◯エクササイズ「主人公をつくる」
やはり円になって、「名前をつける」のときの要領で、一人に名前をつけます。(五六人)
つけられた人が嫌だったら、また別の人が別の名前をつけます。
(この拒否権はつけられる人にまかせます。インプロでは、イエスアンドが基本だということは、やっている人なら誰しもが知っていることですが、乗れないアイディアもたまにはあります。そういうときは衝動にしたがって否定することも大事です。さらにインプロをやるときには衝動にしたがって演技をすることが求められますが、シーンの最初とか、思考が必要な時もあります。そのときはできるだけシーンに飛びこむ前にアイディアを思いつきます。そしてシーンに飛びこんでからは思考に入らずに、その瞬間を活きた演技に没頭していくことです)
一人に名前がついたら、その人物を全員で詳しくしていきます。
一人一個ずつでかまいません。
例えば、こんな感じ。
A「アボガドマンさんは、アボガドを食べるとスーパーヒーローに変身するんですよね」
アボガドマン「はい。アボガドにひめられた超古代のパワーがわたしの体のDNAに力をあたえて変身できるようになりました」
B「アボガドマンさんには、妻と六歳の息子さんがいますよね」
アボガドマン「はい。次は娘が欲しいと思っています」
C「家族にはアボガドマンに変身できることは秘密にしてますよね」
アボガドマン「ええ、家族に心配をかけることはできませんから」
D「アボガドマンさんが変身できる時間は、一分しかありませんよね」
アボガドマン「はい。せめて三分はもつといいんですけと、一分しかもちません」
E「アボガドマンさんは、両親を殺した悪人を見つけ出して、復讐したいと思ってますよね」
アボガドマン「ええ。おさないころに両親を殺した犯人をいつか捕まえて、復讐したいと思っています」
瞬く間に一人の主人公が出来上がっていきます。
そしてこの中に、次に展開していくであろう『ストーリーの種』がたっぷりふくまれていることに気付くでしょう。
このときアイディアをつける側は、考えすぎる必要はありません。
基本的に大事な要素がいくつかあるので、それをちゃんと着けてあげます。
基本的なこととは、次の要素です。
①年齢と性別。
②家族、もしくは恋人、伴侶はいるのか、いないのか。
③苦手なこと、弱点はなんなのか。(これが特に大事です)
④目的(欲求)はなんなのか。
最低限、以上のことが明らかになっていると、舞台上にフィクションの主人公がリアリティを持って立ち上がってきます。
例ではヒーローのアボガドマンを作りましたが、このエクササイズを、他のパターンの主人公でもやっていきます。
普通の人は作りやすいと思います。そして「負け犬」「罪人」のキャラクター作りがけっこう難しいことに気付くでしょう。
ふだんの日常では、あまりそれらの人々のことを意識せずに生活していますから。
しかしエクササイズなので、うまくいかなくてもいいので、何回もやってキャラクター作りになれてください。
このときに一人につけくわえるアイディアは、多くて5、6個でいいです。
あまり多すぎてもおぼえていられないものです。
一人ができたら、次の人を新たに作っていきます。
これを参加者全員分やります。
時間の余裕があれば、何回もやっていいです。基本的につけるべきアイディアをつけられているかどうかをチェックしながらするといいでしょう。
いま紹介したエクササイズはいわゆる「ホットシート」と呼ばれているものからアレンジしたものです。
脚本家は、ストーリーを書きだすまえに必ず人物の設定案をつくるものです。
かなり細密な資料をつくることもあります。(履歴書を作る人もいます)
それらがこれから書いていく脚本を支えるものだということを知っているからです。
このインプロでやる、主人公作りのエクササイズは、脚本家が一人でやっていることを、プレーヤー全員でやるように開いたものです。
この記事へのコメント
キャラを立てることは大切ですね。
いきなり質問になって申し訳ないのですが、
私は幼稚園のころから物語を作るのが好きでして、そのせいかファンタジーものしか書いたことがなく、書けません。
自分のって展開がぶっ飛んでるというかなんというか
書けないというよりはイメージがつかないんです。
映像化できないものって、コンクールに出しても落とされますよね?
自分が成長するにつれて、現実的なドラマが書けるようになったりするのでしょうか?
いきなり質問になって申し訳ないのですが、
私は幼稚園のころから物語を作るのが好きでして、そのせいかファンタジーものしか書いたことがなく、書けません。
自分のって展開がぶっ飛んでるというかなんというか
書けないというよりはイメージがつかないんです。
映像化できないものって、コンクールに出しても落とされますよね?
自分が成長するにつれて、現実的なドラマが書けるようになったりするのでしょうか?
Posted by poketyu at 2016年04月30日 19:16
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