2016年03月06日

セットアップはワクワクドキドキの中でする

ストーリー脚本教室(実践編21で心構え編9)

 前回はストーリーが始まってからの『つかみ』について書きました。

◯『つかみ』は、演出に負う部分が大きい。

 ストーリーがはじまってからの五秒とか、五分、十分以内にチェックすべきことなどを書きましたが、実は「つかみ」に関すところは、演出の領域に負うことが大きいです。
 演出というのは、映像作品ならば、監督がやる仕事(実際の影像)のこと。
 小説ならば、作家が書き下ろす、文章のスタイルのことになります。

 具体的に観客の目の前に現れるものが、吸引力を持っていればいいのです。

 すぐれた俳優やダンサーは、ただステージに何もせずに立つだけで、俳優の目を釘付けにすることができます。
 そういう人は、自分で『つかむ』力を持っています。

 しかしわれわれストーリーの書き手は、そういう人たちをさらにやりやすくするために、ストーリーという道具でサポートしてあげなければなりません。

◯ストーリーは道具である。

 僕はストーリーというのは『道具』だと思っています。
 大工さんは、家たてるのに、金槌や釘や鉋や鋸を使って、材木を加工していきます。
 料理人は、包丁や鍋やフライパンなどを使って、料理をつくっていきます。
 われわれは、ストーリーをつかって、感動やエンタメをつくっていくわけです。

 ストーリーは完成品ではありません。
 観客の内側に、化学反応を起こして、目に見えない変化をそこで起こすことができたとき、はじめて完成されるのだと思います。
 だからこそストーリーは道具だと考えるわけです。

 大工さんや料理人たちのように、できればいい道具を使いたいものです。

 道具をうまくつかいこなせるのは、職人です。
 僕はいい職人でありたいと思っています。
 職人というのは、技術を日々磨くものです。
 そこには終わりはありません。
 どこまでも高い技術を求めて、日々を過ごしていきたいのです。
 きちんと人がすめる家を建てる大工さんや、毎日食べて飽きない食事をつくる料理人のように。

 ここで書いているのは、その道具をどうやって磨き、うまく使っていくかについてです。

◯つかんだら、『ワクワクドキドキ』『つぎどうなるの?』で前に進む。

 観客(読者)をつかむためには、最初の五分、十分が大事ということは、もうみなさん充分にわかってもらえたと思います。
 その間にやらなければならないこと、チェックしなければならないことも、前回に書いた通りです。

 あとここには、主人公以外の主な登場人物たちもできるだけ出しておいたほうがいいです。
 主人公とかかわることになる主な登場人物が、あとのほうで出てくると唐突感が出てしまいます。
 なんらかの形で、見る人に紹介しておくことは、大事です。

 そういうふうに出さなければならない情報はたくさんあります。
 それをただ出していくだけでなく、『次どうなるの』という気持ち(ワクワクドキドキ)を観客に抱かせるような展開の中で、それらの情報をうまく知らせていくのです。
 観客が気づいたら、知っていたというような情報の伝え方がおしゃれです。
 そういうおしゃれなやりかたで、ストーリーを前に進めていきたいものです。

◯『セットアップ』という呼び方もあります。
 『設定』『世界観』などと言う人もいると思います。
 主人公とそれを取り巻く世界のことです。
 ストーリーがはじまったときに、これが観客にちゃんと伝わっていないと、せっかくつかんだ観客を、あっというまに放してしまうことになってしまいます。

 ワクワクドキドキさせなが、ちゃんとセットアップを完了していくこと。
 それが出来ているのかどうか、チェックしてくださいね。

 2016年4月4日から、僕がシリーズ構成と脚本を担当している少年向けアニメ『ベイブレードバースト』がテレビ東京系列ではじまります。
 この番組で、いかにセットアップがなされているのかをチェックしてみてください。
 オンエアが済んだら、これを例にとって、セットアップについて書くかもしれません。


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Posted by 名誉館長 園田英樹 at 11:25 | Comments(0) |  | 映画 | 脚本 | テレビ | 映画と小説 | 演劇
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