2016年02月21日

ウルトラマンを作った男の芝居を見てきました。

紀伊國屋サザンシアターで劇団民芸の『光りの国から僕らのために〜金城哲夫伝〜』の千穐楽を見てきました。
脚本・畑澤聖悟、演出・丹野郁弓
出演、齋藤尊史、みやざこ夏穂、桜井明美、他。
光りの国から

急に思い立ったので、当日券に並んで(一番でした!)、いい席をゲットしました。
前から五列目のセンターよりという最高の席でございました。
たぶんキャンセルで出た席ですよねー。
なんか申し訳ない感じでした。

金城哲夫というのは、僕にとっては伝説的な脚本家の一人です。
三十年以上前から、金城さんについて芝居の台本を書きたいと思って、地道に資料を調べてきていただけに、民芸さんにまさかの先をこされてしまいました。

しかし金城さんのことを知っているのは、かなりマッニアックな人たちに限られていると思います。まず民芸の芝居を見にくるお客さんたちのイメージではありません。
だって、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンですよ。

客席に座ってまわりを見まわすと、やはり年配の人たちが多いです。
八十オーバーの人たちもたくさんいらっしゃる感じ。
年齢的には、金城さんと同年代だとは思いますが、ウルトラマンに熱狂した世代ではないことは明らかです。
まさに僕と同年代のウルトラ初期世代の人たちも、数多くいらしている感じはしました。
しかし、この作品を上演しよう、ウルトラマンを作った男にフォーカスをあてようとしてくれた民芸、えらいと僕は思います。
もちろん金城さんを語るときに、沖縄と本土の関係とか、必ず描かなければならないテーマがあるところが、ある意味、民芸っぽいとは思いました。

作品に関しては、金城さんに関して、かなり研究している僕も納得できる脚本になっていました。
欲を言えば、怪獣はピグモンだけじゃなく、もっと出して欲しかったし、できればウルトラマン、ウルトラセブンとかも出して欲しかったです。
金城さんをあつかうならば、そこは欠かせないところだと思うんです。
もちろんそういうキャラクターたちを出演させるということには、かなりのハードルがあることはわかった上で言わせてもらいました。
出さなかったのか、出せなかったのか、そのあたりは興味あるところですね。

作品(脚本)に関して、書き出すと、この作品に関しては止まらなくなりそうです。
自分の作品ではないのに、自分の作品のようになぜか思い入れが出てしまいます。
金城作品や井上ひさし作品に影響を受けて、脚本の世界に飛びこみ、今まで三十年以上戦いつづけているわけで、脚本家の話に思い入れがわかないわけがないのです。

ラスト近く、金城さんが、とうもろこし畑で自分が死んでしまったことにも気づかずに酒を飲みながら、現在の上原正三さんと話をするシーンで、僕の涙腺は崩壊してしまいました。
作者は上原さんに「五十年、書き続けてるけど、いまだにお前がつくったウルトラマンを越えるものをつくれないよ」と言わせていました。
そこが一番泣かされたところでもあり、いや、ちがうだろ! と思ったところでもありました。

さっさと沖縄に帰ってしまった金城さんの意志を引き継いで、50年以上も脚本の世界で書き続け、多くの子供たちに影響を与え続けてきた上原正三こそ、とっくに金城哲夫をしのいでいるんだと、僕は思ったのです。
上原さん、あなたこそが、本物のウルトラマンだと。

今回の脚本では、上原正三という作家が、あまりフィーチャーされてなかったと思います。
金城哲夫を描くなら、上原正三も同じ比率くらいで描かねばならなかったのではないか。
50年、子供向けの脚本を書き続ける、上原正三の業とはなんなのか?
そこにもスポットをあてて欲しかったと思いました。
作中では、家を建てて50坪の土地を占領したと言っていましたが、そんなことで満足するような人じゃないだろう。
そんなことを、この芝居を見終わって、興奮を静めるために、ひたすら歩きながら考えたのでした。

日本の影響というか、支配を受けつづけた琉球。
そこから出て来て、子供番組というもっとも人間に影響を与えることのできるもので、結果的に日本を変えていった金城哲夫。そして上原正三。
金城は、道半ばで倒れたが、上原はずっと走り続けた。
ある意味、ウルトラマンで日本を変えたのかもしれない。
今もウルトラマンは子供たちに影響を与え続けているのだから。

この作品が出てしまったので、僕が書こうとしていた金城哲夫の物語は、お蔵入りです。
それは残念だけど、金城哲夫の物語が、こうしてサザンシアターで上演されたということは、すごいできごとだったと僕は思うのでした。


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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 17:59 | Comments(0) | 脚本 | 演劇
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